2歳出血性ショックER開腹術 最終

2016年03月09日 18:08

もう直ぐ、循環血液量を越える。
「血小板数はいくら?」私
「10万です。
注文した血小板輸血はあと1時間半で青森市から到着します。」和田医師
貫和、和田、長谷川医師は
研修医2年目を終了し3年目に救命を選択したエリート医師。
3人とも、勘がいい。
「よし、きっと1時間半後に、血小板輸血に感謝すると思うよ。
今は10万でまだ正常でも、必ず下がるから。
出血量は80%を超えていると、かならず必要になる。」

マイクロカテーテルからマイクロコイルを挿入した。
出血している右肝動脈に2個詰めた。
「脈拍落ち着きました」吉村医師
「さすが、子供だ。素直だ。脈拍もかわいい」私のジョークに誰も笑わなかった。

19時10分TAEは成功した。

女児は2階救命救急センターへ移動する。
19時23分ふかふかの温かいCCMベッドに女児は寝かされた。
血圧110。
「初回CTから3時間後に、もう一度頭部repeatCT.
悪化していないことを見る」
「はい」全員が同意した。

河野医師がそばにいた。
まだフライトスーツを着ていた。
「あれから、心臓外科の患者を青森県病にヘリコプター搬送しました」
「そうだったね。あれからいろんなことがあったよ」私
「現場じゃ、腹部出血わかりませんでした。超音波は異常なかったんです。
ただし、顔色が悪く。頭部外傷だけにしてはおかしいと思ったです」河野
「その勘、当たったね。
あと、1時間遅く受傷していたら、
ドクターヘリは日没で出動しないから
この子の命はなかったね」私
「青森県にドクターヘリが2機あってよかったですね。
県病に一機だけなら
ドクターヘリが三厩出動している間に、
この子は陸送になったでしょう。
そしたら、天国です」

3時間後のrepeatCTで頭の悪化はなかった。
血圧、体温、呼吸も安定していた。
「よし、明日の状態を見て、
早ければ、初回手術から20時間で、
2日目の手術をするよ。
いつもなら48時間が最適だけど、
今回は、完全清潔な手術室でなく、
ERで開腹している。
腹部の感染が心配だ。
だから早く、止血タオルを取りたい。
ABCDE & double I
気道、呼吸、循環、意識、体温がよければ次に
感染(infection)
と虚血(ischemia)を気にする。
明日はまさにdouble Iが優先となる。」
私はつい講義してしまった。

3年目の貫和、和田、長谷川、山内、角田医師は
首を縦に振って聞き入っていたが、
講義は彼らに有効。
丸橋、吉村の6年目医師は聞こえない振りしていた。

予定通り翌日、2回目の開腹手術をする。
肝臓を圧迫している止血タオルを抜く。
止血完了だ。
腹部の創を縫合できた。

肺挫傷を治すのに、10日を要した。
その間、人工呼吸だ。

パソコンで判明したTRISS法での計算式では、
予測救命率34.5%

3か月後女児はスキップしながら退院

劇的救命だ。

2歳出血性ショックER開腹術 完



コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://doctorheli.blog97.fc2.com/tb.php/2327-995dcc01
    この記事へのトラックバック