手術室以外で緊急開胸手術 最終

2016年02月17日 18:55

救急外来に着くと、野田頭副所長がスタンバイしていた。
野田頭副所長はまず右開胸を追加した。
右の肺に穴が開いていることを確認した。
胸骨を横断し左右の開胸創をつなげクラムシェル開胸に拡大した。
私は、フライトスーツの上に水色の手術ガウンを着た。
右鼠径部の動脈に太い針を刺す。
そこから大動脈遮断バルーンを進める。
開胸大動脈遮断鉗子を外し、
大動脈の中から、動脈を閉塞する。
大動脈の中で、風船を大きく膨らましたり、小さくしたりすることで、
遮断の強さを自由にコントロールできる。
急速輸血をすると、心臓の拍動が大きくなった。
拍動が大きくなれば、
大動脈遮断を弱くする。
うまくいっている。
循環が回復してくる。
顔色がよくなる。
根本治療に行けるくらいになった。
手術室での勝負だ。
救急外来から手術室へ移動する。
そして肺損傷修復を行った。
手術後には、循環はさらに安定した。
若い男性は救命救急センターに、入院となった。

患者さんの手が動いたのは一瞬だったが、私は見ていた。
全く動かなかった心臓が、狭い救急車内で動き始めてくれた。
心停止時間は31分と長かったが、
低酸素性脳症は免れてほしい、
と願っていた。

手術終了後に初めてCTを撮像した。
目を覆いたくなるような画像だった。
あちこちやられている。
脳の障害もある。

奇跡を信じ、集中治療を行った。
意識が戻ることはなかった。
命は繋ぐことが出来たが、意識を戻すことが出来なかった。
患者さんの笑顔を見たかったが、かなわなかった。

一か月後に
自宅近くの病院へ転院となった。

現場開胸 完
手術室以外で緊急開胸手術 完


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