用語解説:脳死、低酸素性脳症、改正臓器移植法

2012年06月26日 18:00

6月27日水曜日今明秀テレビ生出演します。
青森県民放ATV.
午前10時から
おしゃべりハウス
今回のテーマは
「ジェネリック薬品」
後発メーカーが安い薬を販売しています。
解説します。


連載中の子供脳死判定について質問があったので用語解説します。
・・・・
脳死

改正臓器移植法は、脳幹を含むすべての脳機能が失われ、
回復しない状態を脳死と規定している。
判定では、
痛みを感じないほど昏睡が深く、
瞳孔が光に反応せず、
のどを刺激してもせき込まないなど脳幹反射が消えて、
脳波がフラットで、
自力で呼吸できない状態を確認する。

6歳以上は6時間以上、6歳未満は24時間以上の間隔を空けて2回検査し、
2回目の終了時が死亡時刻となる。

生後12週未満は法的判定の対象外。

いわゆる植物状態は脳幹の機能が残っており、
脳死とは別。
脳死は心停止、呼吸停止、瞳孔散大の「心臓死」と異なり、
人工呼吸器を着けて心臓は動いている。

・・・・・・・
低酸素性脳症
 
呼吸器や心臓などの循環器が働かなくなり、
脳に十分な酸素供給ができず、脳機能に障害が起きた状態。
心筋梗塞や心停止、窒息、各種のショックなどが原因で起きる。
脳への酸素供給が5分以上途絶えると、
そのあと呼吸が再開しても重い脳障害が生じる。
素早い蘇生が重要とされる

・・・・・・・
改正臓器移植法
 
1997年の臓器移植法の施行以来、
脳死からの臓器提供には本人の書面による意思表示が必要だったため、
提供ができるのは民法で遺言ができる15歳以上に限られていた。
2010年7月に施行された改正法では、
書面による意思表示が不要になり、生前に拒否の意思表示をしていない限り、
家族の承諾があれば脳死判定と臓器提供が可能になったため、
年齢制限もなくなった。
虐待を受けて死亡した子どもから臓器が提供されないよう、
18歳未満の場合は脳死判定する病院の委員会で
虐待の疑いがないか確認することが必要。

明日は、
第2話です。

防ぎえた死:プリベンタブルデス

2012年03月20日 20:10

外傷では、血圧、呼吸数、意識の数値と、
怪我している臓器の重症度、さらに年齢、
鈍的外傷かナイフで刺された外傷か、
これらの条件を方程式に入れて、計算します。
予測救命率がはじき出されます。
予測救命率が、50%以上でなくなったときに、
予測外死亡と判定されます。

さらに、専門家が集まり、
予測外死亡症例の内容を吟味します。
そして、防ぐことが出来た死か、否かが判定されます。
防ぎえた死は、プリベンタブルデスといわれ、
その施設は深く反省します。

この、専門家の協議をpeer reviewといいます。

先日、日本医大高度救命センターから、救急脳外科専門医をお呼びし、
peer reviewを行いました。

3例の頭部外傷死亡例が提示され、
そのうち、1例がプリベンタブルデスでした。

「亡くなったのはショウガナイヨ」ではなく
「なくなった原因を考える。
救命するにはどうすればよかったか考える」です。

まだ、国内の施設では、
予測救命率さえ出していない救命センターがたくさんあります。
peer reviewまでして、プリベンタブルデスか否かを決定する施設は多くありません。

救急医療の質を高めるには、このような取り組みが必要です。

クラッシュシンドローム

2011年11月13日 23:43

クラッシュシンドローム(圧挫症候群)
番組の途中ですが用語解説

長時間の四肢の圧挫,長時間の運動制限あるいは股関節や肩関節における異常屈曲などにより発生する症候群。
基本病態は長時間の圧挫による虚血,圧挫解除による虚血/再灌流による筋細胞融解(横紋筋融解)と
筋細胞内にナトリウムと水分の移行によるショックである。
前者により細胞内から血管内へカリウム,リン酸,ミオグロビン,CPKなどが
流出して高K血症,高CPK血症,急性腎不全,後者により組織が腐る

【診断の3つのカギ】、
①重量物に長時間挟圧されたエピソード、
②患肢の運動知覚麻痺、
③黒~赤褐色尿(ポートワイン尿)である。

4時間以上の挟圧で発症するが、1時間で発症の報告もある。
現場においてバイタルサインは比較的安定しており、
意識状態も軽い興奮状態であるのに、急激に死に至る。
(smiling death)と言われる。

皮膚は当初は異常所見なく、
時間が経過すれば、紅斑、水胞形成、壊死が認められる。
患肢の運動知覚麻痺は肛門反射の有無で脊髄損傷と鑑別できる。

重症化は、損傷された骨格筋の容量多い(30%以上)ほど、
合併損傷がある、
若い屈強な男性で骨格筋の量が多い時である。
骨格筋の量は“the rule of thirds”で、
下肢1本30%、上肢1本15%、頭頸部、体幹合わせて10%で計算する。

