大間危うし 後編

2011年10月02日 12:36

「できるだけ短縮します」高田医師
11時35分、いつもより時間をかけて、ようやく大間ウィングに着陸した。
すでに大間救急1は到着済み。
11時37分、高田医師、神田ナースは救急車内の患者に接触した。
クイックサーベイは簡単だ、
呼びかけに対する反応で意識を診る、胸の呼吸の動きと速さ、トウコツの脈の速さ、強さ、冷や汗の有無、外出血の有無、マエナライで、両腕の筋力麻痺を見る、イーと言ってと顔の麻痺を見る。
バイタルサインを同時に救急隊にたずねる。

隊長にお願いする。
「救急車をゆっくりと、ヘリコプターに近づけてください」
担当医に診断名、輸液のスピード、薬剤の追加予定をたずねる。
ここまで4分。
隊長に、県病搬送を告げ、車からヘリコプターに患者を移動させる。

ナースにあとはまかせて、医師は車から降りる。
携帯電話で、収容先病院へ患者情報を入れる。
追加の検査、診察は、離陸してから行う。
特に、脳卒中なら血糖検査は必須。
脳に悪影響を与えるのは、低血圧、低酸素、低血糖。
次に、高血圧。

大間町に雨が降り出した。
津軽海峡には暗い雲が流れる。
西の竜飛岬方面はまったく見えない。
もちろん函館も見えない。
11時45分離陸。
危機一髪。
離陸したEC135には、さらに試練が待ち受ける。

平舘海峡を過ぎれば、晴れた日なら青森市が高度400mから見えるのだが、今日はダメだ。
眼の前の雲の薄いところを選んで飛行する。
目的地の緯度経度はインプットされているが、雲のため真っ直ぐは飛べない。
速度を落として注意深く飛ぶ。
あるときは高度を変える。

後ろ席では、医師看護師が診療を続ける。
前の席では、空のプロの機長と整備士が、安全を第一に飛行を続ける。

12時15分青森県病に着陸。
ここには、津軽海峡の雲はもうない。

日本のドクターヘリの中で、100kmを越えて普通に飛ぶ地域は少ない。
50km圏内が最高の威力を発揮するドクターヘリ。
しかし、僻地支援では、100kmを平気で飛ぶ。

20年前、私がいた本州最北端大間病院は、八戸、青森まで陸路で3時間。
いまは、空さえ使えれば八戸、青森と30分でつながる。
20年前に、大間に来ていただいた、日本航空医療学会理事の小濱、滝口、浅井教授の3名も、目を細めて喜んでいるだろう。
「今くん、これからはヘリコプターだよ」20年前に3人の賢者から言われた言葉を忘れない。

わたしは、いま、あの当時の3人の賢者と同じ年齢になった。
だからここで、私は言う。
「日本の皆さん、ようやくヘリコプターの時代になりましたよ」
(完)




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