ノーブレーキ事故 その14

2013年07月23日 18:45

5分後、輸血が4単位一気に入ったころ。
収縮期血圧は100以上になった。
「よし、いまだ」
私の合図で野田頭副所長はカンシを右手に持った。
肝臓の左がぶらぶらに裂けていた。
肝臓の10cmある裂け目から見える太い血管にカンシを掛けて切る。
左肝静脈が下大静脈から分かれるところでやはり切る。
切る前に血管を糸で二重に縛る。
肝臓外側区を切除した。
っと、この操作で下大上静脈から血が出る。
「下大上静脈損傷あるいは、肝静脈損傷だ」私はみんなに言う。
更に続ける。
「下大上静脈損傷あるいは、肝静脈損傷は最重症だよ、
出るよ、出血」私は吉村医師を見た
なぜ、出血源がはっきり見えないのに下大上静脈とわかったかというと、
肝臓動脈とも門脈はサテンスキーカンシで閉鎖してある。
それでも出血するのは、もう一つの肝臓の血管の下大上静脈系だ。
肝臓には、肝臓動脈とも門脈と下大上静脈から分かれる肝静脈の3本が流れている。
肝臓動脈とも門脈が閉鎖状態なら
残るは下大上静脈。
ここからの出血は止血不能に陥ることが多い。
よく死ぬ。
この場合は、深追いせず、カンシを掛けようとせず、
糸で結ぼうとせず、針で縫おうとせず、
ガーゼでピンポイントで圧迫するに限る。
止血できる方向に圧迫するに限る。
私は、10分間圧迫を宣言した。
動脈と門脈はほぼ止血できていたので、
肝臓動脈とも門脈を閉鎖しているサテンスキーカンシをはずした。

出血部を圧迫中に、
優先順位3番の汚染の制御にかかる。
全小腸、全大腸を細かく観察する。
裂け目がないか、血流の悪い部位はないかを探す。
「腸管異常なし」野田頭副所長。
(続く)


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