熟練施設が派遣調整  大規模災害時の指針策定

2017年03月07日 18:36

ドクターヘリ効率化、
熟練施設が派遣調整 
大規模災害時の指針策定


毎日新聞2017年3月1日

東日本大震災や、近い将来に起きると予想される
南海トラフ巨大地震のような、
被災地が広範囲に及ぶ災害時の医療は、
治療の難しい重いけがや病気の患者を被災地外の病院へ運ぶ広域搬送が必要となる。
この時に重要な役割を担う
「ドクターヘリ」をどのように動かすかを定めた運用指針を、
このほど国が策定した。
ヘリ運用の効率化が期待されるが、
一方で広域搬送には限界もあるため、
被災地内で治療を続けることも同時に必要になると指摘されている。
【野田武】
災害時のドクターヘリ毎日新聞201731

 ドクターヘリは、医師が同乗して
患者を治療しながら運ぶことができるのが特長。
東日本大震災の時には全国から16機が集まり、
被災地内の2機と合わせて18機が活動し、
孤立した病院に取り残された患者を運ぶのに役立った。
全国から集まったドクターヘリが災害で活動したのは初めてのことで、
課題も浮かんだ。

 その一つが、指揮系統がはっきりしていなかった点だ。
誰の指示で被災地へ集まり、
救助にあたるかなどがあいまいだった。
このため、集まったヘリの交通整理がうまくいかず、
広域搬送の開始が地震発生から1日以上たってからになった。

 そこで昨年12月、厚生労働省が運用指針を策定し、
全国からのヘリの参集方法や、
その後の活動方法を明記した。
具体的には、
全国に計47機(昨年12月1日現在)配備されている
ドクターヘリを大規模災害時に効率的に派遣するため、
北海道、中部、中国四国、九州など
10の地域ブロックに分割。
各ブロックで、ドクターヘリを使った経験が長く、
地域の中心となっている熟練した施設
を「連絡担当基地病院」に指定し、
災害があった場合にヘリの派遣や待機などの連絡調整をする役目を持たせた。

 また、被災地に集まったヘリは、
被災都道府県の災害対策本部下に設置される
「ドクターヘリ本部」の指揮下に入り、
被災地での救助・医療活動にあたる。
南海トラフのような巨大災害では、
被災都道府県が複数にわたるため、
ドクターヘリ本部は複数県に設置する想定だ。

 指針作りに携わり、
救急医でもある小谷聡司・厚労省地域医療計画課専門官は
「ヘリの調整などは被災都道府県の担当だが、
自治体は多くの業務が生じる。
被災地の負担を減らすのが指針の目的の一つ」と説明する。

 昨年4月の熊本地震では、
策定作業中の指針案を参考にしたドクターヘリの運用がなされ、
九州、中国四国、関西の各ブロックの
14機のヘリが活動した。
各地のヘリの運用調整の実務にあたった
町田浩志・前橋赤十字病院集中治療科・救急科副部長は
「九州のヘリだけでは数が足りないので、
四国、関西へと派遣範囲を広げていった。
ドクターヘリは、被災地へ集めるまでが大変。
調整を支援することで、
熊本県の負担を少しは軽減できたと思う」と振り返った。

厚生労働省のドクターヘリ運用指針が定めるヘリの連絡担当基地病院
・旭川赤十字病院(北海道旭川市)
・八戸市立市民病院(青森県八戸市)
・福島県立医大病院(福島市)
・前橋赤十字病院(前橋市)
・日本医大千葉北総病院(千葉県印西市)
・東海大病院(神奈川県伊勢原市)
・聖隷三方原病院(浜松市)
・大阪大病院(大阪府吹田市)
・川崎医大病院(岡山県倉敷市)
・久留米大病院(福岡県久留米市)

冬の川に落ちた女性の劇的救命 最終

2017年03月05日 18:01

冬の川に落ちた女性の劇的救命 最終
ERでは
太いチューブが動脈と静脈に2本鼠径部から入れられた。
血液温度25度の黒い血液が吸引される。
血液温度計は低い数値を示していた。
黒い血は、人工肺に入る。
そして、39度に加温され酸素化された血液が再び
鼠径部のチューブから女性の動脈に戻る。
PCPSが回り始めた。

ドクターヘリが病院ヘリポートに着陸してから10分、
血管造影室入室後7分で
PCPSが確立した。
早い。
心室細動は続いていたが、
胸骨圧迫は終了した。

血液温は32℃まで順調に上がった。
今度こそと思い、電気ショックを行う。
うまく行った。
心室細動はなくなる。
代わりにきれいな心電図の波となる。
心拍再開した。
瞳孔6-/6-、対光反射はなし。
自発呼吸なしだった。
女性は頭部CT撮影に移動した。
CTでは、心配した脳虚血のサインはなかった。

