東北関東大震災その18 ~ドクターカー1号2号同時出動①~

2011年04月15日 23:50

震災の急性期が過ぎ、復興期に入りつつあります。
今回は、震災の影響で平時の数倍の患者を収容した八戸ERの紹介です。
日付は一カ月戻ります。
        
DMATは撤収
震災7日目、津波被害が大きい岩手県宮古市へDMAT出動していた、河野、原医師が八戸へ15時に戻ってきた。岩手県太平洋側で活動していたDMATは、すべて撤収。代わって日赤病院や、大学病院、医師会チームがはいっているらしい。夕方、八戸市内の居酒屋ラプラザ亭から、40人分の差し入れおにぎりが届いた。これをほおばりながらミーティングした。
震災初日から、岩手県太平洋側に出動していた八戸ドクターカー2号は、ER前の定位置に久しぶりに駐車していた。震災6日目に悪天候で終日運休した青森県ドクターヘリは,快晴の空の下で朝8時から出動要請に答えていた。

心タンポナーデ
「五戸町路上に男性が倒れている。」ヘリ番の光銭,安部医師がERから飛び出していった。7分後に五戸町に着陸。男性は心肺停止だった。超音波で心タンポナーデが見つかり、ACLSと心嚢穿刺を現場で同時に行う。16Gで心嚢を狙ったがうまくいかない。続けて心嚢開窓術(心膜切開術)を行った。青森県ドクターヘリには、開胸手術セットを積んでいる。
光銭医師はみぞおちの剣状突起を中心に8cmの正中切開をメスで入れる。そのまま、剣状突起の白い骨が見えるまでメスを進める。その深さで、尾側に白線を切開する。剣状突起の三角形を露出させる。右示指を剣状突起の背側に潜らせる。さらに胸骨の背側に潜らせる。剣状突起の正中をハサミで割る。右示指を反時計回りに動かし、心膜の硬い壁を確信する。CPRを止める。安部医師に剣状突起を筋鈎で挙上してもらった。鉗子二本で硬い心膜をつかみ、その真ん中をハサミでパチンと切る。切った瞬間に血液が噴き出る。ハサミの先を閉じてその穴に少し進める。そしてハサミの先を広げる。これで切開の穴が大きくなる。CPR再開。すると血餅が固まりで出てきた。22Fドレーンを入れる。ドレーンの先をバッグにつなぐ。血液が流れ出る。心電図波形はPEA。しかし十分な心臓の拍動の回復は無かった。ACLSを継続して、ヘリ搬送した。

 八戸ERに着陸したドクターヘリEC135には、次のmissionが待っていた。震災2日目に、県内搬送で被災地八戸から弘前大学へ搬送した患者を再び八戸に戻すこと。晴天の八戸を離陸して、十和田湖を越えて、弘前大学を往復した。
患者を空輸した後、次の要請は、津波被害の大きい太平洋側の○○町からだった。ドクターヘリで出動したのは、明石医師と安部医師。男性は心肺停止状態だった。心電図波形はPEA。目撃のある心停止でbystander CPRあり。超音波で心嚢液が大量に溜まっているのが見えた。今日2回目の心タンポナーデだ。今回は救命の望みがあるCPAだ。心タンポナーデの解除が最優先された。16G針で心嚢穿刺を行ったが血液は吸引できず。2回で断念した。救急車に収容し明石医師は心嚢開窓術(心膜切開)を開始した。約3分で完結できた。そしてヘリコプター搬送を開始した。
男性は町会議員(新聞報道)。ちょうど町議会中で発言中だったという。津波被害地区を巡回した後だったらしい。彼は議会でドクターヘリは青森県に二機必要。八戸市を中心とした県南にも一機置くべき。そう訴えて、突然倒れた。すぐに議場に保健師が呼ばれた。そしてCPR,AED、119番通報、ドクターヘリが呼ばれた。彼が倒れる直前に叫んでいたことは胸が苦しいではなく、「6月から、ドクターヘリが八戸市を離れて県都青森市に移す予定になっていること。何とか、この地域にドクターヘリを置くことはできないか」


(続く)


コメント

  1. コン | URL | SFo5/nok

    心タンポナーデ

    今回は、心タンポナーデに対して穿刺不成功で、次に心嚢開窓手術を行いました。開胸手術はしませんでしたが、時には、現場やERで開胸します。
    現在今日の治療指針2011の開胸心マッサージについて、原稿を書いています。グーグルで開胸心マッサージを検索すると、このブログが出てくるんですね。ビックリしました。ドラマコードブルーで山Pが現場で開胸した部分の解説です。
    http://doctorheli.blog97.fc2.com/blog-entry-331.html

  2. BBQ | URL | 5KTh30no

    ドクターヘリの機動力があったからこその現場での手術ですね!

    それでも2件目のCPA、“救命の鎖”はうまく繋がったのに、救えない命があるのはスタッフ、遺族ともに悔しいかと思います。そして青森県2機目を八戸で見ることなく亡くなられた方患者さんも本当に残念だったでしょう。

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