最上医師単独搭乗 その1

2011年06月04日 22:12

この冬の話です。

朝8時20分、ドクターヘリスタッフミーティングで機長から。
「今日の八戸地方の最高気温は10度の予報です。
 十和田湖上に低い雲があります。
 十和田湖のダイレクト通過は無理ですが、迂回で津軽方面へいけます。
 下北半島、八甲田山越えは今日は可能です。概ね全県出動可能です。
 しかし、昨日の三戸町出動でもそうでしたが、深雪で転倒しないように。
 着陸時の見張りの協力をお願いします。
 離陸前、エンジンスタートしたとき機体が滑って回転することもあります。
 シートベルトを締めて備えてください。」
そのあと無線チェックをし、器材を確認する。

救命救急センターの朝のカンファランスは、8時35分から始まった。
私は月曜夜の当直で病院へ泊まり、火曜夜は救急車同乗実習で八戸消防に出向いた。
帰宅したのは水曜の午前1時。
実に42時間働いていたことになる。
水曜朝は、死亡症例カンファランスが朝7時半から始まる。
だから水曜の午前中は、タフな私の肉体もいつも少しだけ悲鳴を上げる。
水曜の死亡症例カンファランスのあとで救命救急センターを一回りし、
8時20分からドクターヘリスタッフミーティングに参加。
今日は私がヘリ番。
そして、救命カンファランスが8時35分から始まる。
 「救急車同乗実習で運んできた昨夜の女性は、痛みが治まったので帰しました」と昨夜の当直医の高田医師の声
そのあと、重症患者のプレゼンと続いた。
昨日三戸町から、ドクターヘリで運ばれてきた患者のプレゼンを
佐藤研修医と町田医師が行った。
「はしごから転落外傷です。胸椎12番が骨折しています。肺挫傷があります」
「転落の原因は」私
「不注意で、手を離したそうです」
「Th12骨折は、前柱だけですね。
それなら安定型骨折だ。加重を避ければいい。
脊髄損傷の心配はない。ところで横突起骨折はないの?」私
要請はその瞬間だった。
まず、CSから院内PHSで連絡が入った。
「下北半島むつ病院から転院搬送。青森市民病院まで。
まもなく入ります」CS
救命カンファランス室のとなりは、ドクターヘリ機長室だ。
すでに、機長と整備士はヘリポートへ走っていった。
「付き添いは乗りますか」私はPHSに向かって問いかけた。
「1名乗ります」CS
「分かりました。それでは最上医師が1名で乗ります」
今日のヘリ番は、私と最上医師の二人。

最上医師は、秋田県出身。
秋田県内の救命救急センターのある大病院で外科医を10年終えてきた。
昨年より、八戸救命の一員となっている。
月に1から2回、私とドクターヘリに一緒に乗る当番が回ってくる。
新人救急医師は、ドクターヘリに乗る場合、私と1年間一緒に乗るのがルール。
それから、2年目でフライトドクタースタッフと組んで乗ることを許可している。
その回数と成績を見て、一人立ちを許可する。
最上医師は、外科医は10年目、しかしまだ救急は1年目。
ドクターヘリには私とペアが原則。

今日の出動は、転院搬送だ。
転院搬送は、現場で難しい判断を求められることは少ない。
数回搭乗して、機内の器材や仕組み、ルールを知ればそんなに怖いものではない。
あとは、医師としての経験さえあればこなせる。
八戸市立市民病院救命救急センターの搭乗医師は、
最上医師のような制限付き搭乗医師も含めて、17名。
ドクターヘリに制限付きで乗る医師は、
救急車同乗実習やラピッドドクターカーで、現場出動医療を多数経験してもらっている。現場経験がほとんどない研修医はドクターヘリには乗せない。
ただしドクターカーには、研修医も乗せる。

転院搬送と分かった時点で、私は最上医師単独搭乗を許可した。
むつ病院から入ってくる患者情報を聴いて、事前に作戦を練ればいい。
(続く)


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