気胸 その2

2017年02月20日 18:59

屋根から墜落 その2
上空では、酸素飽和度が落ちた。94%に。
高度を上げると酸素飽和度下がった。
健康な人間でも、
高度を上げると酸素が血液に溶ける量が減る。
酸素飽和度げ減ることで気づく。
三浦雄一郎氏がエベレスト登頂に成功したときに、
酸素吸入をしていた。
高度が高いと酸素飽和度が減るからだ。
三浦雄一郎氏は青森高校卒業生。
数年前、日本航空医療学会で特別講演をしたことがある。

はちのへERには、
循環器の医師が集まってきた。

胸痛の場合に、
5つの致死的胸痛をまず考える。
1心筋梗塞
2大動脈解離
3肺塞栓
4緊張性気胸
5特発性食道破裂

私が連れてきた男性に対して、
心電図検査と心エコーが行われた。
決定的な異常な所見はない。
心筋梗塞の可能性は残るが、
2回目の心電図結果まで保留する。
2度目以降の心電図で心筋梗塞の所見が出てくるのが、
11%ある。
それらは一度目の心電図は正常だったという。

であれば次に移る。
血圧はいいし、
胸部、頸部に皮下気腫はない。
頚静脈は腫れていない。
これらは緊張性気胸の所見だ。
緊張性気胸は、
外傷と、人工呼吸中に起こりやすい。
ケガでなく、身体所見も特徴的なものがなければ、
緊張性気胸はないと判断した。

小さな気胸があるかどうかは胸部レントゲンで見ればいい。

次は胸部レントゲン。
上縦郭が拡大する大動脈解離を考えるからだ。
両腕の血圧に左右差(15以上差、20以上という本もある)あると決まりだが、
ないからと言って否定はできない。
背部痛が激烈で、移動すればさらに大動脈解離らしい。
この3つともあれば、100%大動脈解離だ。
しかし、大動脈解離の中に
3項目の一つも当てはまらないものが、7%ある。
やはり侮れない。
この患者の痛みは大動脈痛とは違う。
おそらく大動脈解離ではないが、
確認するためにCT検査が必要だ。
7%の見逃しをふせぐためにCTを検査をする。

胸部レントゲンでは、
気胸が見つかった。
胸痛の原因だ。
小さな気胸だ。


大動脈解離を疑ったらCT検査だ。
CT検査を行うことになった。
ついでに、気胸の大きさもわかる。
ほかの、致死的胸痛(肺塞栓、特発性食道破裂)もわかる。
(続く)

気胸 その1

2017年02月19日 18:57

低気圧と低気圧の間の
晴れの日だった。
昨日までの冬型気圧配置で、
北国は豪雪となっていた。
今日は晴れ。
しかし、気温は低い。
機長は朝のブリーフィングで
「寒気団が上空にあります。
気温が下がります。
充分な防寒対策をとってください。
離着陸時は、
氷で機体が回転する事があります。
注意が必要です」
機体の重みで通常はヘリコプターは着地していると、
地面が氷でも、びくともしない。
しかし、天井のメインローターが回り、
機体が浮き気味になると、
さらに、メインローターの回転の力が加わると、
それまでどっしり氷についていたスキッド(ヘリコプターの二本の足)の、
摩擦係数が減り、
滑りだす。


午前中の要請は、
胸痛男性。
今日のヘリ番は私と佐々木研修医。
ランデブーポイントの下田公園には、5分で到達した。
着陸して、救急車の到着を待った。

数分後に救急車は胸痛男性を乗せてランデブーポイントにやってきた。

救急車内で診察を始めた。
冷や汗はない。
脈拍はよく触れる。
呼吸は早い。
意識はよい。
血圧、心拍数はよし。
血圧左右差はない。
酸素飽和度が、酸素投与にも関わらず95%で低かった。
呼吸音異常はない。
胸痛は4時間続いている。
心電図12誘導は問題ない。
胸痛は、呼吸で増減するという。
痛いところを手で示してもらった。
すると、右手の示指と中指で、指して教えてくれた。
「痛みは呼吸の強さで変わりますか?」
「変わります。大きく吸うと痛い」
指先で示す胸痛に重症は少ないとは言う。
ての平や握りこぶしで示す胸痛は重症という。
しかし、指先で示す胸痛にも重症が
3%存在するという。
100人心筋梗塞がいたら
3人は指先で痛いところを示す。
呼吸で痛みが変動する心筋梗塞も2%くらいる。
見逃してはいけない胸痛を知っていれば、
現場での診察は確率から最大に可能清のある病気を考えて行動する。
今回は頻度から言って、
心筋梗塞ではなく、
呼吸に関した胸痛の可能性が高い。


「胸痛は、肺が原因だ」私は強く思った。
だが、肺エコーをしたが、異常所見は見つけられなかった。
気胸を見つけるエコー検査だ。
酸素投与継続で、ヘリコプターに収容した。
(続く)

屋根から墜落

2017年02月18日 18:53

男性は、屋根に上り作業をしていた。
家族は危ないのでやめろと、
注意をしたが、
頑固な男性は聞く耳を持たない。

作業中に足を滑らす。
ヘルメットはかぶっていなかった。

119通報は三沢消防に入った。
救急車が出動する。
八戸ドクターヘリに出動要請が入った。
ヘリ番は木村医師。

木村医師が患者に接触したのは
救急車の中だった。
男性は骨盤を痛がっていた。
三沢救急隊は、
墜落外傷による骨盤骨折を考えて、
骨盤固定帯サムスリングを使用していた。
聴診器で聞いた呼吸音は左で弱い。
気胸はある。
だが緊急度の高いの緊張性気胸ではない。
血圧は安定していた。
輸液路をとって、麻薬を入れた。
患者の痛みはすこし遠のいた。

木村医師は患者をドクターヘリに収容した。
止血剤のトランサミンを注射する。
向かうは八戸ER.

