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心尖拍動と心不全 その3

2019年01月23日 18:33

患者は、上体を上げたファーラー位だった。
この姿勢は、
起坐呼吸ともいう。
呼吸不全か循環不全が予想される。
視診で呼吸数、呼吸様式を見る。
呼吸数は早い40回。
現場に心電図モニターはない。
全て目で体を見て判断する。
左胸が上がっていない。
右はよく動く。
呼吸数を時計を見て数える習慣が付けば、
胸郭挙上の異常もすぐに気づくようになる。
さらに腹が膨らんだりへこんだりの複式呼吸だった。
座位なのに頸静脈が腫れている。
座位では普通、頸静脈は腫れていないはず。
静脈の圧が上がる病態、例えば
心不全、肺塞栓、気胸、心タンポナーデ、慢性呼吸不全を疑う。
顔色は白い。
顔色は循環不全と貧血を示す。
循環不全なら手足の色も悪くなる。
貧血なら手のひらの皺が白くなる。

聴診器を当てた。
左肺呼吸音が聞こえない。
右肺呼吸音はいい音。
心臓の音はよく聞こえる。
左胸壁に手のひらを当ててみた。
心尖拍動が触れた。

心尖拍動とは、胸壁に皮膚に当てた手のひらに心臓の鼓動がぴくぴく触れること。
健康な正常人でも痩せていると触れることがある。
心臓拡大した病人では触れることが多い。
胸郭が大きくなり心臓が小さくなる肺気腫では触れない。
目の前で呼吸が苦しがっている患者で、
考えることは、心臓性か呼吸(肺)かの区別である。
心臓なら血管拡張剤、利尿剤。
肺なら、β刺激剤。
治療が正反対だ。
病院ならレントゲンで区別は容易。
しかし、現場で簡単ではない。

目の前で呼吸が苦しがっている患者で、
心尖拍で区別できる。
肺か心臓かを区別することができる。
もしが触れない時は、肺を考える。
触れた時は健康か(心臓でも肺でもないことがある)、心臓か、おそらく肺ではない。

患者には
心尖拍動が触れた。
「肺気腫ではないな。」
(続き)


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