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いそがしい日 最終

2011年05月06日 18:11

「ドクターカーです。行ってきます」
丸橋医師はまわりに告げて手術ガウンを脱いだ。
吉岡隆文医師も続く

「あとは任せて」私。
赤い災害服の二人はERから消え、赤いLEDフラッシュのラブフォーに乗り込んだ。
・・・・・
13時27分ドクターヘリ十和田市運動公園着陸
竹内隊長の救急車はグランドの外に停車していた。
原医師、高田医師、看護師が走った。
ニトロールが効かない患者へ。
これだけ条件がそろえば、急性冠症候群だ。
ただし、背部痛もある。
救急車内で心電図12誘導を取る。
「おかしい、STが上がっていない」原医師
「大動脈痛ですかね。血圧左右差はないですけど」高田医師
「エコーでは心嚢液少し」原医師
大動脈解離では、心嚢液がたまりやすい。
十和田市から八戸まで空路で10分。青森市まで13分。
ひょっとして大動脈疾患なら、青森市の方が上手。
「青森市に運ぼう」原医師
家族も了承してくれた。
機長をそばに呼んで相談した。
この天候で八甲田山は山越えが厳しい。
飛行ルートを北に取れば十分飛行可能。
ただし時間がかかる。
青森市の○○病院へ携帯電話する。
「受け入れOK」
13時45分離陸

・・・・・
私はERから出た廊下で、三浦順子さんと会った。
救命救急センターで、重症患者が脳死状態になっている。
彼女は、臓器提供のコーディネーター。
家族の希望の元に、臓器提供のことで朝に彼女に連絡したばかり。
「血液検査データーがよくないので、おそらく臓器提供は難しいですね」残念そうな彼女
そばには、やはり残念そうな顔つきの野田頭医師がいた。
野田頭医師は、八戸市立市民病院救命救急センターの臓器提供の係り。
・・・・・
13時58分県病ヘリポート着。
高齢の夫も同乗している。
患者は青森市の○○病院の中へ運ばれていった。
・・・・
15時前
原医師が帰ってきた。
開口一番、
青森市の○○病院に現場から電話したとき受けてもらって助かりました。ただし、着陸して一番先に言われた言葉は覚悟はしていたけれどショックでした。
ああいう言い方をされると、次に青森市の○○病院に連れて行くのを躊躇してしまいます。
「胸痛の患者、八戸では無理なの、ダメなら労災病院は?」
こう答えました
「大動脈解離も考えています。解離ならこちらの方がいい。
解離でないとしても、今の時間、八戸では心臓カテーテル室が埋まっています。
おねがいします」
こうも聞かれました。
「紹介状は?」と
「現場から来ました」と答えました。
「でも、そのあとは、普通に患者を受けてくれました。
ほっとしました。
まだヘリになれていないのですね。」
私はコメントに詰まった。
必死に言葉を捜した
「きっと、○○病院救急室も、大混雑だったのだろう。
忙しかったのさ」私
「娘さんが青森市にいることも付け加えればよかったですかね」
東京生まれだけれど奄美大島暮らしが長い原医師はボソッとつぶやいた。
原医師は少し前までいた大混雑の八戸ERと
PCPSが回っている状況を思い浮かべて判断したのだと思う。
さらに、大動脈の疾患なら間違いなく八戸より青森市の方がいい治療ができる。
青森県ドクターへリの現場出動の患者の90%を八戸で受けている。
残りを青森市と弘前大学にお願いしている。
だからそれほど多いわけではないのだが。
・・・・
夕方、私のPHSがなった。原医師からだった。
「さっきの、ドクターヘリの患者、大動脈解離だったそうです。電話して確認しました。」
「そうか、大動脈疾患なら、迷わず青森市か弘前だ。いい病院選定だったね」私
原医師は2時間前の元気のない声ではなかった。

PCPSで助かった男性も血圧が戻っている。
心臓カテーテル治療が終わり、救命救急センターに入院した。

忙しいとは、「心が亡びる」と書く。
「忙しい」になってはいけない。

まもなく、県病でドクターヘリが始まる。
通常のドクターヘリは、数か月の練習期間を経てスタートする。
しかし、青森県病は、八戸を終えた翌日にいきなり青森でスタート。
さらに、救命救急センターがスタートして一カ月でドクターヘリも開始。
これまでは、救急外来しかなかった県病に、
ドクターヘリと救命救急センターの二つが一気にできる。
救急の充実と言えば美しいが、
現場のスタッフは大変。
少しづつ実績を積み重ねて欲しい。
八戸の経験が生かされるようにしたい。
(いそがしい日 完)

・・・・

注)ゴールデンウィークのドクターヘリ活動は、
時期をずらして今後掲載します。
患者個人を特定されないように配慮しています。



今日は三戸町の学校校庭の桜です。
昨年の写真です。
青森県では、桜がまだ見れます。
おいでください。
三戸桜



コメント

  1. hanako | URL | -

    いつもフル回転な状況の中、患者様のことを第一に考え、一緒に働くスタッフの指導も懇切丁寧に行い、現場の消防隊員には敬意をと。私は医療従事者ではありませんが、ドクターコンのようなボスの下で働いてみたいと思いました。忙しくても、心のある人間でありたいと思います。一般市民でも参加できる先生の講演があれば、ぜひ参加してみたいです。また番外編で八戸ERのスタッフが、なぜ今の道を選ばれたのが、その話もこちらのblogで聞けたらと思います。それでは今日も盛り上がって下さい。

  2. 松並木 | URL | inBpjcZ.

    いつも興味深く拝見しております。

    今回の事例では辛い思いを経験され、その思いが伝わってきました。でも、ベストな選択をされて患者さんの命が救えてよかったです!

    受け入れた病院はきっと認識不足だったのでしょう。しかし、その状況を認識してもらうためのコミュニケーションが必要なのかな?と読んでいて感じました。

    青森県の大きな病院が全て同じ認識であればこの思いはしなくて済むのでしょうが…。そのためにはドクターヘリの活動をまとめて広報するのもいいかも知れませんね!

    県立病院での運航開始も大変でしょうね。

    全国各地でドクターヘリが運航されており、どこも軌道に乗るまでは試行錯誤を重ねていたのではないでしょうか。みんなができていることなのですから、県立病院にも出来ないことはないと信じながら、見守っていきたいと思います。

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