劇的救命 妊婦もうひとり

2012年01月22日 19:19

劇的救命 妊婦もうひとり

ずいぶん前のことです。

思い出します。

なきすがった夫のことを、
死を覚悟した彼女の顔を。

28歳女性。妊娠38週。
近医にて難産のため吸引分娩、腹部圧迫法施行。
元気な女児3800gを出産。

分娩後ショックとなり、Hb6g/dlまで下降した。
輸血を継続しながら当院へ救急搬送となった。

【ER所見】
来院時意識低下、血圧90/50mmHg 、心拍数120回/分、体温34.3℃、
頻呼吸、腹部膨隆を認めた。
超音波検査では大量の腹腔内貯留液を認め、膣口からも持続出血があり
産科チームが対応した。
【産科手術】
1. 子宮破裂及び出血性ショックに子宮全摘
1. 輸血量はMAP 23単位、FFP 22単位
2. 深夜2回目開腹止血術。
3. 翌朝3回開腹止血術。
4. 翌々日決死の覚悟で4回目の手術に臨んだ。

4回目開腹手術
産科チームは手術用のガーゼを腹部に詰め込んで、手術を終わろうとしていた。
換気不全、酸素化不良、無尿状態に陥った。
産科チームは救命をあきらめていた。
・・・・・
私は術者を志願した
そして救命科転科。
妊婦を救急医が受け持つ。

腹部コンパートメント症候群
減圧のために手術創を上腹部まで延長すると、腸管が飛びだし、
腹腔内圧は減少した。呼吸状態は改善した。
脾臓下極の挫創を偶然発見→脾臓を切除
死の三徴(低体温、アシドーシス、凝固障害)が出ていた。
プラスチックバッグで一時閉創とした。

術後は厳しい戦いだった。
尿は一滴も出ない日が、すでに3日。
集中治療。
人工呼吸、持続透析を行う。

72時間後予定どうり閉腹術を施行した。
集中治療を続ける。

輸血量赤血球100単位FFP134単位
濃厚血小製剤90単位

3週間後、産科へ転科。
そして退院した。

1年後、私は彼女と再会。
見違えるような健康的な笑顔だった。

劇的救命です。
医師人生の思い出に残る手術でした。



コメント

  1. tf | URL | -

    そんな過酷な状況から立ち直って元気な姿をみるとこちらもまた希望が湧きそうな気がしますね!

  2. 病院事務職員 | URL | kHc7.o4M

    劇的救命と病院経営

    回復されてなによりです。

    病院としては、
    診療報酬請求時に査定無しで認められたのかが気になります。

  3. 救急医学勉強中の18年目の腹部外科医 | URL | -

    しびれました。

    「術者を志願した」にしびれました。
    ACSで厳しい状況は救急を理解している外科医にしか助けられないことを改めて認識しました。

  4. ママ友 | URL | -

    その奇跡的に助かった彼女と出逢いました。とても幸せそうでその笑顔でまわりをも幸せにしてくれる本当に素晴らしい女性です。そんな彼女を助けて下さり本当に有難うございました。話を聞き、また、1日1日を大事に生きてる彼女を見て、わたし自身一生懸命生きていかなきゃと思いました。彼女に出逢えた事に感謝感謝です。

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