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トラクターに轢かれて股関節脱臼 その4

2019年04月12日 18:24

2回目の左旋回に入ると、
白車が動き始めた。
患者収容と車内観察がおわり、
ランデブーポイントの三本木高校グラウンドへ向かう。
2回目の旋回では、トラクターの変形を見る。
周囲の土の盛り上がりを見る。
いづれもなかった。
おそらく、静かに轢過されたのだろう。
車両の重みとタイヤの轢過だけなら、
エネルギーは少ないはず。
走るトラクターに轢過されたのとは違う。
機長は、
「周囲に着陸できそうな場所がありません。
もしあれば、医師ナースのみ降ろして、ヘリはグラウンド待機と考えましたが、
それは不可能です。
このまま、高校グラウンドへ向かいます」
「了解」私

「十和田救急1より八戸ドクターヘリ11どうぞ。
患者情報です。
血圧120、脈拍110、呼吸数28、意識二けた、SpO2 ルームで、酸素10Lで92%、呼吸音左右あり、骨盤を痛がります。バックボード固定、骨盤サムスリング固定しています。」
「胸部外傷と骨盤外傷ですね。
骨盤固定サムスリングはそのまま使用して下さい。
胸部ドレーンを入れることにン備えてシャツを切っておいてください」私

機長
「あと2分でランデブーポイントへ着陸です。」

「橋本さん、32フレンチ胸腔ドレーンとイソジン、ドレープの用意ね。
意識がいいなら、局所麻酔するよ」
橋本
「はい」

EC135は野球場の緑の芝に着陸した。
県立三本木高校は、救急後期研修医の山端医師、フライトナースの沼宮内、和島の母校。
以前重症熱中症がこのグラウンドで発生し救命したこともある。
校長先生はドクターヘリのよき理解者だ。
野球場の内野の芝にドクターヘリが着陸する。
そして、救急車が芝に乗り入れる。
こんなことを許可してくれる。
(続く)

トラクターに轢かれて股関節脱臼 その3

2019年04月11日 18:36

「上十三消防指令センターより八戸ドクターヘリどうぞ、
救急隊が現場到着しました。
患者情報を追って連絡します」
機長は室内通話で後部席に話しかけてきた。
「ランデブーポイントの三本木高校野球場から南5km地点が現場です。
救急隊現場出発まで時間がありますから、
ランデブーポイント着陸前に、
現場上空に向かい現場を上空から観察しましょう」
現場出動には2種類ある。
本当に現場で医療活動するときと、
現場から少し離れた着陸地点の
救急車内で診療する場合。
今回は、後者だったので、
現場情報を我々に視覚で教えるために、
機長が選択したこと。
現場状況から外傷重症度、外傷部位を推測できる。
十和田市内か南は田園地帯。
三本木原台地という、
不毛地帯だったが、
人工水路を整備することで、
畑や水田が栄え始めた。
新渡戸伝親子の偉業とされ、
日本史で教わる。
明治時代以前は不毛地域であったが、
現在は美しい田園が続く。
新渡戸親子の偉業は素晴らしい。
機長は高度を下げて、左旋回を始めた。
上空から赤車と白車を探す。
それがいる場所が現場だ。
下を走る車の車種がわかるくらいに高度が下がる。
「10時方向に赤車がいます」整備長
赤いポンプ車と
ツートンカラーのパトカーが停車していた。
左旋回すると、オレンジ色の大型トラクターが見えた。
大きい。
「これに轢かれたら、
痛がっていたら
骨盤骨折、肋骨骨折、
肺挫傷、
肝損傷、だね。
意識がなく、声が出なければ
頭部外傷と頸椎骨折だ。」私はナースと田中医師に説明した。

「十和田ポンプ隊より八戸ドクターヘリどうぞ、
患者を救急車に収容しまもなく現場出発。
患者はCPAにあらず。
意識あり」
上空を旋回するドクターヘリにたいして、
赤車から無線が入った。
私は
「意識ありなら、
骨盤骨折だ。」
(続く)

トラクターに轢かれて股関節脱臼 その2

2019年04月10日 18:54

ホスピタルモールから左折し、
ERへ向かう。
ER内に、ドクターヘリ通信指令室がある。
田中医師、橋本ナースは私より先に、
ドクターヘリ通信指令室に来ていたようで、
ドクターヘリ出動情報ホワイトボードには
黒い文字が書かれていた。
「十和田市、トラクターに轢かれた男性。
救急隊現場到着前」

