帰ってきたJA112D その4

2011年08月14日 21:55

三沢で、軽自動車と10tトラックの交通事故が発生した。
13時28分、119番通報。
13時34分、三沢救急3が現場到着して、隊長が現場判断でドクターヘリを要請した。

13時40分、離陸。
離陸後直ぐに三沢消防から無線が入った。
「女性は心肺停止状態。CPR中。ランデブーポイントは三沢第三中学校グラウンド」
「救急隊は現場活動中ですか」
「その通り」
「それでは一旦、現場により近い着陸場所の有無を空から捜します」
「ランデブーポイントには三沢1のポンプ車を回す」
「着陸まで3分」

「三沢1より青森ドクターヘリ1、着陸場所の安全確認できた。風向、東より6ノット」

13時51分、第三中学校グラウンドに着陸した。
真っ赤な巨大なポンプ車のドアを開け、足をかけるステップを2段踏んで登る。
3名が乗り込むや、うーうーサイレンを鳴り響かせ、赤い消防車が出発した。

1分後、小さな小路より救急車が顔を出した。
赤車はその直前、センターラインのど真ん中に停車した。
赤車を降り、左右を確かめてから、救急車内へ飛び込んだ。

救急車のハッチを開けて車内に入ると、
レスキュー隊と救急隊が協力して CPR を行っていた。
第一印象は、重症頭部外傷による CPA。
つまりそれは、救命不能。
でも、頭部外傷と決まったわけではない。諦めない。

野田頭医師が、救急車内で気管挿管。
私が、超音波で胸と腹の出血を探す。

「チューブ声門通過」野田頭医師
チューブの位置確認。胸の挙上よし、呼吸音の聴診よし。
救急車内で聴診器を使って音を拾うのは、騒音がひどくて難しい。

野田頭医師はレスキュー隊に CPR再開を指示した。
「隊長、車走らせてください」私
車はやっと、サイレンを鳴らして走り出した。

揺れる車内で、私は次に静脈路確保を始めた。
野田頭医師は、挿管チューブの固定と頸椎カラー固定だ。

腕に針を2回刺したが失敗。そして3回目も失敗した。
「西川さん、16G 針とシリンジを用意して、股の血管を刺すから」
ソケイ部の大腿静脈に、16Gの太い針を刺す。
やっと待望の黒い血液逆流を確認した。よし。

最初から股を狙えば良かった?
いや、重症外傷がある患者の足や大腿に点滴は刺さない。
下半身に輸液しても、腹部や骨盤に血管損傷があると輸液がそこで漏れてしまうから。

患者は PEA、さっそくアドレナリを投与する。
胸部圧迫は私が担当した。

胸骨圧迫(心臓マッサージ)を2分続けると、圧迫する力が急激に衰えるという。
だから最新のガイドラインは、2分ごとの交替を推奨している。
レスキュー隊の胸骨圧迫中、触診で胸郭変形はあるが不安定ではないと判断した。
ところが自分で胸骨圧迫を始めると、両側胸郭はグラグラだった。

これは、重症胸部外傷の所見だ。
心臓損傷を疑う。
だが、超音波で胸腔内には血液が見えたが心臓損傷を疑う心嚢液はなかった。
すると、心嚢破裂か?

「それじゃ、開胸手術するよ!」私は宣言した。

(続く)


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