ドクターヘリは8分で八戸市立市民病院救命救急センターに到着した。
まずERに患者は入った。
骨盤と胸部のレントゲンを撮影した。
骨盤骨折がある。
気胸がある。
胸腔ドレーンを近藤医師が入れた。
気胸の治療だ。
緊張気胸と言って、
血圧低下と低酸素状態の気胸では
現場で胸腔ドレーンを入れる。
そうしないと心臓停止するかもしれない。
しかし、そうでない気胸は、
ERまで運んで胸腔ドレーンを入れることが多い。
現場で入れる胸腔ドレーンは、
感染する危険が高いからだ。
ただし、ヘリコプターで上空の気圧の低い場所を飛ぶと、
軽症気胸も、
低気圧のせいで大きな気胸になる危険もある。
だから、気胸に対しては、
いつでも胸腔ドレーンを入れられるように、ヘリコプター内で観察する。
現場ではレントゲンを撮れないので、
現場では身体所見と症状、経皮酸素飽和度から気胸を診断する。
最近では、それに加えて
肺エコーも普及してきた。

骨盤骨折については
現場救急隊の観察は当たっていた。
骨盤骨折も、現場で
レントゲンは撮れない。
現場では身体所見と症状、受傷機転から骨盤骨折を診断する。
骨盤骨折身体所見とは、
下肢の長さが左右で違う。
骨盤、会陰に血種、
骨盤に圧痛、
大腿の内旋、外旋の変形など。

患者はCT室へ移動した。

胸椎9番目と腰椎1番目が折れていた。
さらに大動脈にも亀裂がある。
骨盤骨折もある。

血圧が安定、貧血なし。

患者は救命救急センターに入院した。

(完)

・・・・・・
明日は、気胸に患者です

冬は胸に来る

2017年02月17日 18:42

JRスキーキャンペーン初日に11月に東京で雪。
その後も、西日本で大雪。
今年の冬は大変です。
そのJRスキーキャンペーンのポスターをよく見ると
気になります。
冬が胸に来た
 JRポスターから転写

新幹線でゆくスキーツアー。
湯沢駅からすぐのスキー場。
便利で、楽しい、雪がどっさりある。
そのコピーは
「冬が胸にきた」
冬が胸にきた2
  JRポスターから転写

「スキー」で「スキ」を連想させる
「ゆき」で「すき」を連想させる。
JRスキーツアーはあきらかに、
雪、好き、スキー、と恋をほのめかす戦術です。


さて、こちらは外国の論文
「クリスマス直後は心不全の増悪が増える?」
Clinical research in cardiology誌2016年10月号に掲載。
 以前の研究から、
心疾患罹患率および心不全の増悪が冬に増加し、
クリスマスホリデーシーズンごろがピークとなることが示唆されている。
祝祭日における過食、
関連する感情的なストレス、
運動の少なさ、
祝祭日後の診療の遅れを挙げている。

こちらは、八戸市立市民病院救命救急センター
年末年始で心不全が増える。
日本では、クリスマスでなく
お正月に心不全が増える。

「冬が胸に来る」
冬が胸に来た3
  JRポスターから転写


今年の冬は雪が多い西日本で
心不全に注意ですよ。
全部雪のせいだ  
  前シーズンJRポスターから転写

工場で墜落事故 最終

2017年02月16日 18:56

いま、手術室でレントゲンイメージを使い血管造影するのなら、
すぐにでも可能だ。
血管造影室での血管内治療より、
ここ、手術室での血管内治療のほうが、
早くできる。
早くできれば、
輸血量を減らせる。
凝固機能も早く戻る。
昆医師に電話を掛けた。
「はい、それなら、手術室で血管造影します」

大腿の止血手術が終わったころ、
続けて、手術室の骨折牽引手術台で昆医師と田中医師による
血管造影が始まった。
出血部はすぐに分かった。
深大腿動脈だ。
血管内塞栓術もうまくいった。

藤田医師が手術室に戻ってきた。
「入院患者さんが、
心筋梗塞になりました。
心臓カテーテル室へ移動前に、
心肺停止になりました。
難治性VFに対して
PCPSを導入しました」
「重症外傷の手術と
PCPSを同時並行でやっていたんだ」私
「はい」明るい返事だった。

我々は輸血を継続しながら、
男性を手術台からベッドに移した。
血管造影と止血術で止血は完了した。
午前0時を過ぎたころ、
ようやく、男性は
救命救急センターに入院した。

隣のベッドには、
胸腔ドレーンがつながっている患者が寝ていた。
「あれ、この患者は何?」私
「工場墜落外傷のすぐ後で、
屋根から墜落した外傷にドクターヘリが出ています。
木村医師が運んできた、
もう一人の重症外傷です。
気胸、背骨の破裂骨折、骨盤骨折です。」近藤医師

年末のERには、重症患者は重なって運ばれてくる。

国民が、通常の医療者が休息している時期に、
救命救急センターは大活躍する。

「今年は、元日が日曜日で損した気持ちですね」研修医
「なに言っているの、
日曜日が元日だと、
年末年始の連休が6日で終わる。
ほっとします。
いつだったか、9連休の時は、
激しい終わりのない救急診療で苦しかったです。
今年は、6日で終わるので
よかった」伊藤香葉医師が笑って言う。



工場で墜落事故 完