トラクターに巻き込まれた子供 その1

2015年03月27日 18:05

あれは5月のこどもの日。

こいのぼりが晴天の空を元気よく泳いでいた日だった。
子供たちは遊び疲れて家に帰る時刻。
夕焼けが西の空を染めるころに事故は起きた。

「畑で作業中のロータリトラクターに孫を巻き込んでしまった」
と119番通報があった。
救急司令課は直近の救急隊を現場に出した。

救急隊は6分で現場到着した。
隊長は畑に横たわる子供を観察した。
ひどく汚れていた。
黒い土が体を覆っていた。
所々に肉片が出ていた。
白いのは骨かもしれない。
腕があり得ない方向に曲がっていた。
子供から泣き声は聞こえない。
畑の黒い土に血の塊がいくつもあった。
顔は土の下に真っ白くなっている。
「CPAか?」隊長は
胸の上りを診た。
痛み刺激を与えた。
呼吸はあったが弱い。
痛み刺激で動かない。
泣かない。

隊長はロードアンドゴー宣言をする。
ちょうど、その頃機関員がオレンジのバックボードを持ち
畑の遅れて到着した。
土で汚れたまま、子供をバックボードの固定した。
「心臓が止まるかもしれない」隊長は焦った。

この場所は、二次病院まで15分。
そこから救命救急センターまで60分。
周りは、夕暮れとなってきた。
そんな、設定だった。
男の子を乗せた救急車は
二次病院に向かった。
意識障害、ショック、呼吸障害で、
搬送時間15分で直近病院へ向かうことを判断した隊長。
迷いはあった。
あきらに三次選定だが、
この場所から救命救急センターまで持たない。
この当時は、ドクターヘリもドクターカーもまだなかった時代。
(続く)


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