救命救急センターで次第に瞳孔は縮瞳して
光の反射も
自発呼吸出現し、
手足を動かすようになった。

3日目、人工呼吸を終了し、
PCPSを終了できた。

4日目、
食事開始した。
家族は喜ぶ。
「元通りです」

劇的救命だ

冬の川に落ちた女性の劇的救命 完

冬の川に落ちた女性の劇的救命  その4

2017年03月04日 18:00

近藤医師は、気管挿管後に八戸ERに電話を入れた。
「偶発性低体温症で心肺停止、VF継続しています。
ここから、ヘリコプターランデブーポイントは移動し、
ドクターヘリに収容し、
ERに着くまで早くて25分後です。
八戸ERでPCPSと
血管造影室の準備おねがいします」
「了解」藤田医師


ドクターヘリの白い気体が救急車の運転席のフロントガラスから見えた。
救急車の後部は窓にカーテンがされている。
通常はカーテンのために外は見えない。
室内から前を見ると、
外の雰囲気がよくわかる。
フライトスタッフと消防は
CPRを継続しながら
女性をドクターヘリに収容した。

機長がエンジンスタートさせた。
ふわりと期待が浮かんだと思ったら、
急速度で、空に近づく。

離陸後12分でEC135は八戸市立市民病院に着陸した。
胸骨圧迫は継続している。
自動胸骨圧迫装置が正確に心臓を押していた。

心室細動の女性はヘリポートから
直接、
血管造影室へ移動した。
血管造影室に入った。
両鼠経部のイソジン消毒が始まる。
茶色の変色は消毒の後。
右大腿静脈へ
ルートは現場ですでに確保済み。
大腿動脈のみを確保すればいい。
(続く)

冬の川に落ちた女性の劇的救命  その3

2017年03月03日 18:55

赤車はすぐにランデブーポイントを出発した。
ウーウーサイレンがうるさく響く赤車の室内。
医師たちは、
患者接触時の手順を確認する。
赤車と救急車は10分後にドキング成功した。
予想より救急車は南下して近づいていたのだった。

医師たちは救急車に乗り移った。

救急隊はCPRを行っていた。
「えっつ、
CPAだったか!」
近藤医師は、予想はしていたものの、
上空で最後に聞いた患者情報とちがうことで、
愕然とした。
CPAの情報はERにのみ伝わっていたのだった。

女性の体は死人のように冷たかった。
冷えた川の水でびしょぬれの着衣はすでに脱がされていた。
近藤医師はCPRの位置、深さがいいことを目視した。
頸動脈を触る。
CPRをやめてもらった。
「脈なし」近藤医師
「車を出してください」近藤医師
救急車は走りだした。
走りながらでも処置ができるのが
ドクターカードッキングの強みだ。
救急救命士だけだと、
マンパワーが不足するので、
一つ一つの救急処置を丁寧に安全に行う。
だから、停車中に処置を行うことが多い。
運転手(機関員)の手も借りて、
3名全員で処置をすることが多い。
ドクターカードッキングで、
機関員を運転席においても、
後方で2名の救急救命士と1,2名の医師がいるので、
緊急処置は可能となる。
現場滞在時間の短縮につながる。
揺れる車内で、
近藤医師と看護師は
気管挿管。
田中医師は静脈路確保。
アドレナリ注射。
心室細動にCPRを継続しながら
救急車はドクターヘリが待つランデブーポイントへ走る。
(続く)

冬の川に落ちた女性の劇的救命 その2

2017年03月02日 18:53

フライトドクターの近藤医師と田中医師、ナースは赤車に乗り込む。
ウーウーサイレンで赤車は北に向かった。

少し前、
ドクターヘリがまだ飛行中のころ、
女性を搬送中の救急車で急変が起こる。
救急車収容したショック、意識障害の
低体温症の女性、
酸素投与して、現場を出発した直後だった。

顔色が悪くなり、
呼吸が浅くなる。
心電図モニターは心室細動だ。

救急隊長はすぐにCPRを開始した。
隊員は、AEDを装着する。

頸動脈は触れない。
心停止だ。
隊長はAEDの電気ショックボタンを押した。
電気ショックは確実に女性の心臓に到達した。
だが、心室細動は治まらない。

だめだ、
救急隊長は、
電話をする。
八戸ERへ。
「低体温症、先ほどから心室細動となり、
電気ショック1回。
しかし、戻りません。
このまま、ドクターヘリとランデブーします」

ERでは、ドクターカーV3の出動準備を始めた。
天候が思わしくない。
ドクターヘリが着陸できなければ、
ドクターカーV3を出す。
ERは、急に騒がしくなった。
藤田医師は、CS室に入った。
「ドクターヘリが着陸できなければ、
ドクターカーV3を出します。
ドクターヘリの現在地は?」
「たったいま、十和田市に着陸しました。
でも、現場は離れています。
そこから陸路、赤車移動です」CS
「着陸できそうなら、ドクターヘリに任せます。
ドクターカーV3は出しません」藤田医師
ERではドクターカーV3の準備で全員が動いていた。
「V3中止です」
藤田医師は宣言した。
数分後、再びERはいつもに戻った。
ほぼ同時刻、ドクターヘリはランデブーポイントに着陸した。
ヘリコプターは着陸すると、
無線が届かなくなる。
CPA情報は無線以外の方法でドクターヘリへ伝えることになる
(続く)