2歳出血性ショックER開腹術 その6

2016年03月07日 18:05

「損傷の確認するよ。
脾臓良し。
腸間膜よし」
出血部から遠い部位からタオルをはずす。
「次は、肝臓だ」
ここで、肝臓を横隔膜からもちあげて、損傷部を眼で確認しようとすると
出血が大きくなるものだ。
また、止血しかかっている損傷部に、針糸で縫合すると再び出る。
しかし、いつまでも、プリングルを続けるわけにもいかない。
「肝臓周囲パッキング、子供なので、
腹部は閉鎖できるはず。
頭部外傷手術が必要かどうか
CT撮影する。
頭部外傷手術の必要の決定と実行が次の優先順位だ。
そしてその次は
血管造影室へ移動し肝臓の動脈速栓術TAE。
頭の手術の有無に関わらず
肝臓のTAEはするよ。
血管造影室を暖めておいて、準備初めて下さい」
直ぐに、貫和医師は電話を始めた。

肝臓の右に破裂している場所がある。
破裂が小さくなるように
タオルを2方向から入れる。
横隔膜に沿って細くしたタオルを入れた。
子供なので、タオルサイズを半分に切った。
肝臓右の表面にタオルを入れた。
肝臓左からタオルを右方向に力が加わるように入れた。
そのタオルを更に右方向に押すように、脾臓近くにタオルをいれた。
17時25分プリングルをはずした。
出血はない。
血圧は100.
腹部は、皮膚のみ縫合した。
早ければ明日、遅くてもあさって
2回目の手術をする。
皮膚をベースボール縫合ですばやく合わせた。
17時30分手術終了。
女児の顔色はピンク色だった。
体温低下はない。

命を決める手術時間わずか17分間。

吉村医師に笑顔はない。
「すいません、私たちの過小評価です。
あと、15分早く手術できました。
頭が最優先と思っていました。
まさか、出血性ショック、しかも肝臓とは・・」
「プリベンタブルデスは、意識障害を頭部外傷と決め付けたときに起こる」私

大人用ERベッドの1/3しか使わない女児を乗せて、
17時35分劇的救命チームはCT室へ移動した。
「脳外科医師をCT室まで来てもらって、待機してもらって。
それからCT室も室温やや高めにして」私
濱舘医師が高田脳外科医師に電話した。
移動中に私は情報をもらう。
「輸血量はどれくらいした?」
「3単位です、600mlです。凍結血漿FFPも4単位です」貫和医師
「体重は13kg。7%が血液量とすれば、900mlがこの子の血液量だ。
輸血600mlといえば、全血液の60%以上だ。
大人であれば、3Lに相当する。
大量出血時には凍結血漿FFPを凝固因子を入れるために、
赤血球と1対1で入れる。
それから、60%以上の出血時は血小板輸血を考慮する。
80%以上になれば血小板輸血必須。
「血小板輸血はもう準備して。
まだこの先まだまだ出血するよ」私
私は、みんなと別方向に進んだ。
ERで待機中の両親に
私は経過を説明するために。
「助けましたよ。ただしこれから頭のCTです。
その結果で頭の手術になります。
15分後説明します。
CT室前で待ていてください」
私は、青い術衣を脱いで、感染用ゴミ箱に捨てた。
下に着ていたspirits of hachinoheのスクラブは汗びっしょりだった。
劇的救命チームは今頃CT室のはず。
(続く)


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