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オッカムの剃刀

2014年08月20日 19:10

ある大学病院で講演した時でした。
その研修医は手を挙げて質問したのです。
「20歳代の女性で、心室細動で運ばれてきました。
CTで脳腫瘍が見つかり、心臓には、特別異常はありませんでした。
女性は残念ながら亡くなりました。
死亡症例カンファランスで多くの医師が意見を言いましたが、
結局病態は判明できませんでした。
すくなくても、研修医の自分が理会できる結論は出ませんでした。
なにか、助言はあるでしょうか」
私は、クイズ博士ではない。
眼の前の患者には立ちむかうが、
目の前にいない、診察したことがない患者にはほとんど無力だ。
世の中には、コメント上手な知識満載の医師も存在する。
だが、私は違う。
知識満載ではない。

ただし、外傷に関しては、国内の医師の多くに経験が少ないので、
コメントを求められれば、ことわりを入れてから応じる。
国内に外傷で相談できる医師があまりにも少ないから。

さて、大学病院の研修医に対して私の答えは、
「大学病院の経験豊富な専門医でさえ、
結論できない難しい稀な病気についてわたしが答えられるわけがありません。
それに、目の前で身体所見や病歴をとったわけではなく、
あまりにも情報が不足しています。
ただし、この若い女性の突然死で皆さんに教えることができることが一つあります。
若い患者には、オッカムの剃刀[カミソリ]が使えます。

オッカムの剃刀とは、「患者が複数の訴え、問題をかかえていても、それの病態は一つの原因で説明つく。」
オッカムの剃刀とは、医学に限ったことではありません。
一般的に、
「ある事柄を説明するには、必要以上に多くを仮定すべきではない」
カミソリは、説明に不必要な事柄を切り落とすことの比喩です。
医学では、50歳以下の若い世代は、
病気になりにくいので、
問題解決には一つの原因で説明がつくことが多い。
逆に高齢者は、病気になりやすいので、
偶然二つ以上の原因があってもおかしくない。
後者をヒッカムの格言と言います。」

長い返答になってしまった。

私の大学の後輩に松村正巳医師がいる。
スキー部の後輩。
一緒に、苗場や白馬スキー場を滑った。
もう30年も前のこと。
その、松村医師が書いた、
「ティアニー先生の診断入門」
その本に書いてあるのが、オッカムの剃刀。
ティアニー先生は
「50歳以下の若い患者には、
オッカムの剃刀が使える。
多く患者の原因は一つ。
50歳以上にはヒッカムの格言。
複数の原因が絡まっている。」
村松医師がそういう内容のことを記載している。

その村松医師も今は
大学の教授に昇進した。
もう、後輩ということで
名前を呼び捨てすることはできない。

私は質問してくれた研修医にさらに続けた。
「20代女性の脳腫瘍と心室細動は偶然別と考えるのではなく、
オッカムの剃刀で、一つの原因と考えるのが普通です。
その一つの原因を私はここではわからないけど、
助言できるのは、それだけです」

質問した研修医は晴れ晴れした顔をしていた。

オッカムの剃刀が当てはまらない例外はもちろんあります。
お気を付けください。


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