スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

史上最大のサンダーバード作戦 最終回

2011年03月01日 20:36

(ドクターカーを自ら運転して戻った軽米医師が、ERに入ると・・・)

八戸 ER は暑く、そして熱かった。

暑い理由は、人口密度と加温処置。
温風を吹きつける体表加温装置が、重症患者用のベッド脇に置かれて作動している。
ベッドに横たわっているのは、三沢から陸路搬送されてきた外傷患者だ。
そのベッドを、医師と看護師と臨床工学技士が取り囲んで処置している。
この熱意が熱い理由。

そして、衝立を挟んで隣のベッドには、先ほど出動した男性患者。
今も自己心拍は保たれているが、昇圧薬と人工呼吸器が繋がっている。
これから CT 撮影に向かい、心肺停止の原因を探るところ。
重症ではあるが、ひとまず必要な緊急処置は済んだといえそうだ。
やはり気になるのは、三沢から来た患者か・・・

・・・・・・・・・・・
軽米医師より先に八戸 ER へ到着した彼女は、オレンジ色のバックボードに載って救急隊とフライトスタッフに囲まれながら自動ドアをくぐった。
零下の屋外から来た一団を迎え入れた部屋は、よく暖められていた。

輸液は2リットル入ったが、ショックは遷延し撓骨動脈が触知できない。
予め用意を頼んでいた体表加温装置を装着し、40℃の温風を吹きつける。

何回か再測定を繰り返した自動血圧計は、ようやく75/39mmHg を示した。
脈拍はまだ弱く、93回。

輸血を開始しなければ。
緊急輸血は2種類。
心臓停止が迫っているときは、血液型検査を省略してO型Rhプラスを4単位入れる。
そうでもないが急ぐときは、血液型検査を行って血液型を合わせた血液を入れる。

問題は、血液型検査に要する時間だ。
血液型検査を担当する技師がいる日中は短いが、夜は少し長くかかる。
まだ日勤帯だ、運がいい。血液型はおそらく10分少しで出るだろう。
救急車内で採血した血液型サンプルは、すでに研修医が走って検査室へ持って行った。

血液型 Rhマイナスの女性 Rh プラスを輸血する、妊娠時に流産する危険が高まる。
もし彼女がRhマイナスなら、そのことを説明してから輸血する必要がある。
しかし、八戸ERにRhマイナス血液は常備されていない。

Rhマイナスは、日本人のわずか0.5%。男性なら、迷わずRhプラスを入れて問題ない。
若い女性は少し躊躇するが、命がけならRhプラスを入れる。

国内で、O型Rhプラス緊急輸血178例を調査して副反応はなかった。
これは千葉北総ドクターヘリで有名な益子教授の研究。ドラマ「コードブルー」の田所部長は、彼がモデルだ。
海外でも、O型Rhプラス緊急輸血790例で副反応なしと報告されている。

20分後、血液型検査結果が出た。
研修医は、4単位分の輸血パックを持って ER に現れた。
すでに輸血加温装置は、スタンバイされている。
ER入室後30分で、輸血が始まった。

輸血を待つ間に、検査を行う。
まず胸部と骨盤のレントゲン検査。そして同時に超音波器械で、胸と腹を再チェック。
続けて、骨折部位の数だけレントゲンを撮影する。
破傷風予防のワクチンを注射する。

輸血4単位が入った後、血圧は102/62となった。

いくつかの追加検査ののち、麻酔が導入され骨折の緊急処置が始まった。
受傷から、すでに4時間経過していた。



すべての外傷処置が終わった時点で、予測救命率を計算した。
救出直後の予測救命率は58.8%、緊急処置をして搬送した後の ER 入室時は72.1%。
現場からの治療開始がなければ、予測救命率は50%を下回る危険域に入っただろう。
緊急処置を早期に開始できたので、八戸ER 入室時は、72.1%と安全域に達した。

現場に医師が出動し、ショックの患者を安定化する。
そして病院では、当たり前の治療を施して治療する。

結果から見れば本当に当たり前のこと。
しかし、現場で緊急治療を開始するために、いったい何人が関わっただろう。
消防は50人?警察は?医療は?そしてドクターヘリを飛ばす機長・整備士・CS も。

現場医師出動による救命治療は、先進国の誇りとして譲れない。
劇的救命!

