久しぶりのコードブルー,ガッキー激闘編その2

2010年01月14日 21:00

昨日の記事を書いてから,ふと確認したところ,何と!
昨年の正月特別編を解説したシリーズが未完了のままでした!
ちょうど今週末には災害の実技講習会を主催する縁もあるので,急いで続きを…


列車事故の現場出動でガッキーの担当は,救護所のトリアージでした.

そしてガッキーの許には,予想通りに重症患者さんばかり運び込まれます.
応急処置をしても,次にその中から誰を病院に送り出すかの決断が待っています.
必要な処置が分かっていても手が回らず,次々に新しい重症患者が運ばれてくる…
冷静を装っても,パニック寸前の極限状態に近い状態でしょうか.

本当は,これほどの大災害なら現場の1次トリアージは救命士や非救命医師に任せ,
負荷が高い現場救護所に,限られた救命医を集めるのが良策のように思えますが,
メンバー全員の状況を把握して指示を出す仕組みがなければ,できるものじゃありません.


頭と胸を打った中年男性が運ばれたのは.そんなときです.
呼びかけると目を開けて何か話しますから,確かに意識は2ケタです.
ガッキーは右手で脈を触れながら意識を確認し,ペンライトで瞳孔を確認して赤タグを選択しました.頭部外傷と胸部外傷を合併していますから,確かに緊急搬送の対象と思われます.

ところがこの男性は,ヘリが来る数分の間に全身性のケイレンを起こしました.
急いで診察すると意識レベルは300.つまり昏睡状態です.聞き取りにくい台詞ですが,対光反射がなく除脳硬直もあるようです.

どうやら脳出血が増えて脳幹部を圧迫し,脳ヘルニア状態に至った可能性が高いようです.この状態から搬送して手術しても,ハッキリ言って救命は望み薄です.

それでも普段なら,間違いなく最優先で緊急搬送するでしょう.
しかし今は,先に搬送すれば救命が期待できる患者が他にいるのです.
そして彼女は,搬送中止という重い決断を下しました.

もちろん,家族は猛然と抗議します.
そりゃそうでしょう,さっき最優先と言われたばっかりなのに…
娘は我を忘れて吼え立て,母は茫然自失と崩れ落ちます.

大規模災害という悲惨な事故の,もう一つの被害がこれです.
母娘の2人とも,心に深い傷を受けています.
そして突き刺さるような家族の叫びは,医師にも深い傷を負わせます.

ガッキーに,憎まれ役を引受けようとまで考える余裕はなかったと思います.
冷たく事務的な発言も,耐え難い苦痛を仕事と割り切って自分を守るためでしょう.
感情移入して苦痛を背負っては,とても次の仕事に向かえません.
しかし,自分を守るため家族に寄り添えなかった事実も,重くのしかかります.

昨年の救急医学会東北地方会でも,特別講演して下さった荒木先生が同様の経験を語っておられました.
アドレナリン全開の現場から離れたあとで抑うつ的になり,快復に長い時間を要したそうです.
こうしたことが知られるようになり,近年では災害支援の後にデブリーフィングが必要とされています.

その点で,最後の三井先生は少し冷酷に感じられました.
冷静に聞けば親心を含んでいますが,こんな時はシンプルで暖かい言葉がほしいものです.
人を救うために現場に行って,辛い思いだけが残るのは哀しすぎますよね.



このように,大規模災害への対応は通常の医療とかなり異なったものです.
加えて常に予測外で,現場では消防や警察や自衛隊も現場活動を展開しています.
これらが,それぞれの立場や目的で活動すると必ず衝突が起こりますし,互いに不信感を持ったりします.パニックを起こすのは一般市民だけではありません.

そこで,多くの関係機関と災害対応を一緒に勉強しよう!と実技講習会を開発しています.
MCLS,Mass Casualty Life Supportと呼んでいます(川崎病ではありません).
全国に先駆けて,今週末に八戸市民病院で開催されます.
まだ開発中で完成したものではありませんが,数年後には全国展開しているかも?


コメント

  1. 富子 | URL | -

    ドラマ好きな私としては、またドラマに絡めてコメントですみません。
    これと似た様な内容のドラマが以前救命救急24時(第3シリーズの地震編)でありました。

    たしか第2話だったと思いますが、震災直後に進藤先生が、治療していた開業医の診療所前でトリアージをするのですが、やはり運び込まれてきたおばあちゃんに、治療をしないことを選択して、家族から「まだ息があるのに、なぜ見捨てる」と非難されたシーンです。
    見ていてとても辛かったのを覚えています。
    あくまでドラマの中ですが、現実に起こりうることだけに、とても胸に突き刺さる思いで見ていました・・・。
    患者も家族もそして医師にも辛いことなのでしょうが、現実となった場合、私が家族だったとしたら受け入れられるのだろうかと、考えさせられました。


    ところで、先程、今回のコードブルーの解説にコメントさせていただきましたが、質問があったのを忘れておりました。
    あの川で発見された子どもの治療方法で、湯船と何かで体温を上げるという方法をとったと思ったのですが、開胸(?)した状態で湯船につけるとういうことは実際にアリなのでしょうか?
    素人的には、不衛生にしか思えないのですが・・・。
    (もっとも救命関係のドラマを見てると、緊急の場合かなり不衛生(苦笑)な場面はでてくるので、本当ならそれも一つ一つお伺いしたいところです。)




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