雨上がりの現場出動 ~その3 最終回

2011年09月19日 21:45

(患者情報が要領を得ないなか、ドクターヘリは五戸に向かう)

フライトスタッフ3名が、患者の自宅前で救急車に乗り込んだ。
額から出血あり、車内が酒臭い。
しかし、第一印象は問題ない。
頭部から鮮血が流れていたらしく、押さえた三角布が赤く滲んでいた。

明石医師は隊長に、救急車出発を進言した。
それから外傷の診療に入った。
ABCDE すべて問題ない。

意識を失ったのは脳震盪だろうか。
スズメバチのアナフィラキシーだろうか。
それともアルコールか。

末梢ルートを確保して、輸液を開始した。
血糖は226、意識障害の原因から低血糖は消えた。

まもなくランデブーポイントに到着した。
隊長が状況を説明してくれた。
「患者は山でスズメバチに2カ所刺されたと言う。
 急いで帰宅したが、玄関前で意識消失して家族に発見された。
 倒れた時に頭部を強く打ったらしい。
 嗄声(かすれ声)なし、呼吸苦なし、皮膚の痒みあり」

17時19分、離陸した。
収容先はもちろん八戸市立市民病院救命救急センター。
このように病態が不明な時は、現場を長引かせず自院で解決する。
現場からERまで継続して患者を診療すれば、答えは出やすい。

17時26分、八戸ERへ到着した。
改めて診察すると、蕁麻疹が増えている。
アナフィラキシーショックに対してアドレナリン0.3mg を筋肉注射した。
15分ごとに、合計3回。

「刺されたのはオオスズメバチですか?」
とっくり型の巣を作るオオスズメバチの毒性が、いちばん強い。
木の孔に巣を作るキイロスズメバチや、土の中に巣を作るクロスズメバチとは違う。

「そうです」と患者は頷いた。
山小屋には、とっくり型をしたオオスズメバチの巣があるという。
「オオスズメバチに肘を2カ所刺された。
 酒を飲んでいたが何とか自宅玄関前までたどりついた。
 しかし、その後の記憶がない。転んだようだ」

外傷は軽症。
アナフィラキシーショックは確かにある。
が、それだけではなかった。
超音波検査で腹腔内に出血か腹水があった。
腹部に痛みはない。
アルコール性肝硬変とすれば、肝機能障害による腹水だろう。
厳重な経過観察が必要だ。
救命救急センターに入院した。


テレビのニュースでは、東京の大雨が報道されていた。
北国から西へ動いた前線のせいだ。
関東には悪いが、この晴天がしばらく続いてほしい。


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