東北関東大震災その8 ガソリンがなくなる日

2011年03月22日 22:37

震災当日に盛岡へ向かってドクターカーで出動した八戸 DMAT 隊は、
2日目に大船渡病院で支援活動を行い、3日目の未明に八戸へ帰着した。
震災3日目、青森県ドクターヘリは県内で2回出動後、岩手県へ DMAT として出動。
更にこの夜、ドクターカーで第2陣の DMAT 隊が久慈方面へ出動した。

そして震災4日目の朝。
ラピッドドクターカーのスタンバイ前の午前7時15分。
前日は私が当直する月曜日、急患で盛り上がったまま朝を迎えた。
相変わらず余震が来る。

ドクターヘリ通信司令室のテレビを、同じく当直の光銭医師と見ていた。
すると、ドクターヘリ通信司令室で常に傍受している消防無線から気になる通信が聞こえてきた。
「場所は八戸○○、意識がない男性。救急○○出動、ドクターカー同時要請する」

私は CS 室を出てすぐの ER で、八戸消防への直通ホットラインの受話器を取った。
呼び出し音を聞く間もなく、消防通信指令室が応じる。
「八戸ラピッドドクターカー出動できます。場所は?・・・了解、これより出ます」
昨夜から当直の安部医師は、すでに準備を済ませていた。「お供します」

八戸ラピッドドクターカー1号RAV4は、赤い LED とサイレンで出動した。
病院の正門を出ると、車の列が続いている。
普段はまだ車が少ない朝7時すぎ。車が渋谷公園通りのように、両側に列を作っていた。
ほとんど動かない渋滞。こんなのは八戸で初めて。

病院前の通りは、200mごとにガソリンスタンドが並んでいる。
渋滞の原因は、ガソリン給油待ちの渋滞だった。

国道45号線はさらにひどかった。
片側2車線の道路が3車線になっていた。したがって路肩がない。
ドクターカーはウーウーサイレンと拡声器で、苦労しながら前進した。
八戸中の自家用車の半分が、この国道に集まっているのではと思うほどの渋滞だった。
東北関東大震災ガソリン渋滞



八戸市内の製油所も、津波や地震で被害を受けている。
ここより南の東北は全滅だという。
早く八戸の製油所が復旧してほしい。
早く八戸の港が復旧してほしい。
東北の正常化には、北の玄関口八戸が鍵を握っている。

ドクターカーは現場到着、救急車に乗り移る。
安部医師は気道確保、私は静脈ライン、救急隊は CPR。ACLS を開始して、搬送。

2件目のドクターカー出動も、午前中だった。患者はまたも CPA。
ガソリン完売のスタンドが目立つせいか、渋滞はずいぶん収まっている。

「声門が見えません。気管挿管が難しい」丸橋医師がうめく。
「それじゃ、ガムエラスチックブジーだ」
私は、青い救急バッグの B と書かれたポケットを開けた。B は呼吸の意味。
細長いガムエラスチックブジーを取りだして丸橋医師に渡す。
銀色の喉頭鏡を左手に、茶色のガムエラスチックブジーを右手に持ち、注意深く正中に沿ってブジーを進める。
気管分岐部に当ってブジーが止まれば、うまく気管内に入った証拠だ。

「distal holdup signです。気管チューブ進めます」丸橋医師
うまく7mm気管チューブが入った。予想通り、痰が湧き出てくる。
患者に ACLS を行いながら、八戸ER へ向かった。

八戸 DMAT は岩手へ救援に向かう。
もちろん、八戸も被災地だ。
八戸の医療をおろそかにする筈がない。
岩手も八戸も、両方救う。


コメント

  1. やまっち | URL | -

    八戸ERの皆様DMATとして、岩手の久慈をはじめ、大船渡迄と遠路救援に、来ていただき岩手県民として深く感謝しております。青森県という、境ない救援に涙が出るくらい嬉しいです。八戸自体も震災にみまわれているのに、皆さんの職責を全うしようと意識、気持ちにはやはり、人命を救いたいという使命があるのでしょうね。いつも、ブログを見る度、私も頑張らねばと自省させられ、励まされています。いつも、応援しております。みなで、この危機を乗り切りましょう。先生方もお身体に十分お気を付けください。縦に長い広県域の岩手も、ドクターヘリと、ドクターヘリ導入し、同じくThunderbird作戦が、出来ればいいレベルですね。

  2. t | URL | A1vz8dvw

    「両方救う」この言葉に涙が出ました。
    八戸の復興が岩手宮城の復興に繋がると思えば
    私の一度折れた心もまた動き出します。

  3. 八戸ドクターカー | URL | hChi9nWY

    CPA

    またもやCPAで劇的救命ですね声門が見えなくチューブを入れる事が出来ずでも薬を投与して入れる事ができて良かったですこれこそ八戸救命の定番の劇的救命

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