【治療方針】
治療は低容量性ショックの蘇生、
高K血症の是正,
急性腎不全に対する透析,
コンパートメント症候群に対する減張切開、
四肢切断などである。

【ドクターヘリ・ドクターカーなど病院前での治療】
救出活動中は、生理食塩水を1~1.5ℓ/時間で輸液する。
循環血液量減少と酸性尿が急性腎不全の増悪因子である。
尿をアルカリ化(pH6.5以上を目安)するには、
メイロン重曹とマンニトール利尿剤を追加する“Crush injury カクテル”。
20%マンニトールは50ml=10gで、1~2g/kg/日を加える。
患肢に対するターニケット(強い圧のゴム帯)の使用の有効性は不明である。

現場でのクラッシュシンドローム予防のための四肢切断は通常しない。

【医療機関での初期治療】
輸液量は、尿量20.0~300ml/時間を維持するように調節する。
ときに12ℓ/日程度の大量輸液になる。
高カリウム血症に対して、メイロン、カルチコールを投与する。
ケーキサレート注腸または経口投与する。
グルコースインスリン療法を行う。
コントロールできなければ透析療法を行う。

【根本治療】
クラッシュシンドロームは集中治療が必要となる可能性が高い。
40%の症例に透析療法が必要となる。
人工呼吸、減張切開、四肢切断術、感染症治療が必要となるので、
高次施設まで搬送することが望ましい。
災害時は航空機での広域搬送の適応となる。

参考 今明秀:圧挫症候群・Crush syndrome.[今日の治療指針2012]今月末発売予定

番組の途中ですが、大動脈内バルーンパンピング

2011年09月11日 06:33

連載の途中ですが
救急用語解説します。
大動脈内バルーンパンピングです。

Intra-aortic balloon pumpingの英訳で
IABPと略されます。

IABPは薬物療法に抵抗性の心原性ショックや重症心不全に対して
比較的容易に施行できる経皮的補助循環法である.
最大の利点は、値段や操作の簡便性から、
ほとんどの施設で使用可能なことである。

A.原理と装置
胸部大動脈内で拡張期にバルーンの膨張により、
大動脈拡張末期圧を上昇させ冠動脈血流を増加し,
心収縮期直前にこの膨張したバルーンを弛緩させて、
収縮期圧を低下させて収縮期血圧を低下させることにより心拍出を容易にする。

しかし、圧力補助であるため、
その効果は自己の心臓ポンプ作用の10~15%増が限界である。
容量25-40ccのバルーン付きカテーテルを大腿動脈から下行大動脈に経皮的に挿入し,
接続したポンプにより大動脈圧波形と心電図波形に応じて駆動させる.
バルーンはヘリウムガスにより膨張、弛緩を繰り返す。

B手技
左右どちらかの大腿動脈より挿入する。
動脈を小切開する方法と、皮膚から穿刺する方法がある。
前者は大腿動脈を露出してこれに人工血管を吻合し
人工血管の中を通してIABPを挿入する。

後者は、経皮的に静脈留置針で大腿動脈を穿刺し、
サイズをダイレーターで拡張し、シースを留置しその中を、
IABPカテーテルを通す。
経皮的法は、容易に迅速に挿入することができるので、
多くの施設に普及している。
緊急的使用に際してはX線透視なしに挿入することが多いが,
必ず胸部X線で留置位置を確認する。
大腿動脈より中枢側動脈の蛇行,
屈曲が高度な症例には挿入できないことがある.
IABP挿入中はヘパリン10,000-20,000単位/日を持続投与し,
挿入側下肢末梢の足背動脈などの動脈拍動に注意する.

IABPは、心周期に合わせて、駆動させることが必要なので、
動脈圧波形を見ながら十分な効果が得られるように、
同期タイミングを調節する。
多くの機種は、自動調整もできる。

抜去後の止血は原則として用手圧迫で行うが,
止血困難例では外科的止血を行う場合もある.


参考
今 明秀:心肺蘇生・循環系の救急。大動脈内バルーンパンピング 。
今日の治療指針2009年

ACS ~Acute Coronary Syndrome~

2009年01月01日 23:44

ACS[ Acute Coronary Syndrome, 急性冠症候群 ]とは、
簡単に言ってしまえば、不安定狭心症と心筋梗塞のことです。

心臓は絶え間なく動く筋肉の塊で、全身に血液を送り続けています。
この心臓の筋肉にも、生きるためには酸素と栄養が必要です。
心臓の筋肉に養分を届けるための血管を冠状動脈、または冠動脈と呼びます。

この冠動脈が狭くなったり詰まったりしたら、どうなるでしょう?
心臓は養分が届かないので、痛みが出たり血圧が下がったり重症不整脈が出たりします。
これが急性冠症候群です。

狭心症と心筋梗塞は、冠動脈に起こっていることが微妙に違います。
しかし、治療は同じです。
だから一括して考えることが多いのです。

たいていの場合、緊急心臓カテーテルによる治療が行われます。
新しいカテーテル開発や膨大な経験によって、カテーテル治療は驚異的に進歩しました。
しかし、それでも、やはり命がけの治療であることに変わりはありません。