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感動する手術

2016年04月27日 18:11

医事新報のコラム
プラタナスの記事です。

感動する手術 (316x500)

13年前の夏、
男性は2tトラックの運転中、
中央分離帯を越えて突っ込んできた4WD車と正面衝突となった。
午前9時、私のいる救命救急センターのホットラインが鳴る。
「ショック状態,呼吸不全,意識障害,胸部外傷,開放骨折で,
ロードアンドゴーです。」
金曜日の朝の救命救急センターは手薄だった。

救急車のハッチが開いた。
救急隊員が圧迫する下腿の開放創から骨髄のオイル成分が血液に混じって滴り落ちていた。
私の声に男性はわずかに反応するだけで、顔色は土色で橈骨動脈は触れない。
残暑だというのに体は冷え切っていた。
「死ぬかもしれない」皆がそう思った。
初療室へ患者を誘導し,初期診療と処置が始まる。
血圧測定不能。

全速力の点滴と同時に行った超音波検査では、
いきなり心臓の周りに血液が溜まっているのが見えた。
さらに腹腔内出血、左胸腔内大量出血もある。

最初に治すべきはどっちだ。
初療室に緊張が走った。
二人の医師は私の顔を見る。
「最初に心タンポナーデの緊急穿刺、それから左大量血胸のドレーン、
次に気管挿管と輸血だ。O型赤血球を8単位用意して手術室へ向かう。
家族の連絡はまだか?」
私の声でナースが動き出す。

 緊急処置は順調だったが、ショック状態は続いた。
手術室へ移動する廊下で頸動脈が触れなくなった.
胸骨圧迫を数回行うと心拍再開した。

私は心嚢を切開して血餅を除去するために左開胸術を優先させた。
同時に2名の医師に胸骨縦切開を命じる。

止血手術は間に合った。
左心室の3カ所の穴を縫合する頃、早かった脈拍が落ち着いた。
左肋骨が4本折れ突き刺さった肺は変色し出血していた。
肋骨骨折部にタオルをあてがい,
胸壁を一括縫合し閉胸した。

開放骨折の手術に移る。
10Lの生理食塩水で骨折部を洗っている間に、整形外科医師を招集するはずだった。
しかしそれぞれは手術中で応援は無理。
私は直径5mmの,スクリューをドリルに接続して,
右下腿,左下腿,右大腿に合計12本入れて創外固定を組み立てた。

休む間もなく開腹術に移る。
開腹すると脾臓損傷だった。
難しい手技が必要な肝臓や膵臓でなくてほっとした。
脾臓を血管縫合糸で縫合止血した.

輸血が32単位を超えた16時頃にようやく手術室を出た。
私は妻と娘に説明した。
「助けましたよ」と。
二人はタルクが残る私の手を握りしばらく離してくれなかった。

医師人生で感動する手術を一体何度経験することができるのだろうか。



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