症例その3-1:災害医療の基本について

2009年04月16日 23:01

■さて,コードブルーの症例検討も3回目,いよいよ列車事故が発生しました.
ここではまず,大規模災害への対応を考えながらドラマを解説してみることにします.
ただ,非常に内容が多くなるため数回の連載になりそうです.

■災害現場の特殊性
災害現場は,単に怪我人がたくさんいるだけではありません.
まず,圧倒的な医療資源(人手,薬剤,機械,その他すべて)不足が問題です.
通常なら豊富な選択肢から最善の治療を選べますが,災害現場では全員分の医療は提供できません.すると,誰にどれだけ医療を提供するのか?がきわめて重要になってくるのです.
また,突然の事態であり混乱していることも災害現場の特殊性です.通常の医療では多くのルールが厳密に守られ,間違いや危険を最小限にする工夫がされています.災害現場はまったく違います.

■魔法の呪文:CSCATTT
災害現場で医療活動するとき忘れてならない魔法の呪文【CSCATTT】について説明しましょう.
これは災害医療の手順や内容すべてを頭文字で網羅したもので,蘇生のABCに匹敵する超重要フレーズです.以下,順に説明してゆきましょう.

◆まずCはCommand & Control を意味します.
  Commandとは指揮,Controlとは統制のこと.
  災害現場には多くの関係者が集まります,警察・消防・医療者・ときには自衛隊も...それぞれの組織内では指揮命令系統が決まっていて,すばやく決定が下され実行に移ります.この縦の連携がCommandです.
  しかし,警察だけや医療者だけで災害には立ち向かえません,他の組織と連絡を取り合い協力して行動しないと混乱が生じたり危険が増えたりします.そこでControl,つまり組織間の連携がスムーズになるよう誰かが現場の最高責任者となり,すべての組織がその指揮下に入ります.この横の連携がControlです.
 
  具体的には,現場に入ったら最高責任者を探し,自ら名乗って指揮下に入り指示を受けます.後から来た者が仕切りはじめると,色んな経緯を把握できないので現場を非常に混乱させます.

◆次のSはSafetyを指します,つまり安全確保です.
  安全は次の3つあるとされ,その順番を守ることが重要です.
         Self     自分自身
         Scene   現場
         Survivor  生存者
  安全確保が重要なことは言うまでもありませんが,多くのドラマや映画などでは文字通り危険に身をさらして被災者に手を差し伸べるシーンが数多く登場します.
  しかし!医療従事者がこれをやっては絶対にいけません!!患者を増やしてしまいます.
  安全確保はレスキュー隊の仕事です,医者や看護師は身の安全を自分で守る装備も技術もないので,彼らに安全を確保してもらうのです.そうでないとドラマ本編の黒田先生のような2次災害がおきてしまうのです.
  あの場面でも,黒田先生がケガをしなければ山Pたちは他の患者さんを治療できたし,ドクターヘリは他の重症患者さんを運べたし,黒田先生も患者さんの治療を続けられました.ガッキーの軽率な行動が,実は他の患者さんを知らずに見殺しにしていたとすら言えるのです.

  だから,まずは自分自身の安全確保! もし生存者を発見しても,危険が除去されるまでは接触しないのが鉄則です.ドラマ的には物足りないかも知れませんが,黒田先生の悲劇を忘れてはなりません.
  そして次は現場の安全.これは現場にある様々な危険から身を守ること,野次馬やボランティアをも含めた一般市民の安全を確保すること,など多くが含まれるようです.
  最後でやっと生存者の安全です.しかし,決してこの順番を変えてはなりません.

  ここまで,翔北チームはどうだったでしょう?
  三井先生と山Pは,ちゃんとオレンジ色のレスキュー隊に近付いて自己紹介し,安全情報を確認していました.原則を踏まえた行動ですね!
  ただし,災害現場で自分の安全を確保する装備が不足です.少なくとも長袖の耐火服やヘルメットなどは必須で,これがなければ現場指揮官は活動を許可しないはずです.まぁ,いつもと服装が違うと視聴者が混乱するから同じ格好なのかも知れませんが,,,

やはり,相当な分量になってきました.続きは次回に.


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