chain of survivalで劇的救命 その1

2011年01月25日 22:32

2010年10月、世界中の心肺蘇生学術団体が新しい心肺蘇生法を発表した。
もともと5年ごとの改訂が計画されていて、その通りに実行されたもの。

米国ではアメリカ心臓協会 AHA が、EU ではヨーロッパ蘇生協議会 ERC が、
それぞれ2010年のガイドラインを、管轄する国や地域に発表している。
日本でも、日本蘇生協議会 JRC が、ガイドラインを同時に発表した。
(ただしドラフトといって正式版ではなく、いわば速報。)
地域ごとの歴史や体制に応じて細部は異なるが、どの団体もほとんど一緒。

今までの方法が間違っているわけではないが、世界中で実験と研究を続けている。
そうすることで、少しでも社会復帰が多く望める方法を模索しているのだ。
今度のガイドラインも実験的要素を含んでいる。そして5年後、また見直される。

八戸ERは、できるだけ早く新しい方法を取り入れるようにしている。
八戸市立市民病院では12月26日から看護師向けに、G2010 版の蘇生講習を開始した。


40歳代男性が、水産加工工場で倒れた。
9時13分、発見した職場上司が119番通報。
9時15分、救急車が現場へ向かう。
そしてラピッドドクターカーが同時要請される。

救急隊が現場到着時、職場上司が CPR を行っていた。
CPR中は下顎呼吸で、頚動脈は触れない。

G2010では下顎呼吸に対して、すぐにCPRを開始することを強調している。
呼吸があるとCPRをためらいがちだが、下顎呼吸は正常な呼吸ではない。
下顎呼吸は心臓が停止しているときに起こる呼吸だ。下顎呼吸は心停止を表す。
職場の上司は勇気と愛で、下顎呼吸の患者にCPRを行っていた。

救急隊が作動させたAEDの波形は、心室細動だった。
一般市民用のAEDは、惑わされないよう心電図波形を表示しないが、
救急隊の持っているAEDは、心電図波形が確認できる。

救急隊長はショックを求める音声を聞きながら、AEDのオレンジ色のボタンを押した。
電気ショックだ。
すかさず、向かい合った隊員が胸骨圧迫を開始した。

隊長は次に、静脈路確保に移る。
現場でどこまで治療するかは、時間との兼ね合い。
現場到着から出発までの時間を15分以内に収めて、できることを行う。
搬送時間が7分を越えるなら、確実な気道確保を行う。
これが、八戸で推奨している現場ルール。
その責任は、メディカルディレクターの私にある。

静脈路確保も成功した。
ちょうどそのころ、ラピッドドクターカーで出動した医師が患者に接触した。9時26分。
電気ショックから2分が経過したため、AEDからメッセージが流れた。
胸骨圧迫を中止し、心電図波形を見ながら頚動脈を触る。
拍動が触れた。

「心拍再開」隊長が宣言した。
心拍再開だ。よくやった。

患者は救急車内に収容され、現場を出発した。
9時31分。

(続く)


コメント

  1. 埼玉の応急手当普及員 | URL | WOq6nlhY

    chain of survival(救命の連鎖)私たち応急手当普及員にとっては、この言葉を一般市民の方が当たり前のように口にしている社会になってほしいと願っています。

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