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アトム 前編

2012年07月10日 21:44

2度目の手術は、4時間後に始まった。
1度目の手術で、肝臓損傷の止血を行う。
そしてタオルで圧迫する。
輸血をして、体温を暖めて、血漿を輸血して
止血の力を復活させる。
Damage controlの治療戦略。
止血には、血小板の輸血も必要だ。
しかし、血小板製剤の在庫は
あいにく、青森県にない。
運が悪いことに、近県にもない。
最短が埼玉県。

こんな時に火の鳥がいたら、きっと血小板を持って飛んできてくれるのに。
そう願いながら、血漿と赤血球の輸血を続けた。
止血ができない。

患者の命をあきらめかけた午前2時。
埼玉県から血小板が届いたのだ。
白いボディーに赤いライトを点滅させた車が八戸に到着した。
600kmの長旅を一気に駆け抜けてきたのだ。
(何台かで途中中継したのか、1台が駆け抜けたかはwかりません)
まさにそれは火の鳥だった。
そう、手塚治の。

血小板を20万単位入れ終わるとそれまで真っ赤だったドレーンの排液が、
薄い色に変わった。
続いて頻脈が治まった。
体温とアシドーシスは順調に戻っている。
血小板さえ補充できれば死の三徴を脱却できる。
それは救命を意味する。

大阪大学を卒業した手塚治虫氏にも
新米医師の時代があったという。
ちょうどその頃に「鉄腕アトム」「火の鳥黎明編」の連載を開始している。
手塚作品の「火の鳥」は、不可能なことを可能にする魔法を運ぶ鳥ではない。
永遠の生命力を保証する鳥でもない。
人間が限られた命の中で何ができるか、
どれだけの事をできるかが大切だと教えてくれる鳥だった。
「アトム」では栄光の科学文明を描いたのではない。
21世紀に来るロボットと人間の軋轢を描いた物語だった。
私は子供のころに理解できなかった物語の深さが21世紀になって初めてわかってきた。
(続く)


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