スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

6月のトラクター事故 前編

2011年07月07日 23:20

その日は、北里大学救急医学教室の今野医師が見学に来ていた。
研修医人気の八戸だが、救急医もこうやって見学に来てくれるようになった。
今野医師は八戸高校出身、私より八戸市のことをずっと良く知っている。
いまは首都圏で救急医学を修行している。

20時04分、国道の上から119番通報。
普通自動車と衝突したトラクターが横転し、運転していた男性が下敷きとなった。
救急車とラピッドドクターカーが同時出動。

20時17分、救急隊が現場到着。
トラクターは前後真っ二つに割れていた。
前半分が道路脇の下に、後ろ半分が道路上に置き去りになっていた。

男性は、上半身が前半分になったトラクターの下敷きで呼吸停止状態。
しかし、上のトラクターが邪魔で CPR できない。

20時38分、要請されてたクレーン車によりトラクターが外された。
それから、心肺蘇生が開始された。

20時43分、車内収容した頃にドクターカーが到着した。
ドクターカー当番は赤坂明日香医師。
そして見学中だった今野医師も乗り込んでいた。

CPR されていた男性はまだ暖かかった。
心電図波形は PEA、心電図に波は現れているが、頚動脈は触れない。

PEA の原因が出血と呼吸なら、心電図は単に脈が速いだけに見える。
心臓が原因なら、幅が広くなったり形が変わったりすることが多い。
蘇生のチャンスが高いのは前者だ。

「この PEA ならチャンスはある」
赤坂医師は、 QRS 幅が狭い心電図を見ながら ABCD を観察した。

換気は不良だった。
さっそく気管挿管にとりかかり、一発で成功させる。
20時51分、輸液路を確保してアドレナリンを注射する。

胸を診察すると、胸郭はぐらぐら。
両側の胸腔にドレナージ用のチェストチューブを留置した。

命に直結する重症胸部外傷には心タンポナーデ、気道閉塞、緊張性気胸、大量血胸、フレイルチェスト、開放性気胸がある。
そのうち緊張性気胸、大量血胸、フレイルチェスト、開放性気胸に胸腔チューブが有効だ。
現場で迷う時間は惜しい。
わずかな診察で両側の胸にメスを入れ、チェストチューブを入れてしまうのだ。
これを、クラッシュプロトコール [crush protcol]という。

CPR を継続する。
最初のアドレナリン投与から3分、2アンプル目を入れる。
胸骨圧迫は、2分ごとに交替する。

FAST(超音波検査)では腹腔内出血なし、心臓損傷なし、骨盤骨折もなさそうだ。
自己心拍がすぐ戻らなければ、左胸を切って開胸心マッサージを行うこともあるが、
この患者に開胸心マッサージは必要ない。

20時47分、現場出発。
挟まれてから救出まで30分費やしている。

(続く)


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://doctorheli.blog97.fc2.com/tb.php/723-1ad18b1d
    この記事へのトラックバック



    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。