越浪研修医飛ぶ 後編

2013年04月24日 18:03

私は、ヘリポートと逆方向のERに走った。
ERに直結しているドクターヘリ通信司令室へ顔を出す。
一番乗りだった。
ナースと、越浪研修医はまだいない。
「○○町で交通事故。意識がない」
まず、ナースがヘリポートへ向かい走りだした。
私は、更に留まり、患者情報が他にあるどうか確認する。
壁に掛けられた、液晶画面には、
EC135が格納庫から出され、中央に位置しているのが見えた。
機長は、右前席に座っていた。
画面から音は聞こえないが、
メインローターが回っていないので、
エンジンスタートはまだのはず。
エンジンが始動してから、ここから走りだしても、
間に合う。
ERから110mの先のヘリポートまでは、僅か20秒で着く。
私は、壁の液晶画面に眼をやりながら、耳はCSの電話に傾けた。

さらに30秒経過、私は走り出した。
ヘリポートには、越浪研修医と、淡路ナースが先着していた。
メインローターは、2割くらいのパワーで回っていた。
「この音なら、まだ2分くらいかな。」
右後ろドアから乗り込む。
ヘルメットをかぶると
直ぐに内線通話が入った。
聞きながらシートベルトを締めた。
「離陸します。シートベルト確認下さい」
そして、離陸。
エンジン音が高くなり、機体に振動が伝わる。
その瞬間、ふわっと浮き上がる。
自分の足が地面から浮くわけではないが、
ふわっと感じる。
高度を上げると、直ぐに海が見える。
この景色は海の基地ならでは。
内陸では味わえない。
右に青い太平洋が光る。
その先はハワイ。
左に見えるはずの八甲田山は、雪雲の中だった。
目的地は、北。

越浪研修は、瞳孔を僅かに開いてあちこちに目をやっていた。

この先に患者情報が入るまで、僅か1分くらいの自由な時間だった。

いつもどおり、離陸1分後にCSから患者情報が無線で入った。

私は、越浪研修医に解説して、着陸してからの手順を説明した。


越浪研修医飛ぶ 完




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