岩手県北へ その4

2015年06月23日 18:37

フライトドクターは決断した。
「高エネルギー事故で患者は重症だ。
現場は盛岡からは遠いが、八戸は近い。
八戸なら、もっと早く現場に到着できるはずだ。
八戸ドクターヘリを要請してもらおう」

その日の、八戸ドクターヘリの当番はフライトドクター吉村医師。
フライトナースは和島看護師。
朝の救命カンファレンスでは前日の入院患者の申し送りが
いつもより短く終わっていた。
新入院患者が少なかったのだ。
カンファレンスが終われば、救命救急センターの回診だ。
救命病棟には相変わらず100名を超える入院患者がひしめいていたが、
新しい患者が少ないと、
回診も楽だ。
吉村医師が、カンファレンス室を出て
ドクターヘリ待機室の前を通ると、電子音とともにパトライトが赤く点滅し出した。
出動要請だ。少し遅れてPHSが鳴った。
ドクターヘリ通信指令室へ走る。
行き先は・・・岩手県○○市

南に向かったドクターヘリ
階上岳を越えたその先は、いくつかの集落が点々としているが
その他には、同じような山と海からなる景色がどこまでも続いていく。
ヘリのローターの低い音と振動。静かな時間が続く。
現場までは約15分。
青森県なら八戸から十和田に行くのと同じくらい。
岩手県北部ならば、同じ時間でいける。

現場からの無線はなかなか聞こえてこない
無線は、全国共通波1を使用することは事前に打ち合わせ済みだ。
「なかなか無線がつながらないですね」
「○○消防本部は山の陰になって、
無線が入りにくいんですよ」
今日の機長は多田機長。
岩手県ドクターヘリを中心に活躍しているベテランのパイロットだ。
岩手県の事情を熟知している。
八戸でも1ヶ月に1回程度のペースで乗務する。
八戸と岩手は同じ中日本航空の運航なので、
パイロットの交流があるのだ。
今日の多田機長はいつも以上に頼もしい。
「あの辺は、他にランデブーポイントがありません。
○浜中学校は土のグラウンドなので、
散水してもらわないといけませんね」
多田機長はすごく詳しい。
岩手県との県境を越えてしばらく飛ぶと、無線が入るようになった。
(続く)


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