なぜ救急医が産科を学ぶのか、産科医が出血性ショックを学ぶのか

2012年01月15日 18:57

救急医が産科救急を学ぶわけ
産科医が、出血性ショックを学ぶわけ

ある病院で出産した産婦。いったん退院したが、産後出血が止まらない。
同院へ、再入院した。
出血量6L。輸血を開始し、八戸市立市民病院へ転院の手はずを進めた。
電話で受けた研修医3年目産科志望の比嘉医師は、ドクターヘリ搬送を勧めた。
「ヘリコプターを使うほどではないよ」先方の産科医師の声
70分後、救急車で患者は八戸ERへ運ばれてきた。
重症産婦は直接周産期センターへ、移動しない。
なぜなら、生命徴候を安定させるのがすべてに優先されるから。
それには、ERが最適。

産科チームは、ER1ベッドで患者の初期治療に当たった。
付き添ってきた医師は、前医の産科医師ではなく、研修医だった。
付き添い医師が、研修医だったことを、八戸ERスタッフは知らなかった。
われわれは、研修医を発展途上医と考える。
だから、研修医に重要な所は任せない。
産科チームの声が聞こえた。
膣の診察をしているらしい。

約15分後、
「血圧50です」看護師の声が大きくなった。
彼女はフライトナース。

ER2ベッドでは、軽米医師と丸橋医師の、新潟大学卒コンビがER当番で患者に対応していた。
「えっ、50!」軽米医師が、カーテンを開けて、ER1へ首を突っ込んだ。
丸橋医師は、ほぼ同時に、患者のトウコツを触れた。
「触れない、輸血、輸液,ソウカン、手術」軽米医師が控えめに声を出した。
搬入15分たったが、ショックの対応がされていないことがわかった。

それからは、救急医が患者の頭側に立ち、患者の循環を持ち上げた。
そうして手術室へ移動した。
手術は無事終わった。
翌朝まで、救命救急センターで人工呼吸が続けられた。
「酸素化はいい。水分バランスはマイナス、貧血は無い、
呼吸の胸の上がりはよし、痰は少ない、意識はよし、気管チューブを抜きます」丸橋医師
朝の、救命回診のあとで、気管のチューブを抜いた。

重症患者は、産科分野でも、救命が受け持つ。
われわれは、過小評価はしない・・ようにしている。
日本の産科の事故は、産科の技術の問題より、
全身状態の把握があまいせいもあるのではないでしょうか。

比嘉3年目研修医は、電話で患者の状態を聞いて、重症と判断した、
そしてドクターヘリ出動を提案した。
ベテラン産科医師は、その必要ないよ。
付き添ってきた他院研修医は、危機的状況であることを伝えてくれなかった。
当院、産科チームは、膣の診察を中心にして、輸血、気管ソウカンの行動はしていなかった。

2012年、1月21-22日、八戸市立市民病院救命救急センターでは、
産科救急講習会ALSOを開催する予定。
産科危機的状態には、産科医と救急医がチームで立ち向かう。
ドクターヘリやドクターカーで産科救急に出くわすこともある。
だから、われわれは産科救急を学ぶ。

この町は安全。


コメント

  1. 大学産婦人科教室 | URL | -

    逆じゃないでしょうか

    前医が全身管理の必要性、産科危機的出血のガイドラインに沿って麻酔科医、救急医と協力し対応を取り決めすることが大事なことがまず一番必要であること。

    次に麻酔科医、救急医が産科危機的出血ガイドラインを勉強することだと思います。

    今回の詳細はわかりませんが手術の判断が早過ぎた可能性があります。産科DICではFFPを多く輸血しないと手術でも止まりません。

    今回のタイトルは「産科医が産科出血を勉強すること」にした方がいいですね。
    救急医が2日間、範囲の広いALSOを学ぶ必要性は感じません。流産や肩甲難産とかは要りません。

  2. 田舎の救急医 | URL | iU4puUNs

    おしえてください

    大学産婦人科教室さんへ

    おしえてください
    産科危機的出血ガイドラインにそうこと、その重要性はわかります。

    しかし、
    田舎病院には、十分な輸血製剤はなく、交通網も整っていません。また、産科医すらいない地域はたくさんあります。
    さらに、雪国では路面も雪や凍結により、夏場とは違ってスムーズに輸血製剤の補充や高次医療機関への搬送はできません。

    太平洋のど真ん中、飛行機の中でお産が始まってしまったとき、どうしたらよいのでしょう。

    自分一人しか居ないところで、脈が弱く徐脈になっていく産褥婦、母のぬくもりに触れることなく命を終えようとしている胎児を目の当たりにしたときに、どうかしたいと思うのはヒトとして当たり前のことではないでしょうか。

    確かに、専門分野については専門科が対応できたらベストなのでしょう。都心を離れれば、産科医、麻酔科医も救急医も不足しています。残念ながら、ベストな周産期対応ができるのは、今の日本でそうしたことが叶うのは、一部の地域だけではないでしょうか。

    ガイドラインに従うことができない状態なんていくらでもあるはずです。



    救急医療は、各科疾患がまたがっています。だからこそ、救急医は緊急性が高い疾患、緊急性の高い処置を学び続けるのではないでしょうか。

    海外の救急の教科書、成書、いわゆる内科でいうところのハリソンですが、お産や帝王切開について記載があったと思います。白衣のポケットに入る程度のものにも、お産の記載があります。その理由はなぜでしょうか。

    そもそも、ALSOの対象はプライマリケア医や産科研修医などであったはず。決して、産科医だけではなかったはず。その理由はいったいなんなのでしょうか。



    このブログ主の意図すること、
     地域の格差なく、
     一人でも多くの命を救うこと 
     一人の笑顔も失わないこと
    ただそれだけを追求しているのではないかと、私は思います。

  3. 鈴木大輔 | URL | mQop/nM.

    まだ2番目のコメントは承認待ちですが、コメントいれます。
    産婦人科医は出血に慣れすぎているためか過小評価になりがちと思います。産後の出血は1リットルぐらいはちょっとした輸液で問題なくクリアできます。それになれていくと閾値を超えた出血症例の対応があまくなりこのような状況に陥ると思われます。6リットルの出血がどの時点でのカウントなのかわかりませんが前医のみでの6リットルなら超緊急状態ですよね。塞栓術にいくかオペをすぐに決断すべきだし、その施設でできないなら急いで上位搬送と考えます。70分かけて地上搬送するよりドクヘリ搬送です。前医で何もできないなら救急医がIABOを持って行って、IABOを入れて帰ってくるぐらいしてもいいかもしれません。輸血ができてバイタル保てて出血が収まっているならいいですが。
    ALSOについては救急医には難しすぎるのは確かだと思います。前橋では救急医にはBLSOをおすすめしています。救急医には産科医療を知ってもらえばこのような出血性ショックの対応に容易に協力しあえると思います。産科医は救急医という医師がどのようなことをしてくれるのかを知るべきかと思います。救急医は出血性ショックに非常に慣れているため、スムーズに対応してくれるはずです。救急医が近くにいるなら全身管理を救急医にまかせ、産婦人科医はお股にだけいればよいです。頭にまわる必要はありません。産科医は重症の産科出血に敏感になるべきだしショックインデックスは最低ラインで重要視すべき所見だと思います。本物の大量出血に迅速に対応できるようになるといいですね。
    ちなみに重症骨盤骨折と重症産後出血は似ていると思います。

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