優先順位 その2

2011年04月25日 18:11

八戸の山Pは、ERのとなりで、救急バッグの整理を急いで終えた。
そして自分が現場で診た女性に今度はERベッドでプライマリサーベイを始めた。
ABCDEはやはり異常なし。
八戸の山Pほっとした。
「変化なし、よかった」
セカンダリサーベイの最初に病歴を尋ねた。
アレルギーはない。最終食事は朝。
既往歴は、透析治療を受けている。
「えっつ、透析。」透析治療は、外傷患者の予後に悪影響を及ぼす。
透析時にヘパリンを使っているので、出血が止まらないからだ。
それに尿が出ないので、点滴の量の調節が難しい。
腎性貧血があることが多い。
栄養状態が悪い患者が多い。
など。
「これは、しっかり診療しないと失敗する」八戸の山Pの独り言
セカンダリサーベイでは、頭からつま先まで、背中も診る、穴をみる。
胸骨を押すと痛がった。
でも胸部レントゲンは大丈夫。
頚部の後ろを触ると患者はものすごく痛がった。
「!!!」
救急隊長が言ったとおり。
患者を真横にして、ログロールする。
背中を診ると背骨にも痛がるところがあった。
頸椎レントゲンでは、第2頸椎がおかしい。
背中まで診たあとに、CT室へ移動した。
ちょうど、先に来た男性がCT室から帰ってきた頃。

女性には頸椎から腰椎までのCTを撮影した。
「えっつ、第2頸椎が折れている。
そして、第1腰椎も折れている。
一箇所頸椎骨折を見つけたら、10%にもう一個骨折があるといわれている。
まさにそれだ。
しかも、第1腰椎は、チャンス骨折といわれる、最重症タイプ。」
八戸の山Pはがっかりした。
続いてMRIを撮影した。
脊髄損傷がないことが確認された。
少しほっとした。
現場で、患者の評価が甘かった。
結果では先の男性より、女性の方が重症だった。

現場でのトリアージに原則がある。
呼吸、循環、意識を順番に診る。
どこかがおかしければ、それのおかしさの度合いを比べる。
優先されるのはA>B>C>Dの順番。
今回は、男性が意識で引っかかった。
女性は重症とは判定されなかった。

八戸の山Pは翌日私に意見を求めた。
「現場でどうすればよかったのでしょうか」
「現場トリアージはむずかしい。primary surveyで意識が引っかかったら、それでload &go.
女性は、primary surveyよし。だから優先順位は、男性が先。
頸部痛は、本来secondary surveyで診る。
重要ではない。
ただし、現場では、JPTECにのっとり、頸部圧痛を見る必要がある。
頸部痛があれば、頸椎損傷を考え、固定と保護を慎重に行う必要が出る。
現場での、外傷優先順位決定は正しかった。」
「救急隊に救われました」山P
「現場で、女性に対して、頚部を触って、頸椎骨折疑いで、こちらも重症です。
しかし、男性の方が、頭部外傷で優先順位は上です。
こう宣言すれば最高だったが。」

救急隊は全身観察で、頸椎の異常を見抜いた。
さらに、車大破から頸椎の保護はいつも通りに行われた。

女性は救急隊の基本どおりの車外救出とバックボード固定搬送のおかげで、
脊髄損傷にはなっていない。

医師現場出動で女性に過小評価したけれど、救急隊に救われた。
二人とも、救命救急センターに入院した。


救急隊とERのわれわれはチーム。

(優先順位  完)


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