八戸ドクターヘリ劇的救命チーム解散まで、あと6ヶ月。

この日のすべてを目の当たりにした河野君が、口にしてくれた「good job」


コメント

  1. BBQ | URL | 5KTh30no

    八戸はアツい!!

    八戸ドクターカー、2台同時出場すごい!
    土地勘があった医師だからこそ、そしてアツい想いがあるからこそ出来る業ですね。

    サンダーバード作戦でヘリも車もいなくても、他の事案で医師を必要としていればそれにあらゆる手段で応える情熱、感動しました。


    >現場に医師が出動し、ショックの患者を安定化する。
    >そして病院では、当たり前の治療を施して治療する。
    >…現場医師出動による救命治療は、先進国の誇りとして譲れない。

    でも実際これが出来るのは日本でもまだあまり無いですよね。
    このシステムが回っている地域に住めていることに感謝です。


    >八戸ドクターヘリ劇的救命チーム解散まで、あと6ヶ月。
    何か切なくなる表現(涙)…
    早く青森に2台目が来て再結成できる日がくるといいですね★

  2. 謎の三沢市民 | URL | x6gY2XN.

    感想

    まず、今回のことに関わった皆さん、お疲れ様でした。
    三沢の天候不良は仕方ないですがそれでもヘリが来たおかげで
    初期治療を行え、結果的には良かったと思います。
    この栄光をそのまま県病に明け渡すのは勿体ないと思う。
    公約で、ドクターヘリ2機目の購入を約束してくれればいいんですがね。

    青森県の面積は、約9323K㎡で全国8位だ、
    それを、カバーするには1機だけでは不可能だ。
    そこで医者が不足している。
    たとえば、県病にドクターヘリが有ったとして
    次のような連絡が入ったらどうだろう
    青森ドクターヘリは、要請があり鰺ヶ沢へ向かい、患者をヘリで弘大付属病院へ搬送し、降ろした後県病に向かっていました。
    その時、三沢消防よりドクターヘリ要請があったとする、(内容は、先日の航空科学館での訓練と同じ)そのとき、ドクターヘリは、八甲田山を越えて三沢へ向かうことになった、ヘリが着いた時にはもう間に合わなかったなんてことがあれば困ります。
    青森県知事に、2機目導入の嘆願書を送りましょう、署名だったら喜んで参加させていただきます。

  3. はやぶさ | URL | -

    本来

    軽快なフットワークでの活動、ご苦労様でした。
    私は医療関係者ではありませが、何を何症例実施したとか、ドクヘリフライト何回だとか、予測救命率何%だとか、医者や救命士の方々は数字がすきですね。そしてあと6か月で八戸ERも終わりみたいなフレーズ
    なぜ、目前に迫る県病でのドクヘリ運用をどう生かすかの話にならないのか疑問です。これが津軽と南部のあつれきなのでしょうか?Dr.Konは青森市出身とききましたが。確かに2機あればより救命率もあがるでしょう、2機の必要性もあるでしょう。でも、まずは今ある1機のドクヘリをどう生かすかではないでしょうが、それを考えずでは、ドクヘリ2機目の必要性を説いていることと整合性はとれないと思います。
    表向きは協力関係にある県と八戸のようですが。
    今度は知事選もからめてのおねだり。屋内スケート場も。知事も南部の方です、どうなることやら。少なくとも、このような手法には、たとえ“救命”というお金では買えがたい問題とはいえ、冷静な県民はどうみるのでしょう。結局は、綱引き、そしてそれをしているのは…

