岩手県北へ その1

2015年06月19日 20:40

ドクターヘリは病院を離陸すると、大きく右旋回し、南へ向かった。
岩手の山と曲がりくねったリアス式の海岸線が
視界が途切れる南側へどこまでも続いていた。
八戸の平野とは異なる、見慣れない景色が目の前に広がっていた。
あの先は宮古だろうか。

山の中の道路はカーブがが多い。
高度500mのドクターヘリから
緑の森の切れ目に道が見え隠れする。
山と山の間の谷間に流れる川に沿うように道もある。
所々近代的なコンクリート橋が架かり、
その近くは幅が広い道が直線に見下ろせる。
曲がりくねった道の先に見えた
見晴らしのよい真っ直ぐな国道で、
その事故は起きた。
岩手北部の、街からは遠く離れた田舎道だった。

いつものように通い慣れた道を畑に向かう途中
男性の運転する軽トラックは対向車線へはみ出し
大型ダンプと正面衝突した。
10年以上使い古したと思われるその白い軽トラックは
激しく潰れ、フロント部分は大きく変形していた。
どちらがセンターラインをはみ出したかは今は重要ではない。
運転席が圧潰されていることが、
男性を襲った高エネルギーの証拠だ。

潰れて小さくなった車の中で、男性の意識があった。
幸運だ。
だが自力では脱出できず、身動きできなかった。
軽トラックが正面衝突すると、
頭部外傷が起こる。
フロントガラスと運転手の距離が近いから。
硬いガラスが割れて頭蓋骨が折れる。
高級普通車なら、フロントガラスはショック吸収ガラスでできているので、
脳損傷が小さくて済むことがあるが、
軽トラックではそうはいかない。
エアバッグが上手に膨らんでくれれば、
軽トラックでも脳のケガは防げる。
だが、古い形式の軽トラックにエアバッグは付いていない。

(続く)


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