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早朝のサンダーバード作戦、そして…  その3

2011年02月07日 20:18

(サンダーバード作戦で先着したドクターカー隊は、ヘリとの連携に希望を託す)

八戸市立市民病院のヘリポートでは、急ピッチで出動準備が進められていた。
通常、ドクターヘリは7時30分から整備士が始業点検を行う。
その際には必ず、決められた工程をすべて行う。
これをやらずに空を飛ぶことは、絶対にない。
その始業点検を最大限に急いで終わらせ、離陸できるのが午前8時頃。

午前7時56分、十和田消防本部から正式にドクターヘリ出動要請が入った。

要請前から資器材を積み込み、始業点検を終えたEC135 が、トレーラーでヘリポートに引き出された。離陸準備完了まで、あと数分。
機長がエンジンを回す。
零下の格納庫で一晩中眠り冷え切ったエンジンは、低い音で目覚めた。
回転数を徐々に上げる。
冷えたエンジンオイルが隅々まで回り始め、いつもの高いエンジン音に変わる。
準備完了。

すでに後部席に乗ってシートベルトを締めていた私たちは合図した。「後ろはOKです」
その室内通話の直後、ドクターヘリは離陸した。

8時07分、青森県ドクターヘリ離陸。
本来のスタンバイ時間は午前8時半から。こちらも時間前出動だ。

天気図によると青森市は雪、十和田市は曇り、八戸も曇り。
天候も味方して、今日も冬の青森県にドクターヘリが飛ぶ。

高度450mは視界良好だった。
冷えた分だけ視界が利く。太平洋側が遠く下北半島までみえる。
青森市側が雪空とは思えない。

8時14分、ドクターヘリは六戸運動場を旋回し始めた。
すでにドクターカーと救急車は到着している。
雪の中に、除雪済みで黒いアスファルトがむき出しの駐車場が見える。

DSC08007.png

ここは六戸消防が必ず確保している、除雪済みランデブーポイント。
夏ならば、救急車とドクターヘリは可能なかぎり最短距離でのドッキングを目指すが、
冬は雪のため、夏なら着陸できる場所でも制限を受けてしまう。
そこで、常に除雪して着陸可能な場所を用意しておく。

十消救急1とドクターカー2が並んだ場所から20m 離れて、EC135は着陸した。

DSC08002.png

黒いアスファルトは、氷でピカピカしている。
町田医師と私は、足元に注意しながらドクターヘリの外へ出て救急車へ移動した。

患者に接触したとき、Primary survey は先着医師により終了していた。
ABD に異常なく、C で FAST が陽性。
しかし数分前、頻脈・頻呼吸になりショック指数が1を超えたので、2ルートから輸液を全開で投与している。

輸液パックを、ドクターヘリ機内で先ほどまで暖めていた生食に変える。
冷えた輸液は凝固障害に結びつくから。

腹部を見ると、ハンドルの痕。腹を押すと痛がる。
FASTをもう一度行う、やはり腹腔内出血あり。

強い腹痛の腹部外傷だ。
「手術が必要だろう。」小腸損傷に違いない。
予定通り、八戸救命へ搬送だ。

吉岡医師と吉村医師に、機内への搬入を手伝ってもらう。
DSC08006.png


8時25分離陸、そして8時33分、八戸市立市民病院へリポートに着陸。
ドクターヘリストレッチャーを皆で囲んで ER へ向かい、ERでベッドに載せ換える。

そのときドクターヘリ通信指令室では、気になる無線通信を CS が傍受していた。
消防無線を傍受した CS は、機長に医療無線で第一報を入れる。

「新郷村で気道閉塞」
その短い通信を、私が腰に携帯しているハンディ無線機もキャッチした。

「次、出動あるかも」フライトナースの加藤さんと整備士に伝える。
「すぐに準備します」加藤看護師は患者から離れ、棚のドクターヘリ資器材を掴んだ。
いちど使ったバッグは補充せず、次の新しいバッグを使う。

患者のストレッチャー移動を急いで済ませた私と整備士は、
空になったドクターヘリストレッチャーを押して、ヘリポートまでの 100m 走。

8時43分、ドクターヘリ出動要請のホットライン。
来た、想定の通りだ!

