青森県ドクターヘリ 50日間の出動実績調査

2011年07月27日 21:53

今回は、学会に提出する演題風にまとめてみました。

【背景】
八戸からドクターヘリが消えて、もうすぐ2ヶ月になる。


【主題】
70km離れた青森市から八戸市を中心とする県南へ、ドクターヘリはどれほど飛んだか?


【方法】
対象期間は2011年6月1日から同年7月20日までの50日間。
青森県庁から送付された青森県立中央病院ドクターヘリの運行実績を主な資料とした。


【結果】
総要請95件。うち84件に出動。不対応11件の内訳は天候・時間外6件、重複要請5件。
95件のちょうど半分にあたる47件が、八戸に近い県南地域からの要請。
重複要請5件のうち4件は、県南と他地域の重複だった。津軽~下北での重複が1件。
主な患者収容先は青森市内30、八戸市内22、弘前市内13、などであった。


比較のため、前年にあたる2010年の同期間について同項目の集計を提示する。
総要請57件。うち46件に出動。不対応7件の内訳は天候・時間外5件、重複要請2件。
57件の4分の3以上にあたる44件が、八戸に近い県南地域からの要請。
重複要請2件とも、県南地域内での重複だった。
主な患者収容先は青森市内6、八戸市内39、弘前市内7、などであった。



【考察】
県南地域の要請件数は大きく変わっていない。せいぜい微減にとどまっている。
つまり要請件数の増分は、単純に西側の要請件数が増えた結果といえるだろう。

しかし八甲田山の西側と東側を比べると、人口は大きく西側に多い。
また基地病院からの距離を考えても、西側に利がある。

それにもかかわらず東西の要請件数が同程度にすぎないということは、
西側の消防が要請に対して十分に応えていない可能性を意味する。
一方の東側消防は前年比で微減に踏みとどまっており、悪条件下での健闘を伺わせる。

なお、6月1日の移籍第1号は十和田市からの現場出動要請だった。収容先は八戸 ER。
第2号は青森市のまちだクリニックからの要請。
まちだクリニックの院長は、ドクターヘリ2機体制を強く主張している。
私は彼から、激励の手紙を頂いたことがある。
そして調査最終日7月20日には、八戸市立市民病院から県病への転院搬送があった。


【課題】
ドクターヘリ事業の目的は、以下に集約される。
 (1)傷病者発生から医師・看護師との接触までに要する時間を短縮すること
 (2)救急患者に早期から適切な治療を施し生命・機能予後を向上させること
 (3)へき地に勤務する医療関係者の負担を軽減して地域医療に貢献すること


有効性の検証は、したがって上記3項目について行われるのが必然となる。

ドクターヘリ事業費は消耗品を除き固定なので、要請件数は多い方が望ましい。
本研究は、この視点から要請件数に着目して分析を行ったにすぎない。

今後の課題は、上記3項目に関する直接的な検証を行うことにある。

まずは、119番通報からドクターヘリ要請までに要した時間である。
特に基地から遠くなる地域は、離陸から現場到着まで余分に10分以上かかるので、
10分早く要請しなければ、ドクターヘリの効果が失われる可能性がある。

そして次には、要請から離陸までの時間も検証が求められるだろう。
これは主に基地病院の体制整備が問われることになる。

ところがドクターヘリ運航のデータベースは、八戸市立市民病院と青森県病で違う。
先に運航を開始した八戸は、必要に迫られ自費を投じてデータベースを開発した。
基地病院の移動にあたりデータベースの無償提供を申し出たが、独自開発したという。

そのため、過去の実績を同一基準で比較することはできないし、
お互いの運行実績を閲覧することもできない(八戸版はデータ込みで提供済み)。

さらに機内で記載するカルテ用紙も、青森県病は八戸市民病院と違うものを採用した。
県病版には、着陸地名の記載欄や、外傷の重症度計算に必要な呼吸数の記入欄がない。

しかし。
「とりあえず、別なカルテで始めました。」であっても、いつかきっと、
『やっぱり同じカルテにしましょう。データベースも。』となる日は来る筈だ。
青森県庁も、それが望ましいと明言している。


【結語】
基地病院が青森市に移って約2ヶ月の実績を検討した。
出動要請は95件と前年比1.5倍に増えたが、県南地域の要請件数は減っていない。
人口比や地理的条件を考慮すれば、むしろ八甲田山麓西側の要請不足が示唆される。
今後は要請件数のみならず、出動体制や結果を含めた検証が望まれる。



【付録】
政治が早く決断・行動しないと、今度は西側から不満が出るかも知れません。
ドクターヘリは、八甲田山を挟んで2機必要です。できれば来月からでも。
1機にかける県費は、1年間で2,100万円です。
東奥日報がトップ記事で1億円と掲載しましたが、誤りです。

先日、県議会議員団が視察に来ました。
視察の目的は、40名近い研修医が在籍する研修医人気の秘密を知りたい、とのことでした。
その席上でのひとコマ。
県議「ドクターヘリは、年間1億円の県費をかけて飛ばしている。・・・・」
病院「違います、県費は年間2,100万円です。」

県議はしっかり勉強するとおっしゃいました。
勉強してくれる県議に、感謝。


コメント

  1. bufa | URL | mQop/nM.

    ん~,,,

    「出動件数」のみのデータから八戸地域にもヘリが必要だ,という考察と結論を導くことは難しいですよね.
    出動件数のみのデータでは,要請数は八戸地域は微減,津軽地域は大幅増なんだもの.

    出動件数のみならず,事業の目的(1)~(3)を検証できるデータを取得することとマスコミを通じて公表する事を県に働きかける,ことが県議会議員への働きかけのポイントのもう一つではないでしょうか.

    Helliの運行費用を負担し(税金という形で),そしてその恩恵を得る個々の県民市民が自分の問題として考察することが必要だと考えるから.

  2. | |

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