孤立集落へ出動セヨ! その3

2011年01月22日 19:06

(大雪で孤立した集落からの要請に向かう年明け初出動、現場への着陸を狙う)

集落の端に赤く大きな円形のマーク。急ごしらえの着陸帯だ。
「確認済み」機長
「広さはどうかな」整備士
「十分、ただ傾斜が少しある」機長
「降りられるかな」整備士
「傾斜が気になる。場合によってはドクターナースを現場投入して移動しよう」

「見張りおねがいします」整備士から声がかかった。
「はい」
「青森ドクターヘリ1から八消救急11、ドクターヘリは現場確認。
 これよりランデブーポイントを半周してから着陸態勢に入る」

機長は森の針葉樹の枝が揺れる様子から、風向と風力を見ている。
枝の揺れは少ない。視界もよく効く。
ただ、赤いマーキング部分以外、地上の雪は深い。

「降りますよ」機長
「ゆっくりね」整備士
高度 20m で雪煙が舞い上がる。
「やはり、少し傾斜がある。
 エンジンパワーをそのまま保ちます。ドクターナース現場投入で」

12時33分 EC135はゆっくりと雪原に着陸した。
「左のドアを開けます。ドクターヘリは、このあと移動するかも知れません」

ヘルメットを飛行用から現場用に取りかえ、腰をかがめてEC135から遠ざかる。

後ろでエンジン音が大きくなった。
振り返ると、白い雪煙が再び上がり、機体が5m ほどの高さにあった。
先に急いで我々を降ろしたあと、数m 前方の安定な場所に着陸し直すようだ。

2011_0118-08.png

珍しい光景に目を惹かれるが、ゆっくり見物するわけにはいかない。
雪道を走って現場へ向かった。

50m、いや150m も走っただろうか。実際の距離はわからない。
ようやく12時35分、患者に接触した。

苦痛の表情を浮かべた男性だったが、ABCDE に問題はなかった。
超音波検査FASTで心臓損傷と腹腔内出血を調べたが、異常は見つからない。

「後10分後、ヘリに移動。 古川隊長!ヘリまでの搬送手段を決めて下さい」
「バックボードで人力です」古川隊長が即答する。

次の処置は輸液ルート確保、しかし血管が見つからない。
はさみで裂いたシャツの袖をめくり上げ、ゴムで縛る。
静脈が浮き出るはずだが、見えない。

ふと見ると、右の外頸静脈が膨らんでいる。
緊張性気胸はない。心タンポナーデもない。肺塞栓の症状もない。
すると、外頸静脈の拡張は慢性の心臓病だろうか?

ともかく、頸の血管を狙うことにした。
野田頭医師が、外頸静脈の尾側を指で押さえてくれる。
生食入り注射器に20G 針をつけて右手に持ち、静脈の頭側で皮膚を少しだけ引っ張る。
浮き出ていた静脈は平坦な皮膚の下に隠れるが、もう私には血管の場所がバレている。
逃げ隠れできなくなった頸静脈に、注射器に付けた静脈留置針を15度の角度で進める。
血管壁の感触はわからないが、注射器に陰圧をかけると黒い血が引けてきた。

さあ、これからが正念場。ここで針を無造作に進めると失敗する。
注射器に入れていた生食を注入すると、針がわずかに入った血管が膨らむ。
その隙を見て、針をわずかに前方に進めるのがコツ。

ここまでくれば大丈夫。
念のため再び陰圧をかけて血液の逆流を見る。よし、うまくいった。
静脈留置針のストローのような外筒を、ゆっくり血管内に進めれば良い。
「よし、血管確保成功!輸液スピード全開500ml」

(続く)


コメント

  1. BBQ | URL | 5KTh30no

    珍しい一枚ですね。
    整備士が誘導してるんでしょうか?

    貴重なシーンを見れて嬉しいです。

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