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救急室開腹術 その7

2012年07月23日 18:58

タオルをあてがう瞬間に、脾臓の損傷を指で探る。
割れていればすぐに触った感触でわかる。
損傷はない。
タオルを左側に2枚入れた。

次に、右腹壁を丸橋医師が手で持ち上げる。
私は血液の海の中で肝臓を触る。
肝臓損傷好発部位は、
肝臓の右で、背中側。
そこに、縦方向に割れがあるはず。
今回はない。
幸運だ。
タオルを2枚肝臓周囲に入れた。
このとき、肝臓と腹壁に紐がつながっている。
肝円索という、胎児の時に、血液を流していたけ血管の名残。
これを切断する。
この切断をしないで、タオルを入れると、
肝臓が引っ張られて、新たな肝損傷をつくる。
肝臓と脾臓に損傷はないようだ。
残り医は、腎臓と腸間膜。
腎臓は血尿がないので、おそらく大丈夫。
ならば、腸間膜。
瞬時にこのようなことを考えながら手を動かす。

「paracolic gutter」大腸の直ぐそばの外側を意味する解剖用語を私は告げた。
野田頭部長は、3mもある小腸を自分の方向に持ち上げて、
患者の腹部から半分くらいの腸を外へ出す。
腹部の半分近くが丸み見えになるはずだが、
そこには、まだ血液がたっぷりある。
敵はまだ見えない。
タオルを1枚入れた。
血液が湧いて溢れ出る。

代わって、今度は私が腸を持ち上げる。
逆のparacolic gutterにタオルを入れた。
出血の勢いはさらに増す。
「敵は近いぞ」

麻酔担当の吉村医師たちは、患者の腕に針を刺す。
八戸市立市民病院は麻酔科医師不足。
緊急麻酔は、救急医が自分たちで受け持つことが多い。
麻酔科医師に余裕があれば、もちろん、受け持てくれるのだが。
(続く)


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