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緋山先生の切創事故

2010年03月17日 20:56

昨日の記事で書いたプロスキーヤーの事故,今回は別の視点から.

立木に衝突したとの通報で、橘先生と緋山先生が出動しました。
ドクターヘリでスキー場に向かい、パトロール隊のスノーモービルでゲレンデハウスの患者さんへ。本論とは無関係ですが、なかなかカッコ良かったですね!

床に寝かされた患者さんにはネックカラーが装着されていて、意識はあるものの具合は悪そうです。外傷診療の第一印象はsick[具合が悪い]。
primary survey[外傷患者さんの呼吸と循環を素早くチェックする手順]で、両側に呼吸音減弱があったようです。循環を評価するシーンは確認できませんでしたが、両側の胸郭に圧痛があり[両手で押すと痛そうにしていました]、もしかすると皮下気腫による握雪音[雪を踏んだようなギュッという音]を確認したのかも知れません。橘先生は両側気胸と判断して、胸腔ドレーンを両側に挿入すると宣言しました。

イソジン消毒に続いて局所麻酔を皮下に注射し、緋山先生も続けて同じ処置を開始します。ところが、ここで緋山先生が誤って自分の手を傷つけてしまうのでした。ディスポ手袋の破れ目に血液が滲むさまを、呆然と見つめる緋山先生・・・


これは、いわゆる医療関連事故ということになります。
もちろん、被害者も加害者も、患者さんではなく医師本人です。
映像では、緋山先生が思わず手を引っ込めたためメスが手をかすめたように見えます。
局所麻酔が足りなかったか、偶然のタイミングで痛がったのか、メスを入れた瞬間に患者さんが動いたので、ついひるんだのでしょう。
切ってしまった場所は、左人差し指の親指側の付け根でした。これは、左の親指と人差し指で皮膚を押さえながら右手のメスで切り込むとき、メス刃の進行方向が左手と交差していたのでしょう。本来なら、左手から離れる方向に切り込むべきでした。これは、メスの取扱いで基本中の基本です。

しかし、謹慎?から明けたばかりの現場出動は、落ち着いて処置できる方が不思議です。
経験が少ないうちは、ERでの緊急処置も上級医がサポートしないと、自分でも考えられないようなミスをします。ましてや現場では… 聴診器を持つ手が震えるのも、無理ありません。

さて、患者さんが実はB型肝炎陽性キャリアで、緋山が劇症肝炎に・・・というのは一昔前のドラマ。コードブルーに陳腐な展開は似合いません。
そもそも、今どき医療従事者ならB型肝炎のワクチンを受けている筈です。
HCV[C型肝炎ウイルス]やHIV[エイズウイルス]にワクチンはありませんが、このような場合は緊急で患者さんの血液を調べさせていただきます。もしHIV陽性だった場合、すぐに予防内服を開始することが推奨されています(初回投与は受傷2時間以内)。

ところで、簡単に破けてしまうような手袋は意味がない!と思うかも知れません。
でも、メスで切ってしまう事故は割と少数です。多いのは、いわゆる針刺し事故です。この場合は薄いゴムでも、突き抜けるときに血液が拭い取られて、感染率が下がるようです。
手袋の役目はこれだけではなく、患者さんや医療者の体についているバクテリアが相手に移るのを防ぐいう役割があります。
ですから医療現場では、一処置一手袋を徹底して指導されるのです。もったいない、と言ってはいけません。

コードブルーのフライトスタッフも、良く見るとしょっちゅう手袋を交換していますよ!


コメント

  1. ナイト | URL | -

    こんばんは

    初めてのコメントです
    いつも拝見させて頂いています。

    1つ質問をよろしいでしょうか?
    コードブルーで良く出てくるイソジンをドバっとかけるシーンですが
    あれは乾燥しなくても大丈夫なのでしょうか?
    (乾燥する際に消毒効果を発揮すると習ったような…)

    実際の現場でも行われているのですか?

    低レベルな質問ですいません。

  2. コン | URL | SFo5/nok

    イソジンドバッにお答えします。
    乾燥を待つべきです。
    しかし、乾燥を待つ時間がない場合は、濡れているイゾジンの上にメスを入れます。
    八戸では、ドバッはやりません。必ず、イソジン綿球で皮膚をこすります。
    外傷の治療で重要なのは、大事な順番に、気道、呼吸、循環、中枢神経,体温管理、それから虚血予防、最後に感染予防です。
    したがって、感染予防のイソジンの効果に時間を割くより、先に胸腔ドレーンや止血術が優先されます。

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