(続く)


コメント

  1. 古常泉下で働いてました | URL | GCA3nAmE

    時間前出動って

    いつも精力的な救急活動、頭が下がる思いで見せていただいています。

    ところで時間前出動についてですが、基本的には現場の判断であって、外野からとやかく言うことではないとは思いますが、ブログで公開されているので、ちょっと感じたことをコメントさせてください。

    救命という人の命が懸かった出動要請のプレッシャーの中で行われる始業前点検ってどうなんだろうと思います。8時半からの運用時間なら、機械的に無情にそこで切らないと、知らず知らずのうちにリスクを犯してることになってしまってないでしょうか。たしかに朝は、家族が起きてみたら様子が変とか、朝食中の窒息とか、通勤通学中の交通事故などいろいろなことが起こる時間です。でも、そこをカバーしたいのなら、始業前点検をもっと早く始められる体制を整えて、日の出とともに要請を受けられる運用にするべきであって、今の体制のまま大急ぎで点検を終わらせて時間前出動するというのは、航空安全の観点からはやってはいけないことのような気がします。運行基地の青森市との綱引きや、運行会社間の競争の下、人の命を救うためという目的の下、だれもが「これちょっと危ないんじゃないか」という声を上げらないまま、すこしずつ無理をしていませんか。私は医療側の人間で、航空安全は素人ですが、そうかんじました。ヘリコプターは、いったん事故が起こると全員死亡の可能性がとても高いです。救急医療の現場でがんばっている仲間がそのようなことには絶対になってほしくありません。夜間運行の危険性を訴えられていた、ドクターヘリパイロット奮闘記の機長さんが伝えようとされていたこともこういうことではないでしょうか。

    皆様のますますのご活躍と安全運行を心から祈ってます。

  2. コン | URL | -

    Re: 時間前出動って

    ドクターヘリへの応援ありがとうございます。

    安全運航には今までも、そしてこれからも気をつけてまいります。
    医療者から、時間前運航を強要したことは一度もありません。
    時間前離陸は、常にCSと機長、整備士で時間を決めています。

    飛行の責任は機長にあります。
    経験を積んだ機長が、慎重な判断で離陸時刻を決めています。
    そこに医療者からのプレッシャーが一切ないように配慮しています。

    さらに八戸では、ドクターヘリの補完にラピッドドクターカーが出動しています。
    機長は、天候、日没後、時間前などでヘリコプター運航を断念しても、ドクターカーのおかげで心の痛みが和らぐと言っていました。

    青森市との運航基地の綱引き、運航会社間の競争も、一切ドクターヘリ出動に関係ありません。
    機長、整備士、CS は空のプロです。
    いつも毅然とした態度と判断の機長、整備士、CS を尊敬しています。

    なお誤解を招きそうな時間前出動の記事は、今後書き込まないようにします。
    残り少ない八戸から離陸の青森県ドクターヘリを、応援よろしくお願いします。

  3. はやぶさ | URL | -

    異議あり

    Dr.Konのコメントですが
    「医療従事者から、時間前運行を強要したことは一度もありません。」
    断言してますが、病院内において、医師、看護師などフライトの体制が整っている中では、無言でも機長にはプレッシャーになっていない訳はないと思いますが。飛行の責任は機長にある。それもそのとおりですが。“無言の圧力”“無言のプレッシャー”となっているかと思います。
    やはり、体制を見直すべきなのではないでしょうか。
    今後は書き込まないようにする
    とは、ばれないようにこっそりやると聞こえます。
    安全を軽視しているようにも。着陸についても、この時期、雪がある中で、いくらスキーを履いているとはいえ、機長の技術頼みすぎているように感じます。飛べば近くに着陸しなければならない感が。緊急であるからどこでも着陸できるのかもしれませんが、安全を軽視とまでは言いませんが、
    プロは安全を賭けてはいけません。事故がおきては遅いのです。
    そして、事細かな動画や写真を交えたブログ。関係者のプライバシーは?
    青森県ドクターヘリスタッフブログだけに、県や八戸市の、患者の許可などはどうなっているのでしょうか。勝手に掲載しているはずはないとは思いますが。どうなっているのかな?
    さらには、フライトしている数少ない人の中で撮影する余裕はすごいです、カメラ目線まで。

  4. 古常泉下ではたらいてました | URL | GCA3nAmE

    今先生へ

    コメントありがとうございます。もちろん、現場では空と医療のプロフェッショナル同士のお互いに敬意を持った信頼関係の中で、いろいろなことが行われているんだろうなというのが感じられます。ただ、みなさん純粋で一生懸命だからこそ、じわじわリスクとる方向になってないかしらとつい要らぬ心配を外野からしてしまいました。

    批判のつもりではまったくなく、様々な意味で厳しい環境の下、精力的に救急医療を支えていらっしゃる姿に頭が下がりますし、遠くから応援しています。

  5. 中日本航空の津田です。 | URL | -

    Re: 異議あり

    青森県ドクターヘリの機長をしています、中日本航空の津田忠和と申します。

    イレギュラーなタイミングでのオーダーや積雪のある場所への着陸は、通常運航から比較するとストレスのかかる場面であることは確かだと思います。
    そのときには運航クルー間だけではなく医療スタッフともコミュニケーションを取りながら、タイミングや状況で適切な判断を心掛けて運航しています。
    その判断に対して医療サイドの意向が優先される余地はなく、この点は十分理解していただいています。
    ご意見を参考にし、引き続きドクターヘリクルー間の良好な関係を保ち安全運航に努めてまいります。

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