小児脳死と救命の瀬戸際 第3話。 その4

2012年07月03日 18:55

1週間後、集中治療を緩める。
命はつながった。

しかし
自発呼吸はない。
眼の光の反射もない。
瞬きはしない。
脳波はフラット。
臨床的脳死に近い。

ただし脳波検査は、脳死判定用ではないので、厳密に言うと、脳死ではない。。
父親に説明した。
「救命を信じてます。治療を続けてください」

救急医はまず救命。
あたりまえのことだ。

それがかなわない時に、脳死判定を考慮する。
そして臓器提供。
それもかなわない時に、終末期医療を考える。

救命カンファランスでは、全員父親の意見に賛同した。

脳機能を戻したい。
気管切開した患児は高気圧酸素室に移動する。
空気の2倍の圧力で酸素を患児にふりかける。
八戸の高気圧酸素室は、一人用。
人工呼吸が必要な患者は使用できない。
でも方法がある。
みんな覚えている。
心肺停止の幼稚園児を人工呼吸しながら高気圧酸素室に入れたことを。
私と子供と二人で高気圧酸素室に入ったこと。
その中で、バックバルブマスク換気しながら高気圧酸素治療をしたことを。

主治医は、木綿の静電気が起こらない服に着替えて、
子供と一緒に高気圧酸素室へ入った。
あの時の私のように。

(続く)

心肺停止から蘇生成功、しかし意識がもどらない。
このような蘇生後脳症に対しての高気圧酸素治療は、
多数の検証で効果がないことが確かめられています。
しかし、経験上、効果がわずかにあることを知っている八戸では、
このように、高気圧酸素治療を試みています。
自発呼吸がない子供を高気圧酸素室に入れることは、
高気圧酸素療法学会で禁止していることです。
効果が少なく害が多いという結論です。
八戸では、家族へ効果と害を説明後、
主治医が自ら子供と一緒に高気圧酸素室へ入ります。
ある程度の危険を承知で、ヘリコプターに乗る。
同じように、ある程度の危険を承知で高気圧酸素室に入る。
ある程度の危険を覚悟で、災害現場へ出動する。
救急医には、よくあることです。
私は、若い救急医に見本を見せています。


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