骨盤後腹膜パッキングと劇的救命 その3

2011年11月18日 23:20

ERでは
「気管ソウカンします」新美
「この、下肢の短さは、骨盤骨折だ、下肢の開放骨折もある。
骨盤固定帯を巻いて」吉村
「頚動脈触れません」吉岡隆文
「えっつ」全員吉岡医師を見た。

吉岡医師は心臓マッサージを始めた。
119番通報から68分後。

出血性ショックは、ほうっておくと60分で死亡率100%。
だから、その前に、ドクターヘリが現場で治療を開始する。
救急専門医が現場へ時速200kmで向かう。
そして、時速200kmに負けないスピードと技で患者を持ち上げる。
受傷から60分以内に、手術室へ向かう。
だから、50km、片道15分が患者を救える限界だ。
離陸まで5分、片道15分、現場活動15分、帰り10分が限界。
今回は、青森市から現場への距離が遠かった。

アドレナリンが1mg注射された。
心臓マッサージが続けられた。
野田頭医師は、左開胸手術で下半身大動脈を閉鎖する準備にかかった。
O型血をポンピング急速輸血4単位する。
鈍的外傷の心停止は、蘇生率が低い。
心臓が動かないなら、
大動脈を胸で閉鎖する。
左胸に、イソジンが塗られた。

奇跡だ、心臓が動き出した。
頚動脈が触れる。
野田頭医師は、開胸手術を中止した。
代わって大動脈閉鎖バルーンを用意しはじめる。

胸の大動脈の中で風船を膨らまして大動脈を閉鎖する。
腹部以下の出血を一時的に制御する。
両側大腿動脈にカテーテルを入れた。

輸血が4単位終わり、血圧が測定できるようになった。
骨盤レントゲンでは、恥骨結合が3cm開く、open book型骨盤骨折だ。
最重症!
恥骨結合は2.5cm開くと出血量が多くなる。

まず、血管造影室へ移動し、骨盤出血に動脈塞栓術。
そして、手術室で、骨盤創外固定。

動脈塞栓術が終了し、血圧が安定した。

骨盤と腹はつながっている。
腹の外傷は最初の超音波検査FASTで問題なし。

いつもどおりに、再検査する。
無常にも今度は超音波検査FASTで腹腔内出血が出現した。
われわれは患者を手術室へ移動させた。

移動の前に野田頭部長が、ドクターヘリカルテを見た。
救急隊接触時、血圧90/58.脈拍65.
フライトドクター接触時、血圧85/64.脈拍96。重症だ。
ただし重症度推定の呼吸数は記載ない。
現場離陸時、血圧88/69.脈拍96.呼吸数記載なし。
「現場でショックじゃないか、それに呼吸数が書いていない。
ウーン・・」

外傷ショックの評価には呼吸数が大事。
過小評価は禁物。
ゴールデンタイムを意識する。
受傷から60分以内で手術室や血管造影室などに入れる。

手術室へ移動した。
出血源は骨盤。
骨折から出る出血を、外から、フレームをくんで、骨盤を固定する。
骨盤創外固定だ。
そして、続けて開腹術。

血圧が再び下がる。
骨盤骨折で輸血4単位でも血圧が安定しないときに選択するのが
骨盤後腹膜パッキング。
骨盤後腹膜にタオルを詰め込む。
アメリカでも、全施設が賛同して行っているわけではない。
もちろん、日本では、まだ普及していない。
骨盤の止血をタオルで圧迫止血したあと、
開腹手術する。
腹の中の損傷を見る。
(続く)


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