痙攣重積 その3

2018年07月07日 18:02

EC135は機種を少し前下にして10秒後には高度300mに浮かんだ。
左には八甲田山があるはずだが、白い雲で見えない。
きっと、八甲田山方面は雪なのだろう。
八甲田山中の酸ヶ湯温泉では積雪が4mを超えたという。
右下に、建設中の屋内アイススケートリンクが見える。
平昌オリンピックで活躍した、
高木姉妹は、2年後には、
八戸の新築リンクで行われる国体に出場してくれるはずだ。
白い雪に浮かぶ街のビルがきれいだ。
高度400mで北に向かう。
右には青い太平洋が見える。
東側はすみった青い空が続いている。
6000km先にはハワイ諸島があるのを想像できる青さだ。
整備長が無線を入れた。
「八戸ドクターヘリ11より、消防八戸どうぞ」
「消防八戸です」
「八戸ドクターヘリは、三菱製紙工場に向けて飛行中。
到着まであと5分」
「消防八戸了解。現場の救急隊はおいらせ救急1、現場到着済み、
おいらせ救急1と無線交信して下さい」

「八戸ドクターヘリ11よりおいらせ救急1どうぞ」
「おいらせ救急1です。患者情報です。
痙攣ありましたが、今は止まっています。
バイタルサインは○○○」
機長はが、室内通話で話しかけてきた。
「まもなく着陸です。
もう一度シートベルトを確認してください」
「はい」「はい」「はい」
(続く)

痙攣重積 その2

2018年07月06日 18:56

EC135の右側面にぽっかり空いている
外部電源取入れ口。
そこに接続されている5cmくらいの直径のホース。
そのホースは、外部電源から、ヘリコプターのセルモーターを回すために
出力を供給している。
整備長は、EC135から外部電源装置を外す。
整備長は外部電源装置を格納庫のシャッターま前まで引きずっておいて来る。
後部席のドアを閉めてロックする。
EC135の機体の表面にある、数か所の小さな扉が閉まっていることを、
自分の手と目で確認する。
メインローターの回転数は上がってきた。
エンジン音が高音になる。
後部席に座った我々は、
シートベルを締めた。
ヘルメット被る。
整備長は、機体の最終チェックを終えて、
左前席に座った。
そして、静かにドアを閉めて、赤いロックレバーをおろした。
メインローターの回転数がさらに上がる。
先ほどまで黒い色だった円周が、
透明に近い円周に変わった。
機長室内通話で後部席に話しかけてきた。
「離陸します。後部席のシートベルト締めていますか」
「はい」「はい」「はい」3名がそれに答えた。
甲高いエンジン音に変わると、
それは数秒後には離陸するサインだ。
精神科病棟にある植え込みの針葉樹が大きく揺れる。
八戸の空は青い。
気温は零下。
冬の八戸の空に、EC135はゆっくりと離陸した。
コンクリートから離れる瞬間はゆっくりだが、
それからあとは早い。
5秒で病院2階の高さに達する。
そして。機種を北西に向け病院の西側に回り込む。
上昇と進行が同時に行われる。
(続く)

痙攣重積 その1

2018年07月05日 18:24

八戸市の北には、海沿いに工業地帯が広がる。
ドクターヘリから見ると、青い海、青い空、白い煙、
黒い工場、
独特な色彩のコントラストだ。

朝の救命カンファランスが終わり、
2階の救命救急センター回診が始まる頃だった。
フライトスーツの右胸ポケットでPHSが鳴った。
液晶にはドクターヘリ出動の文字。
今日のヘリ番はわたしと伊沢医師。
伊沢医師は5年目の後期研修医。
私は、階段を駆け下り、
ドクターヘリ通信指令室(CS室)へ走った。
ヘリ番の日は、朝から安全靴を履いている。
通常診療に使っている、
ジョギングシューズと違い、
重く走りにくい。
CS室へ着いた私は、
後ろ向きに電話対応しているCSの肩越しに話しかける。
CSは振り返り、
私の顔を見ると、
「おいらせ町で痙攣」と教えてくれた。
まだ、看護師、伊沢医師が集合していない状況だった。
CS室ドア横にあるホワイトボードに、
「おいらせ町、けいれん」と黒サインペンでメモした。
ERの自動ドアを抜けて右折する。
カーブミラーを見ながら、左折する。
エレベーターホールを右に見て今度は左折。
後方に伊沢医師の靴音がする。
ヘリポートにつながる、鉄のドアを押し開ける。
コンクリートのヘリポートの中央にEC135が出されている。
スキッドにはカンジキがつけられている。
ヘリコプターの胴体にはバッテリーの電源で動かすことができる車輪がまだ付いていた。
整備長は、車輪がついている台車をヘリコプターから外した。
機長は、格納庫のシャッターを閉める。
それから機長が右前席に乗り込む。
鉄のドアが開き、
ヘリポートに走ってくる我々を
機長は操縦席の局面ガラス越しに見ていた。
操縦席にある無数のスイッチを安全装置を外して
オン状態にする。
まだ、天井のメインローターは静止状態だった。
私、佐々木医師、ナースの順番で後部席に乗り込む。
ほぼ同時に、メインローターが回転し始めた。
(続く)

劇的救命日記の第11話

2018年07月04日 18:28

劇的救命11話2 500

劇的救命日記の第11話が
掲載されています。

https://www.drsgate.com/company/c00042/kon_index.php

額にバンドエイド 後編

2018年07月03日 18:52

女性は頭部CT検査で硬膜下血種であることが分かった。
ERへ戻った女性は再び昏睡状態となった。
気管挿管を行う。
そして手術準備も。
家族は自家用車でERに向かっていた。
家族が到着した。
今野副所長が説明をする。
昏睡状態の女性は手術室へ移動した。

今野副所長の執刀で開頭手術が始まった。
助手は山端医師。
麻酔医は伊沢医師だ。

山端医師に病棟からの呼び出しがあり、手術室から消えていった。
代わりに脳血管外科の鈴木部長が手術の助手に入った。

ゴールデンウィークのERは込み合ったいた。
ドクターカーが出動した脳梗塞患者が、
ダイレクトCTになっていた。
脳梗塞チームフェラーリが招集されていた。
CT結果を受けて、
手術中の鈴木部長に電話が来た。
今度は鈴木部長が手術室から消えた。

夕方になりドクターヘリのスタンバイが終了した。
ERへ顔を出すと、まだ頭部外傷の手術中だと言う。
私は手術室へ様子を見に行く。
10室ある手術室の1室だけ照明がついている。
緊急の頭部外傷の手術が続いていた。
手術室には、
術者の今野副所長と麻酔担当の伊沢医師の二人だけ。
私は、手術前の手洗いを入念にして、
青い手術ガウンを着こんだ。
7半サイズの手袋をつけて、
今野副所長の左に入った。

夜9時頭部外傷の開頭手術はようやく終わった。

当直明けの今野副所長の執念で手術は成功した。
私が助手をした時間はそう長いものではない。

明日のヘリ番はまた私。
ゴールデンウィークはまだ続く。

額にバンドエイド 完
・・・・・
サッカー日本惜しかった!