スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

サンダーバード作戦 4ヶ月児を救え 後半

2011年07月24日 19:41

(心肺停止した乳児を救うため、夕暮れのなか疾走するドクターカー・・・)

・・・・・・・・・
17時16分、 EC135はドクターカーに10分遅れて八戸市立市民病院を離れた。
飛行時間わずか3分で、ランデブーポイントの小学校グラウンド上空を旋回し始める。

校庭に進入する赤車や、白い救急車が近づくのがみえる。
運悪く、ここのグラウンドは砂地、着陸に先立って水を撒く必要がある。

「青森ドクターヘリ1より八消○○、散水終了後、すぐに着陸する」

しかし、無線は通じなかった。
消防隊が全員、車外活動のため無線に応じられないのだ。
そしてドクターカーが校庭に到着し、救急車に乗り込むのを上空から見守った。
・・・・・・・・・

救急車内では、救急隊が必死の蘇生活動を行っていた。
いつも目にする大人の心肺蘇生の光景と同じだけに、患者の身体の小ささが目に付く。
しかし臆することなく冷静に、心を熱く保ち、患児に近づいた。

「八戸市民病院の救命チーム、到着しました!」
取り乱した様子の母親が救急隊に話す内容を横耳で聞きつつ、私は患児の頭側へ、安部・丸橋医師は足側へついた。

やはり顔色は悪く、自発呼吸がない…
CPA だ、間違いない。

私は酸素をバックバルブマスクに繋ぎ、補助呼吸を開始する。
胸骨圧迫を救命士に継続してもらいながら、足側の二人が慎重に、骨髄針留置を始める。
大人の小指ほどの下腿骨に、骨髄針を錐のように進めてゆく。

1997年、骨髄内輸液を初めて我が国に紹介したのが、所長が主催するPTLS講習会。
ショックや心肺停止など静脈に針を留置できないとき、骨の中心にある骨髄に針を刺す。
骨髄には点滴、薬剤、輸血などを血管内と同じ感覚で大量に入れられる。

「骨髄針、入りました!!」
「血糖値150、低血糖なし」
「アドレナリン投与します!」
安部医師、丸橋医師が交互に叫ぶ。

「OK!換気も良好、挿管トライするよ」と私も大きな声になる。
喉頭展開して口腔内を覗くと、多量のミルクで奥が見えない。

「吸引!」
すぐ吸引管を口腔内に突っ込んだが、視野は悪いまま。


17時23分、ドクターヘリチームがやっと現場着陸を果たした。
EC135から救急車内へ、高田医師、赤坂医師、西川看護師が飛び込んできた。

「どういう状態!?」
「CPAのまま、骨髄ルート確保した」
「呼吸は?」
「今から挿管する!」

吸引を続け、やっと口腔内がよく見えるようになった。
3.5mmチューブの挿管に成功。固定は口角10.5cm。
胸郭挙上よし。胃のゴボゴボ音なし。左右呼吸音よし。やはり胃の水泡音なし。
そして換気も良し。

「モニターの波形チェックしよう!胸骨圧迫を一旦止めて。」
一同が波形を凝視する…

「心拍再開!!」

「脈は触れる?」
「触れる!」 上腕動脈に、しっかり拍動を感じる。

丸橋医師は即座に心臓超音波を当てた。
「心臓は良く動いてる!」
「よし搬送しよう!ヘリに運ぶよ。」

挿管チューブ、骨髄輸液路、と治療に不可欠な管が入った乳児を、
これまた一児の父親である安部医師が優しく抱きかかえる。
「この状態でストレッチャーに乗せて、早く飛んで下さい。」

17時38分、無事に患児を収容したドクターヘリが離陸。
メインローターが回り出すと、すさまじい砂煙が上がった。
みんな風に背中を向ける。


ドクターヘリが無事に飛び立ったのを確認し、3人は顔を見合わせた。
30分ほど前に集結した我々3人が、一緒に10年以上働いているような不思議な感覚。
最大のミッションを最高のメンバーで乗り越えた安堵感・達成感が滲み出ていた。

救急車内に戻ると、治療に使った物品が大量に散乱していた。
今回のミッションの困難さ重大さを物語っているようだった。
「お疲れ様でした、そして、ありがとうございました」と救急隊に声をかけた。

夕闇迫る17時42分、救急車内を整理してドクターカー2号エスクードに乗り込んだ。
わずか20分の現場活動時間に、永遠の時間が流れたように思えた。

帰りは緊急車両扱いではないので、一般車と同じ通常走行で走る。
車内はミッションの反省会になったが、どの行動も有益だったという結論に納得した。
ざっくばらんに意見を出し合い、互いの知識を取り入れる雰囲気。
各々の能力を最大限に発揮できる適切な役割分担。
そして担当分野を確実に実施できる実力と経験。

今回は私がリーダーを務めたが、安部医師も丸橋医師も頼りになる存在だった。
安部医師は温厚な人格に、様々な分野の知識を秘めている。
丸橋医師は冷静さと熱いハートを備え、技術・知識も申し分ない。

今回は、3人が今まで積んできた鍛錬すべてが発揮された現場だった。

辺りがすっかり暗くなった中に佇む市民病院が見えてきた。
エスクードを降りて八戸ERの自動ドアをくぐると、
「木川先生。循環よし、対光反射よし。可能性ある、いけるよ!」
所長の声が嬉しかった。


コメント

  1. ドクターヘリ大好き | URL | GGXbVRB.

    CPAから心拍再開

    初めて乳児のCPAで自発呼吸もなく凄く危ない状況でしたがミルクを吸引、アドレナリンなどの懸命の処置により心拍再開して奇跡に近い本当に心拍再開して良かった。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://doctorheli.blog97.fc2.com/tb.php/733-2d68d5ac
この記事へのトラックバック



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。