それを見て、
ERのドアから廊下へ出る。
先ほど運ばれてきた患者の家族が5人、廊下の長いすに座っていた。
相変わらず、着信音はなり続けている。
廊下を左折しエレベーターホールを通過する。
後は、精神科病棟を左に見て一直線に
へリポートドアに向かう。
鉄のヘリポートドアを外へ開けると、
EC135のエンジン音と、
4枚羽が中央で回転する四角形のヘリポートが見える。
左後ろドアには整備長が右腕を水平に出し、
こちらへ向かえと指示している、
エンジンスタートしてから間もないときは、
右後ろドアから3名が乗りこむ。
いまは、4枚羽の回転数は上がっていた。
左ドアだけが空いている。
このことは、ナースとセカンドドクターシート(OJTシート)には、
着席していて、空席はドクターシートだけという事だ。
ドクターシートには私が座る予定だ。
四角形のヘリポーとに近づく。
右前に操縦席に座るヘルメット姿の機長は、
手のひらを前後に降って、
こっちへ来いと呼んでいた。
整備長は、外で
右腕で、乗り込むドアを指示している。
ヘリポートの四角形に入った私は、
それまでの走りを止める。
ここからはスピードではなく、
安全が優先される。
あえてゆっくり歩き、
頭を低くして、
回転する4枚羽の半径の下を通過する。
4枚羽の半径内に入った瞬間、
上から吹き降ろす風がなくなる。
左後ろのスキッドに右足をかけ、
右手をドアの端にかけ、
左足をヘリコプターの床に進める。
一気に腰をドクターシートに載せる。
以前、野田頭所長が乗っていたトヨタランドクルーザーより、
乗りやすい。
ドクターシートに乗ると、
ナース席、セカンドドクターシート席が埋まっていることが分かった。
やはり、自分がシンガリだった。
シンガリとは、部隊の最後尾のこと。
シンガリを漢字で書くと、
「殿」とも書く。
豊臣秀吉や明智光秀、織田信長の戦国時代に、
後退する味方のシンガリを務めることは、
命に関わる重大な任務だった。
ドクターヘリでもそうだ。
出動のシンガリが重要ではない。
現場離陸時のシンガリには意味がある。
北に向かうドクターヘリは気持ちよかった。
春の青空と、緑の畑、
青い太平洋、
気温はまだ低いが気持ちいい。
西に見える八甲田山の残雪の白色の面積も日ごとに小さくなる。
出動先は、八甲田山の東のふもとの十和田市だ。
(続く)

2019年4月12日
弘前大学医学部新入生歓迎の講演をします。
講演タイトル「劇的救命」
場所:弘前大学附属病院
主催:弘前医ゼミに参加する会
18時から20時。
無料です。

トラクターに轢かれて股関節脱臼

2019年04月09日 19:00

朝のブリーフィングで機長から
「中日本航空のヘリが午前中に上空を通過します。
下北半島の潮干狩り会場でドローンによる撮影があります。、
今日の日没は18時○分です。
昨日の雨で地盤の緩いところがありますから、
現場着陸後、地上を走るときに、ぬかるみに足をとられないように気を付けてください。」
最近、ドローンによる撮影が増えてきた。
全てのドローンの飛行申請が出されているわけではないだろうが、
ドクターヘリの機長にとっては、
飛行申請なしのドローンは操縦の邪魔になるらしい。

今日のヘリ番は私と田中医師、橋本ナース。
西日本では4月の気温上昇とともに、熱中症が発生してきている。
八戸では、例年熱中症の初発生は5月から。

午後、事務職員と打ち合わせをしているときだった。
6月26日に予定されている十和田市の藤坂小学校での授業のこと。
「命の大切さ、命を救うすばらしさ」を子供たちに話す。

朝から着込んでいる青色のつなぎ服、フライトスーツの左ポケットでPHSが鳴った。
液晶にはドクターヘリ出動の8文字。
私は打ち合わせを終了させ、席を立った。
玄関前ホールはホスピタルホールと呼ばれ、
3階までの吹き抜けになり、
周囲は歩くために整備されている。
多くの患者は反時計回りに歩くコースを回っている。
わたしは、左胸のPHSの着信音を鳴らしたまま
歩くコースを逆走して走った。
フライトスタッフが持つPHSは、
一部が連動しているらしく、
早めに着信音を切ると、
次の人へ電話がかからない。
したがって、鳴らしたままにする。
足元は安全靴で固めてある。
通常院内で履いているナイキのジョッギングシューズと違い、
入るときに、足は重く感じるし、
靴底が床にぶつかる音も大きい。
だから、PHSの着信音を響かせたまま、
安全靴の靴音を同調させて、
ホスピタルモールを走りぬけることは、
少々目立つ。
多くの患者、職員はこの走りが、
ドクターヘリ出動であることをわかっているので、
道を譲ってくれる。
(続く)

プロフェッショナル 仕事の流儀

2019年04月04日 18:02

【放送予定日】
4/9火曜よる10:30~11:20
NHK総合『プロフェッショナル 仕事の流儀
~地域を守る、命の闘い~救急医・
今明秀』

災害が発生すると中止になります。