夕暮れ間際の出動

2011年09月29日 23:16

今日の日没は17時58分。
青森県ドクターヘリのスタンバイ時間は17時まで。
午前中に大間へ出動した青森県ドクターヘリは、夕方のミーティンッグを終えて、
格納庫にしまわれた。
17時11分ドクターヘリ通信指令室にある消防無線機が鳴る。
十和田消防の無線。
「救急車が出動、墜落事故」
CSは身構えて、無線内容をメモする。
高エネルギー事故なら、救急車出動と同時にドクターヘリ要請されることが多い。
「この時刻ならまだ、出動はできる」CSはつぶやいた。
しかし、ドクターヘリ出動要請は来ない。

クルーは着替え、帰り支度をしているときだった。
17時30分。ホットラインが鳴った。
えっつ、今頃?
「十和田消防です。男性、1名、墜落外傷、ドクターヘリ出動できますか」
CSは、格納庫のシャッターが閉まり、
人気のなくなったヘリポートの映像を壁にかけられた液晶画面で確認した。
機長室に電話した。
機長は、出動先が十和田市なことをCSに確認した。

迷ったのは、スタンバイ時間を過ぎた時間外だからではない。
今日の日没時刻が、17時58分だからだ。
ドクターヘリの日没後運行は禁止されている。
「現場離陸時刻が日没前であること」が条件。
これに違反すると、免許停止だそうだ。
「出動します」機長

着替えて、へりポートへ走る機長と整備士。
同時にドクターヘリ出動のパトライトが鳴る。
へり番の高田医師、新美医師のPHSは通信指令室でむなしく鳴っていた。
CSは、院内PHSで呼び出した。
「出動です」
2名の医師と看護師はOK。
17時38分離陸。
夕焼けは西の八甲田山に美しく見えた。
無線を入れた。
「青森ドクターヘリ1より十消救急1どうぞ、患者情報を教えて下さい」整備士
「意識消失あり、背部痛あり。バイタルサインは正常」
「日没まで、あと15分、申し送りと受け渡しは手短におこないます」高田医師

機内通話で機長が宣言した。
「日没まで10分です。場合によっては、ドクターナース現場投入のみ、
患者を乗せないで、ヘリだけ離陸して八戸に帰ります。」
「了解」高田医師
17時48分着陸

患者接触する。
クイックサーベイだ。
もし、難しい緊急処置が必要なら、患者をヘリに乗せることは断念する。
新美医師が輸液路を取った。
高田医師は、クイックサーベイに続き超音波検査をする。
「ヘリ収容、搬送先は八戸救命!」高田医師が宣言した。
「車をヘリに近づけてください」

小さなEC135の夕日の影は長くアスファルトに写った。
アスファルトの長い影を見ながら、
17時57分離陸
八甲田山に沈む太陽はあと残り数センチ。
十和田市に背を向けて高度400mに達した頃、日没を迎えた。
「青森ドクターヘリ1から八戸市民病院どうぞ、離陸時間は17時57分」整備士
「了解」ほっとしたCS
18時7分八戸市立市民病院ヘリポート着陸。
夜間照明に照らされたEC135が通信司令室の壁の液晶に輝いて見えた。

患者がヘリコプター~降ろされ、ヘリポートドアの向こうに消えていったあと、
右前席ドアをあけて、機長は無人のヘリポートに降り立った。

7階まである病棟の窓からは多くの患者や市民がその姿を見つめていた。

ここ八戸の市民は、ドクターヘリが医師看護師だけでなく、
機長と整備士の高い技術で成り立っていること知っている。

ありがとう、機長!




コメント

  1. お疲れさま。

    高田先生はじめスタッフの皆様お疲れさまでした。わたしは八戸市民病院の救命の皆様大好きです。あったかい先生方を誇りにおもってますこれからもがっばってください。いつまでも応援してます。

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