診療拒否 その2

2012年01月31日 18:05

その2
症例提示が赤坂医師の順番となった。
赤坂医師の顔が会場に見えない。
おや、ERが混み合っているのかな。
しかたないので、
赤坂医師の作ったプレゼンファイルを私が読み上げた。

その直後、赤坂医師からPHSが鳴る。
「高エネルギー事故、ドクターカー出動した女性。
診療拒否しています。
ヘルプお願いします」
「OK,直ぐ行く」私

ER2ベッドには、血まみれの女性と、救急隊、赤坂医師、救急ナースがいた。
女性は弱い声であるが、しっかりと診療拒否していた。
暴れている。
救急隊が押さえ込んでいた。

「このパターンは、重傷外傷だ。
鎮静して、プライマリーサーベイだ」私
異常な興奮は、低酸素,循環障害によることが多い。
しっかりと評価する必要がある。
過小評価で、ゆっくりと診察することは失敗の元。

わずかな鎮静薬でこんな場合は、寝る。
もしわずかな量で寝れば、それは重傷外傷が隠れている証拠。
本当に、精神興奮なら、鎮静剤は多めにいる。
「プロポフォール用意して」私
救急隊員は、ばたつく両膝を押さえる。
救急ナースは、待っていましたとばかりに直ぐに動き出した。
「2ml注射」私は、声に出しながら薬剤を注射した。
「さあ、これで落ちるよ、酸素もマスクで用意して、6L」私
予想とおりだ。
この少ない量で昏睡状態となった。
やはり、酸素、循環に異常があるはず。
ようやく、酸素飽和度計がついた。
心電図モニターも着いた。
血圧が測られた。
赤坂医師が、頚部、胸部の診察をはじめた。
診察15秒で直ぐ
「皮下気腫あります。
動揺あります」
「頸静脈は?」私
「頸静脈はOK、しかし、脈拍が弱い」赤坂
「緊張性気胸だ」私
「用意します。胸腔ドレーン」赤坂
「28F両側」私
「首のカラーはどうしましょうか」赤坂医師
「受傷機転は?」私
「軽自動車対トラック、車外放出、フロントガラス大破、エアバッグあり、ノーブレーキ事故」赤坂医師は正確な観察をしていた。
「頭部外傷の10%に頸椎損傷がある。
この頭の出血、フロントガラス破損、興奮状態は頭部外傷を疑う」
「じゃあ、カラー必要ですね」赤坂
「この、興奮状態の患者にカラーを現場で巻いていなかったことは、しかたない。
その代わりここで巻く」私

「ノーブレーキ事故かあ、
6Sだ。」私
(続く)


コメント

  1. チョコ | URL | -

    やはり素晴らしいですね!!!
    過小評価しがちな場所であっても決して見逃さない。 かっこいいです!!

    私はまだ高校生ですがいつも勉強させていただいています。 8割ぐらい用語や会話が理解できるようになりました?
    私は将来医師を目指していましたが、
    現在は防衛大学から救難隊を目指しています。

    このようにブログを書いてくださる事はとても勉強になる事であり医療について感心を誘う事だと思います。

    分娩についてのシリーズがとても感心がありました。
    というか分娩の現状というのを目の当たりにされました。

    私は岐阜県の高山市に住んでいますが
    産科医は数えられるぐらいしかいなく
    医師の数もワーストと聞いており、知っているつもりでした。
    病院だけでなくヘリでの問題でもあるとは知りませんでした。

    このように医療の現状について知ることができるのは今後に生きていくのだと思います。
    本で書くより多数の方が見られると思います。 そんな中で現状を知る事は本当に大事だとこのブログで学ばせていただきました。

    今後も医療の現場、現状について多数の方に知らせてください?
    ヘリが2機になることからも救える命に
    少しでも力になってほしいです!!
    頑張ってください!!

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