岩田充永 救命救急のディシジョン・メイキング書評

2016年11月05日 18:19

『救命救急のディシジョン・メイキング-実践のためのEBMハンドブック』
藤田保健衛生大学 救急総合内科学教授
 岩田充永

ERでの初期診療から集中治療へのシームレスな連携を実現するための格好の手引き

日本の救命救急医療は、集中治療や外傷外科などを得意とする医師に支えられてきました。
そんな救命救急医たちも、最近は社会の要請や研修医教育への期待からERにおいても活躍しています。
つまり日本の多くの救急医は救命救急からERへ活躍の場を広げていったと考えられます。

一方、米国の救急医は軽症から重症まですべての救急症例の適切な診断と初期治療を行うことに
重点を置かれて育成されてきました。
しかし、本書編者の言葉を借りると、
そんな米国の救急医も重症救急への初期治療だけでなくシームレスな集中治療を行うことまで求められているようです。
本書はそのようなERで勤務している救急医に
集中治療の考え方を教える手引書を目的として執筆されたこと随所から感じられます。

私は、内科→ER→救命救急という
日本の多くの先輩救急医とは反対の順番で研修をしてきた
「変わり者」なので、本書の素晴らしさを救命救急を最初から学んできた諸先輩よりも理解できる自信があります(!?)。
本書を読むと以下の点で元気が出てきます

・重症救急における集中治療の基本が述べられているので、集中治療医の考え方を学ぶことができます。入院後に行われる集中治療をイメージして初期治療を行うことができるので、「ERで診断したら、あとは丸投げかよ」なんてもう言わせないぞ!!と元気が出てきます

・集中治療の考え方だけが述べられているのではなく、
その根拠となる文献も示され(しかも新しい!!)EBMを意識された記載になっているので、
集中治療医と一歩進んだ深い議論ができる!!と元気が出ます

・本書を読むことで、「集中治療とは論理的に考え、
必要なことを適格に行う医療」であることが理解できます。
集中治療のことを多くの医療資機材を総動員した
「豪華絢爛で重厚な」医療に見えて、
苦手意識を感じていた私のような“ヘタレ”医師も
「内科やERで学んだ診断学や臨床推論の考え方を大切にして、
集中治療の研修をしてみよう」と元気が出てきます。

本書の監訳者、
今明秀先生は日本を代表するスーパー救命救急医です。
しかし、今先生の偉大なのは、
救命技術が素晴らしいのに加えて、
私たちのような“ヘタレ”医師が「何を怖がっているのか」
その次元まで降りてきて同じ目線で指導をしてくださる人間性にあると感じています。
(外傷なんて診たことがなかった私を嫌な顔一つせず迎えてくださり
親切に御指導くださった川口市立医療センターでの1週間を昨日のことのように思い出します)

自分とは違う道から救急を志した
人間の気持ちもわかる今先生だからこそ、
「救命救急における考え方と判断の道しるべ」を紹介した本書に出合い
翻訳を思い立ったのであろうなあと推察します。

最近、内科医やER型救急医で救命救急・集中治療を学びたいと志す同志が増えてきました。
そんな同志にぜひ薦めたい一冊です


 岩田充永


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