空から陸から同時入室心肺停止 最終

2011年04月30日 18:11

「PCPS用意」私は号令した。
安部医師は水色の手術用ガウンを着た。看護師が安部医師の背中で紐を結ぶ。
フライトドクターの軽米医師は、両側のソケイ部を茶色のイソジンで消毒する。
少々のヘアーは気にしない。
河野医師はPCPSのチューブを大きな箱から出して広げた。
2分後を知らせる電子音が響く。
河野医師が宣言した。
「PEAです」
男性に青い2mサイズの紙製の被布がかけられた。
少し前に滅菌手袋をはめた白崎医師が、胸骨圧迫を、清潔な被布の上から始めた。
一回一回の胸骨圧迫で男性の体は揺れる。
安部医師は、太い静脈留置針でソケイ部の動脈を狙う。
成功した。
次はその内側の太い静脈だ。
軽米医師が水色のガウン姿で参入する。
小指ほどの太さ、長さ1mのチューブを静脈の中に進める。チューブの先は横隔膜の少し上。
小指ほどの太さ、長さ30cmのチューブを動脈の中に進める。チューブの先はへその高さの大動脈。
畠山臨床工学士(ME)が、「プライミング終わりました」と告げた。

PCPSは、人工肺と人工心臓の小型器械。
男性の静脈血をPCPSに通し、酸素を十分にして動脈に送る。
男性の心臓が動いていなくても、脳や心臓冠動脈、腎臓に血が通う。
「PCPS確立。血流スピード十分です、回転数3000回転/分。」畠山ME
「白崎先生、胸骨圧迫終了して」安部医師
心電図モニター音がメトロノームに代わって響く
心電図モニターには幅の狭いほぼ正常な波形が流れる。
心電図十二誘導検査を行う。
「やっぱりAMIだ」河野医師
「CTに行ってから、心臓カテーテル治療だ。」私
「白崎先生、体温を下げるから、氷水を胃管に注入して」安部医師
「こちらでも、体温調節します」畠山ME
Chain of survivalの5つ目の輪が始まった。
低体温治療と、心臓カテーテル治療。
・ ・・・
となりのベッドには、南郷区へドクターカー出動した患者が寝ていた。人工呼吸を受けていた。
意識は戻らない。
でも、心臓は元気よく動いていた。

「二名とも心拍再開だね。でもこの後が難しい。社旗復帰と心拍再開は別次元だよ」
私は白崎研修医に教えた。


(空から陸から同時入室心肺停止 完)


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