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台風の中へドクターカー出動 その2

2010年12月09日 23:08

(大荒れの空の下、交通事故の多発外傷にドクターカーが出動)

ERベッドに移された患者に、光銭医師が外傷診療のprimary surveyを開始する。
血圧86/50、脈拍82、呼吸40回。血圧が低くて呼吸が速い。
目で見る限り胸部に外傷はない。
輸液ルートを追加して、生理食塩水を最大スピードで落とす。

続けて超音波で心臓をみると、まわりに心嚢液が溜まっている。
心タンポナーデか? いや、ちょっと待て。
心嚢液が溜まってショックとなった状態が心タンポナーデだ。
心嚢液が溜まっても血圧低下がなければ、心タンポナーデとは言わない。
そして、緊急処置を要するのは心タンポナーデのときだけ。
だから今、この患者に緊急処置は必要ない。

それよりも、左上腕骨が変形している。間違いなく折れている。
上腕骨骨折は出血量が多い。侮れない。
意識を確かめると場所、人、時が分からない。見当識障害だ。
体温は、35.5度。

おかしい。
体温低下と頻呼吸。きっと何かある。
血圧が保たれているので、 CT 撮影を決断した。

すばやく撮影を終えて ER へ戻ると、顔色が悪くなった。
収縮期血圧70、血圧が下がっている。

ヤバイ、出血性ショックだ。
右腕に確保された2つの輸液ルートを全開で落とす。
もう一度、超音波を当てると腹腔内出血が見えた。
先ほどまで、この出血はなかった。

撮影した CT を確認して、光銭医師は確信した。
「腸間膜損傷だ。」

私に電話を掛けてきたのは輸血を準備した後だった。
「女性の歩行者、交通事故。現場で意識障害、ER入室後ショック。
 腸間膜損傷と上腕骨骨折、頭部にくも膜下出血もあります。」
「すぐ行くよ。腹の出血は多いの?」
「超音波ではそんなに多くありません。CTで分かりました」
電話しながら、私は自宅の2階でスクラブに着替え、車のハンドルを握った。
呼ばれても直ぐ ER へ直行できるように、自前のスクラブを自室に用意してある。

自宅を出て4分で、病院駐車場へ着いた。
大粒の雨の中を走り自動ドアを2枚開けると、そこは別世界。
乾いた空気と強い光、心電図モニターとアラームの音が響く。
医師や看護師が絶えず動き、壁に沿って並んだベッドは全て埋まっている。
ドラマの er と同じ雰囲気だ。

光銭医師と目が合った。「早いですね」
「どう、バイタルは?」
「持ち直しました。」
それじゃ、と私も primary surveyを行う。
胸部と骨盤のレントゲンを診る。超音波をもう一度。
ガス分析に目を通すと、アシドーシスがある。

光銭医師が CT 画像の説明を始めた。
「ここが腸間膜損傷で、造影剤の血管外漏出像があります。
 肝、脾臓、腎臓に問題なし。フリーエアーなし。
 頭には外傷性くも膜下出血と頭蓋骨骨折です。あと、左上腕が折れてます。」
「それで、千葉紀之医師がここにいるんだ。」
千葉紀之医師は3年目。高倍率の選考試験を勝ち抜いて救命救急研修医コースに入った。
将来は整形外科医になりたいと決意し、いま整形外科で3年目を迎えていた。

「先に腹の手術だね。この腹を経過観察するのは危険だ。
 手術中、心臓周囲に出血が増えれば心タンポナーデになる。
 そのときはドレーンを入れるから、胸はスペースを開けておこう。」
「腹部手術のあと、上腕骨折を固定します。
 術後は前腕を胸の方に曲げた位置で固定します。」千葉医師

私は、応援医師に電話することにした。
まず野田頭医師、最上医師。続けて明石医師。高田医師。
まだ浅い日曜の夜、みんな自宅で電話がつながった。
事情を伝えると「はい、行きます」揃って良い返事が返ってきた。
手術開始は、30分後。


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