風邪で窒息心肺停止 その3

2015年03月08日 18:21

運転席の機関員が言う。
「あと、ERまで5,6分です。
隊員は強く胸骨圧迫する。
隊長はダイレクトブルーに携帯電話した。
「CPAに移行し、CPR中。
喉の痛みと吸気の呼吸困難あり、
唾液を吐き出していました。
熱あり。」
「はい、待っています。波形は?」
「PEAです」
電話を受けたのは木村医師。

日曜日のこの日、猛烈にERが混んでした。
朝から入院した患者だけで、10名。
心肺停止患者は2名。
実は午前2時、当直医は疲れ気味だった。
だが、緊迫した電話内容で疲れもいっぺんに吹き飛んだ。
「気道緊急だよ、挿管失敗したら、手順通りに喉を切るよ」木村医師
「輪状甲状靭帯切開ですね」栗原研修医
木村医師は、唾を飲めない呼吸困難から、急性喉頭蓋炎を予想した。
それなら挿管できないことがある。
念を入れて準備だ。

救急車内のCPRは困難を極めた。
バッグバルブマスクで換気不能だった。
心電図波形は、頻脈から胸骨圧迫の波形に変わっていた。
男性の心電図波形は弱く遅くなっている。
モニターの波形は100回のスピードを指していた。
100回は胸骨圧迫を示す。
モニターには、自分の心臓の電気波形ではなく、
胸骨圧迫の電気刺激が流れている。

午前2時6分救急車は八戸ERに到着。
CPRのまま、男性はER1ベッドに入った。
栗原研修医は、オートパルスを付けた。
オートパルスは自動胸骨圧迫器。
救急隊のCPRに代わり、機械がCPRを引き継いだ。
「呼吸原性心停止だ。
最初に気管挿管」
木村医師は、バッグバルブマスクで2度換気を試みたがやはり無理だった。
3回換気であきらめる。
銀色の喉頭鏡を口に入れる。
ピンク色の平べったい喉頭蓋が見えて、
その奥に縦1cm位の声門が見えるはず。
普通なら。
だが、男性の喉頭蓋は違った。
赤い腫れた塊が見えた。
直径1cmくらいの。
喉頭蓋が腫れているのだ。
そのため声門は全く見えない。
木村医師は輪状甲状靭帯切開の宣言をしながら喉頭鏡を抜いた。
栗原医師はイソジンで喉仏近くを消毒する。
看護師は、時計とモニターを見て記録した。
オートパルスは規則正しく胸骨圧迫をしてくれていた。
(続く)


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