出動先から心電図送信 その5

2016年06月11日 18:55

胸痛が軽減した。
先ほどまで、会話できなかった患者だが、
麻薬、鎮静、ニトログリセリンの効果で
楽になったようだ。
「胸の痛みどうですか?」
「楽になりました」
だが、顔色はまだ不良だ。
伊藤医師が心臓エコー検査をする。
大動脈解離で見られる心嚢液はない。
心臓の動きは悪くない。
大動脈解離で見られる両手首の脈拍の強さに左右差、
これもない。

14時28分EC135は患者を収容し離陸した。
家族は偶然に八戸で仕事をしているという。
消防は家族に連絡を取った。
「直接八戸市立市民病院救命救急センターに向かってください」

八戸ERに送信された心電図は、タブレットで確認された。
ERで確認されると同時に、
循環器医師の持つスマートフォンより
少し大きいタブレットで同時に確認された。
年齢、男性、症状、身体所見、心電図より
心筋梗塞の可能性がかなり高い。
循環器医師と藤田医師が相談する。
藤田医師はこの心電図送信システム導入の第一推進者だ。
これだけ条件がそろえば、
ヘリポートから直接心臓カテーテル室に患者を入れようか。
その方が治療が早くできる。
全員が同意した。
今ま八戸ではやったことがない。
現場から心臓カテーテル室へ直入だ。
大学病院や、一部の循環器専門施設なら
前医ですでに心筋梗塞の診断がつけられているので、
そのような心臓カテーテル室へ直入も可能だが、
八戸では、ほぼ100%,自宅や職場で発症した胸痛だ。
だからと言って不可能ではないはず。
現場消防~ドクターヘリ~ヘリポート~直接心臓カテーテル室~循環器医師へ移動。
多くのスタッフが連携する病院の総力戦だ。
オリンピック日本代表の100m×4のリレーだ。
繋ぎのロスタイムを極力なくする。
そして、繋ぎでむしろ加速する。
一人一人の力では、
有名循環器センターにはかなわないが、
繋ぎで加速する
八戸方式でなら追いつける。
ジャマイカに勝つ日本代表のように。
こんな田舎の病院でもやろうとしている。
消防、救急医、ナース、機長、整備長、CS,技師、循環器医師、ME,事務、多くの人間が一人の患者に全力で連携する。
日本代表リレー選手のように。
一人の患者にために、
動き出す。

現場滞在時間15分。
目標通りだ。

離陸したヘリコプターが水平飛行に入る。
高度400m。
飛行時間8分だ。
三戸町から陸路で90分近く要する。
EC135は空を掛けぬける。
現場活動時間を目標の15分にするために、
省略したことがある。
心電図は離陸してからは送れない。
陸上で送る。
しかも、2回以上送る。
その分時間がかる。

それを飛行中に行う。
12誘導心電図モニターの画面では、
はっきりとST上昇が見えていた。
「工藤さん、
採血をしよう」
工藤ナースが患者の腕ゴムの駆血帯を巻いた。
そして、針を肘の血管に刺す。
心臓カテーテル治療に必要な血液を患者から抜く。
それを試験管に入れる。
(続く)


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