2歳出血性ショックER開腹術 その4

2016年03月05日 18:04

メスを腹膜手前で止める。
耳で脈拍が速くなったのを聞いた。
アドレナリンが女児の心臓に届いたのだ。
私は手を動かす。
カンシをもって腹部の正中に突き刺す。
そして開く。
開腹だ。
黒い血が吹き出た。
左の示指、中指を腹部に入れて、
その間をハサミで一気に切る。
急いで切る。
なぜ急ぐか?
それは心停止を防ぐために、
大動脈閉鎖するため。
血の海の中に私は右手を入れた。
「血圧30です。」吉村医師の声が上ずっていた。
直接動脈に入れたカテーテルがここで威力を出す。
この血圧では腕の脈拍は触れないはず。
わたしは冷静だった。
このパターンは良くある。
この子供のパターンは以前もあった。

肝臓の外側区(左)と胃袋の間に背骨がある。
背骨の真ん中より少し左に大動脈が足方向に流れる。
胃袋小湾付近に、腹腔動脈が大動脈から分かれる。
肝臓左部分(外側区)を少し頭側に押し上げる。
胃袋を足側に押し下げる。
その間に背骨を触れる。
右示指と中指の二本を背骨に進める。
背骨の2cm左に大動脈を感じる。
大動脈を背骨に押し付ける。
強く押す。
大動脈閉鎖だ。
「大動脈クランプ開始」私は宣言し時計を見た。
手術開始が17時13分。
大創脈クランプが17時15分。
うまく行っている。
大動脈閉鎖まで2分だ。
「キャッチアップして」私は頭側チームに声をかけた。
劇的救命チームは、頭側、右、左、そして手術野に分かれていた。
全員が、この女児の命を救うために。
予測救命率は低い。
ショック、昏睡。
腹部頭部外傷。
僻地で受傷。
誰が考えても、分が悪い。
これまでの、修練の結果を今日この患者のために、
結果を出す。
救命できなければ、われわれの存在価値はない。
高額なドクターヘリ運用している価値はない。
女児を必ず救うのだ。
濱舘香葉医師は、「交差試験なしのO型輸血入れています。
レベルワンで入れています。」
「収縮期血圧90まで待つよ。
腹部出血は大動脈閉鎖でコントロールできているよ。
循環持ち上げてちょうだい。
頭部外傷のためにも」私

「精進一生救助一瞬」
関根救急救命士から15年間に聴いた言葉だ。
(続く)




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