大動脈解離の二人

2015年01月07日 17:28

60歳代が自宅風呂場で倒れた。
脱衣所からバタンと音がしたので
家族が見に行くと意識がない。
救急車出動、ドクターカーが出動した。

患者は気管挿管されてERへ運ばれてきた。
八戸ERでは、突然発症の意識障害の診察を続ける。
大動脈解離だった。
透析治療を受けていることがわかった。

透析治療の時にヘパリン薬を使う。
透析治療では、機械に血液を通す。
血液が固まらないようにヘパリンを使う。
ヘパリンは止血を妨げる作用がある。
大動脈の壁にひびが入り、体の中で出血しているときには、
ヘパリンは敵だ。
出血の進行が急激になる。
胃出血でも、脳出血でも、交通事故でも同じく、大出血する。
大動脈にひびが入る大動脈解離でなおさら。

患者は、手術不能で息を引き取った。
近藤医師が看取った。
・・・・・・・

5日後,患者の葬儀が行われた。
別れを惜しむ友人、親戚が集まる。
その会場で、
70歳代女性が卒倒した。
目撃者の話では先に痙攣していたという。
救急車が葬儀会場に出動した。
続いて近藤医師がドクターカーで現場出動する。
先着は救急隊。
痛み刺激で動かない。
血圧70、
脈拍100、
呼吸は止まっている。
酸素投与でバッグマスクで人工呼吸しても酸素飽和度は80%で低い。
近藤医師には初めて診る患者。
腕には、血管縫合の手術痕と、
血管のふくらみがある。
透析治療に使うシャントだ。
シャントは透析時に針を刺すために
透析開始時にあらかじめ手術で作られる。
この患者にもあった。
透析治療を受けていたのだ。。
近藤医師は気管挿管した。

意識障害で血圧低下を見たら
薬物過量、中毒と、循環不全を考える。
循環不全では心筋梗塞、出血をはじめ、多くの原因が思い浮かぶ。
なかでも心臓と大動脈の病気が有名。
薬物過量、中毒で多いのは、医薬品過量。
ごみ箱や、バッグの中の薬包みや、部屋にあるビンを見る。
トイレの吐物を見る。
自殺目的であることが多い。

心臓と大動脈の病気は
現場では、心臓超音波と、上肢血圧左右差を見る。
上肢血圧左右差は大動脈解離の診断に役位つ。
20以上差があったら陽性。

患者は腕にシャントの手術がされていたので、
脈拍の強さの左右差と、血圧の左右差が測れない。

近藤医師は電話する。
ERに置いてきたダイレクトブルーPHSに出たのは昆祐理医師。
「中毒より、心臓、大血管を考える」

八戸ERでは昆祐理医師が待ち受ける。
患者は、屈強な救急隊と空手有段者の近藤医師らに両脇に付かれて
ストレッチャーで入室した。
ERナースは心電図12誘導検査、
医師は超音波検査に入る。
同時にバイタルサインがモニターに出た。
心臓超音波検査で下大静脈が腫れている。
バイタルサインはショックだ。
下大静脈が腫れているショックは、
閉塞性ショックに違いない。
心臓に入る前で大静脈が圧迫されて閉塞。
同じように、肺動脈で閉塞、
などで血圧低下することを
閉塞性ショックと言う。
閉塞性ショックでは心タンポナーデ、緊張性気胸、肺塞栓をまず考える。
緊張性気胸ではないこと呼吸音の聴診ですぐにわかる。
呼吸音左右差がない。皮下気腫がない。

超音波では、心臓の周りに水が溜まっている。
心嚢液貯留だ。
心タンポナーデにはなる量ではないと思われたが・・・
心嚢液貯留で血圧低下するのを心タンポナーデと言う。
心タンポナーデなら、緊急心嚢穿刺で脱血が必要。
原因は、病気なら大動脈解離と心筋梗塞。
ケガなら、心臓破裂。

CT室へ移動した。
結果は、大動脈解離だった。
心嚢液が増えている。
先ほどよりずっと。

透析治療治療のヘパリンのせいで出血が止まらない。、
血圧が落ちている。

手術不能状態だ。

二人は親戚だった。
二人に起きた大動脈解離と言う病気。
ドクターカーで現場出動しても
助けられない命もある。

合掌。


・・・・・・・・
今年もよろしくお願いします
劇的救命DSCF5733 (500x394)
八戸 劇的救命 救命救急センター「


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