2歳出血性ショックER開腹術 その3

2016年03月04日 18:03

「それが、手術室準備30分かかるそうです。
いま、部屋開いていません」
「頭部外傷合併です」丸橋医師
女児は、ER入室後、どんどん状態が悪化している。
頭部CT検査が出来ていない。
丸橋医師は、頭部外傷合併しているので、
先にCT撮りましょうと、主張しているのではない。
頭部外傷合併しているいので、すぐに、開腹しましょうといっているのだ。
頭部外傷の治療でもっと大事なことは、
すばやいCTではない。
早く血圧と酸素化を正常にすることだ。
頭部外傷はショックと低酸素に弱い。
CTとらずとも、頭部外傷があるつもりで対応する。
多発外傷の治療はこうするもの。
止血手術をはやくして、脳の血流を戻す。

17時5分「よし、ここで開く」私は救急室開腹を宣言した。
すでに、頭側では、急速加温輸血装置レベルワンから赤い輸血が流されていた。
吉岡医師が小さな女児の腹部胸部大腿を茶色いイソジンで消毒した。
「開胸セット、開腹セット、気管切開セット、
室温上げて、吸引は2ルート、
家族に説明するよ」私はみんなに宣言する。
気管切開セットには、小さなカンシや、キンコウが入っている。
小児の手術には都合がいい。
気管切開をここでするわけではない。

両親がERに入った。
母親の肩を父親が抱いていた。
二人とも若い。
すでに、ナースが数回にわたり経過を説明していたが、
わたしが話すのはこれが最初。
「救命救急センター今です。
腹部出血、頭部外傷、肺外傷で重症です。
命がかかっています。
CT検査も出来ていません。
手術室の準備を待てません。
いまから、ここで手術をします。
かならず救いますから。
これまでも、このくらいの怪我の、子供を何度も救ってきましたから、
手術時間は30分以内です」
私はまだ若い夫婦の眼をしっかり見た。
そして振り返りER2ベッドへ数歩進んだ。

今度はナースが母親の肩を抱いて待合室へ誘導した。
吉岡医師、軽米医師、丸橋医師が手術野をすでに作ってくれていた。
青い紙布が覆いかぶされていた。
この部屋はER.
手術室ではない。
2mとなりには、肺炎の患者がいる。
3m前には、眩暈の患者がいる。

約15年前オーム心理教事件で打たれた國松警察庁長官もこうしてERで手術を受けた。
そして生還。

眼の前の女児の予想救命率は低いだろう。
だけど、凝固障害と低体温が出る前に
止血できれば勝利を呼び込める。

17時13分無影灯の下で、私はメスを走らせた。
かわいい臍が不憫だった。
臍上10cm
臍下5cmの
大開腹だ。
わたしは、心停止に備えて、
「アドレナリ0.1mg注射して」
4月から沖縄から転勤してきた
角田洋平医師が返事をした。
出血ショックで開腹すると
急な腹部圧開放で、心臓停止する。
さらに、子供は迷走神経反射が起きやすい。
徐脈発作に弱い。
(続く)


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