800件目出動は下北半島突端東通村

2011年10月06日 18:53

8月下旬

夏休みを利用して医学生が実習に来ている。
自治医大学生の二部君は、肺炎の患者を昨日ERで野田頭医師とペアで受け持ちした。
及川さんは、吉村医師とペアで脳梗塞を受け持ちした。
朝の救命カンファランスでは、昨日入院患者9名の中に混じって、彼らもプレゼンする。
救命救急科の受け持ちは今朝の時点で96名。

昨日病院経営会議が行われた。
昨年度、八戸市立市民病院では、単年度6億円黒字。
7月の入院外来収入は合計11億5千万円。昨年同月より約3千万円増収だ。
救命救急科では、7月は、2億3百万円の収入(病院全体の18%)。
入院患者数は延べ2500人、
新入院患者数は223人。
病院内で一番入院患者数が多く、新入院患者数も多く、収入も多い診療科だ。

多くの救命救急センターは赤字経営なので、県から億単位の補助金をもらっている。

八戸市立市民病院救命救急センターも、5年前までは県から頂いていた。

いまは、青森県から、補助金はもらっていない。

細かいところで補助は頂いている。
たとえば、ドクターヘリのヘルメットや無線機。
気道確保講習会の補助金。
中心静脈穿刺講習会の補助金。

限られた予算の中で、どこにお金を回すかを決めるのは難しい。
八戸に救命救急センターの補助金が下りない事は、理解できる。


夜も昼も日曜日も、連休も手を抜かないで診療すれば当たり前に、診療報酬は増える。
厚労省全国病院調査で、今一番求人が多いのがリハビリ科医師(1.23倍)、救急科医師(1.21倍)、呼吸器内科(1.16倍)、分娩取り扱い医師(1.15倍)。
医師求人倍率が多い順に、島根県、岩手県、青森県(1.22倍)

日本3位の医師求人数(医師不足)の県で、日本2位の高倍求人診療科(医師不足)の救急科医師を集めている奇跡が八戸で起こっている。


朝のカンファランス中にドクターヘリ出動のパトライトが電子音と共に回りだした。
ヘリ番の横浜生まれ高田医師と京都生まれ新美医師は駆け出して行った。

今日は800件目の出動の日だ。
朝からその話題で持ちきりだった。
昨日は、私のヘリ番。
月通算60件を出動したが、
総通算799件。
800件は逃した。

800件目は下北半島突端の東通村からのドクターヘリ出動要請だった。
八戸と東通村は88.7km.
八戸から太平洋を北に向かうと突き当たる。
途中に高い山は無い。

患者は東通村診療所に救急車で運ばれた。
呼吸不全。
SPO2は70%。
低酸素状態。
冷や汗、血圧は80.
ショック状態。
いったん、診療所所長の川原田医師は診療所の救急室へ入れた。
同時に消防にドクターヘリ要請した。
酸素投与しても
SPO2は76%。上がらない。
酸素化は改善しない。

青森県ドクターヘリは快晴の八戸を離陸した。
太平洋を飛ぶドクターヘリ。
和歌山県ドクターヘリと並び、太平洋を南に北に飛ぶ。

23分後に着陸。
東通村診療所は隣接した場所に消防がある。
消防と診療所の境界に夜間照明つきヘリポートがある。
青森市からだと、東通村まで18分くらい。
5分の差がある。
もし、青森県に2機ドクターヘリがあったらどちらから速い方が離陸することになる。
あるいは天候が安定しているほうから離陸することになる。

八戸のフライトドクターは7名全員救急専門医(今年受験するものもいる)。
三次救急専従医。
呼吸不全は得意。

しかし、高田医師は、患者に接触していてあせった。
低酸素が治まらない。
高田医師は、気管ソウカン、人工呼吸を始めた。

ダイレクトブルーに電話した。


昨夜当直で持っていたわたしの胸ポケットのダイレクトブルーPHSが鳴った。
「ソウカンしても低酸素変わりません。これから運びます」高田医師
「はい、用意しています」私

救命カンファランスが終わり、これから救命救急センター回診が始まる。
私はその前に、八戸ERへ顔を出した。

「ヘリポートへ、人工呼吸器ベネット840を持っていく用意。
気管吸引器も用意して」
低酸素状態で高度を上げれうとさらに定位酸素になる。
低酸素が続けば心停止する。
わたしは、ヘリコプターから出された直後から、高いpeepをかけた人工呼吸を開始する作戦を練った。
「はい、分かりました」福岡生まれ安部医師は今日ER当番。

その頃、救命病棟では下血の患者に八戸生まれ野田頭医師が対応していた。
ショックになったので、これから内視鏡をはじめるという。

800件目のドクターヘリは太平洋ドクターヘリだった。
海は、日本中につながる。
日本中から集まる救急医が太平洋北端で活躍する。

勝負はこれから
呼吸不全患者を救う。

学生の二部君は、ヘリコプターで僻地へ出動し、ヘリポートから人工呼吸器を使い始め、ERで緊急処置し、CCMで集中治療を行う体制に驚いていた。


追加情報
9月末に839件目が八戸から津軽(金木地区)へ飛んでいる。
八戸基地は、これでいったん最終。
10月始めより、青森県ドクターヘリは青森県病へ基地病院が移動しました。
12月に八戸へ戻ってきます。

以前いただいた読者のご意見を尊重し、
基地病院でなくなっても、このブログは続けます。


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