太平洋溺水 その3

2014年07月28日 18:39

高度を下ろす。
帽子が飛びそうになり手で押さえる漁師の男が、目に入った。
赤い服の女は、顔を下に向けて風をしのいでいる。
海岸の細かいごみが飛び散る。
だが充分離れているので安全。
ゴーグルを当てた消防士が、こちらを見つめて両腕を上げ下げしている。

運よく、道路を通過する車はいない。
消防が道路を封鎖している。
機長「降りますよ」
整備長は、着陸地の起伏を確認している。
私は後部ドアの窓から後方を見つめる
「後ろはOKです」機長に伝える。

9時55分 階上町道仏海岸に着陸。
海岸に設けられた緑地帯に、EC135は接地した。
丈の長い海芝が揺れる。

整備長が左ドアを開けた。
まだメインローターは回っている。
先に私、続いて看護師が降りる。
私は腰を曲げてヘリコプターから直角に遠ざかり、救急車へ走る。
5m 離れれば、もう風はほとんどない。
20m 先の救急車のハッチが開けられた。
出迎え体制は十分。

9時56分 患者接触。第一印象は sick、重症だ。
気道は体調の下顎挙上処置で開通。
呼吸浅い。
循環は良いが徐脈。体は冷たい。
意識レベルは E1V1M4。痛み刺激に逃げるだけ、目は開かない。

「原因は何だ」私は脳をフル回転させる。
「最初に気管挿管、次に血糖検査、それから輸液、最後にエコーと心電図。
体温測定はヘリで行う。
後ろのドアは開けておいて。ドクターカーの光銭医師が着いたらすぐ参入してもらう。」

運よく今日は気温が高い。患者が冷えることはない。
私は銀色の喉頭鏡を持ちながら指示を出す。
口で指示を出し、手は喉頭鏡を進める。
「気管吸引と、嘔吐時の膿盆を準備してね。それから酸素とバッグバルブマスクも」
今度は隊長に伝える。
(続く)


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