    このブログ、すべて自分たちのすばらしさだけのPR、そして事細かな記載に劇的救命も劇団救命のように感じてしまいます。すみません。

  4. コン | URL | -

    医学は科学

    9年前に、青森市でドクターヘリをやりたい。ヘリポートが必要だ。青森市の救命救急センターをレベルアップしたい。東北一にしたい。救命救急センター長で腕をふるいたい。青森市の病院就職の条件にそういう提案をしました。「それは無理だね」その返事でがっかりしました。生まれ故郷の病院はガン診療と脳卒中ならその当時から一流でしたが、救急については現状を把握して将来をみる力がありませんでした。いまは違いますが。立派になりました。
    ブログの文中に数字が多くて申し訳ありません。医学は科学なんです。文学ではありません。なんとなくの感じでは、命を守れないのです。このブログには、一般市民の他に多くの医療者がアクセスしています。医学関係者向けに教育の意味もあり、勉強になることも時に載せています。この事は好評を得ています。
    予測救命率を、意識、血圧、呼吸数、外傷重症度から方程式で計算し、50%以上なのに死亡することを、予測外死亡と言います。さらにそれを専門家で審査して、防ぐことができた死亡ならプリベンタブルデスと言います。プリベンタブルデスを少なくするための努力を、様々行ってきました。例えば、私達が開発した外傷初期診療講習会(JATEC,PTLS)へは、青森県内の外科医や救急医が数多く受講しています。この講習会は青森県病や、弘前大学を始め多くの救急病院の医療の質を上げることに貢献して来ています。いま一人前になったつもりでいる多くの医師たちは数年前には、私達の作った、教育コースを受講して感動していたはずです。

    若い研修医にはこれとは別に救急医療を教えています。県内にこだわらず、全国で。彼らが、今後青森県内で広く活躍することでしょう。
    救急看護師教育も行っています。県病、弘前の看護師も数多く、わたしの主催する救急看護講習会に参加しています。
    県庁で行う会議だけでは、救急医療はよくなりません。現場で仕事をする医師、看護師の質をあげることが大事です。最近青森県の救急の質が上がってきました。
    私がまるで、八戸の事だけを考えて活動しているように言われると心がいです。私が取り組んでいるのは救急医療の標準化活動です。日本中どの地域でも同じく質の高い救急医療を提供する医師看護師を育てることです。その手段の一部に、ドクターヘリがあり、研修医教育があり、外科医救急医教育、看護師教育があります。
    青森県に全国18番目のドクターヘリを持ってきたことを評価していただきたいです。県病、弘前、西北、むつ、青森市民、十和田、八戸日赤、労災、健成病院の医師が、外傷講習会を受講できるようになったことを評価してほしいです。
    青森市のドクターヘリに乗る医師は全員、外傷講習会で私の教え子です。
    今日は、その教え子が、ドクターヘリの打ち合わせで八戸にいらっしゃいました。約3時間、細かな事の質疑がありました。
    青森県ドクターヘリは2機、岩手は2機、秋田は1機、北海道は4機必要。これは4年前に、私も入っているドクターヘリ推進委員会で国に提出した報告です。あと3年後には全国で40機になり、さらに数年で80機になるはずです。全てに奥手な青森県が、全国から注目されるドクターヘリシステムを作り上げられたのは幸運でした。出来上がったシステムを青森市に移すだけです。少しの努力でうまくいきますよ。青森市生まれの私は、青森市に十分貢献していると思っています。
    ブログ掲載記事は全て事実です。患者特定できないように、配信期日を工夫しています。時間経過は救急隊に大いに参考になるでしょう。処置の詳細は医師、看護師に参考になるでしょう。そしてストーリーは市民に感動を与えるはずです。なぜなら、医療の結果は別として、真剣勝負だから。
    「劇団」は俳優が行う医療のニセモノです。私が行っているのは、一流の本物の救急医療です。だから胸を張って全国に発信できるのです。「感動を与える救急医療の実践」いつも、若い医師に言っている言葉です。
    はやぶささん、私を見に来たらいかがですか。きっとトリこ。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://doctorheli.blog97.fc2.com/tb.php/615-2e159dad
この記事へのトラックバック



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。